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韓国を訪ねる旅ー5  日韓茶の湯交流茶会

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最終日(4日目)には、韓国で唯一「茶道科」のある大学・「釜山女子大学」の茶室で「日韓茶の湯交流茶会」が予定されていました。
日本茶道のお点前で日本から一時里帰りする高麗茶碗(協賛:銀座 古美術桃青)を用いて茶を点て、韓国の皆さまと交流するそうです。

この日のために着物一式を持参し、「どんな茶会になるのかしら?」と、Fさん共々楽しみにしていました。
最初に釜山女子大学の茶道博物館を見学しました。
ここには高麗時代から李朝朝鮮時代にかけての高麗茶碗が時代を追って展示されており、とても勉強になり見ごたえがありました。
茶碗だけでなく、伝統衣装やポシャギなど興味深い展示室があったので、また訪れたいところです。

                      

釜山女子大学付属の幼稚園に茶室があり、「日韓茶の湯交流茶会」はそこで行われました。
八畳に床の間のある茶室で、毎月1回福岡から先生が来られて、表千家流茶道を学んでいるそうです。
ツアー主催者の丸山陶李先生(表千家流)が席主で茶会を催し、お客さまは釜山女子大学の関係者10名様です。

交流茶会のために、銀座の古美術商・桃青さんが日本に伝世する高麗茶碗2個を持参し、この茶碗で茶が点てられました。
点前はTさん(庸軒流)とFさん(裏千家流)、裏千家流のOさんと暁庵、そしてS氏(石州流?)の3人が半東と水屋を担当しました。
(なんと!嬉しいことに全員がお茶を嗜んでいました)

         

桃青さんが持参の茶碗について熱く語るのを伺いながら、点前が進んでいきました。
2つの茶碗ですが、1つは銘「両国」、茶を介する韓日両国の歴史を象徴するような銘の高麗茶碗、もう一つは塩筍のような黒高麗でした。
実は水屋と半東でウロチョロしてまして、桃青さんのお話をじっくり伺えなかったのが心残りです。
でも、先ずは交流茶会を粗相のないように成功させなければ・・・という思いでいっぱいでした。

                     
                     

お茶が一巡すると、今度は伝統衣装チマチョゴリを着た韓国の方が点前座に座り、表千家流の美しいお点前で私たちに薄茶を点ててくださいました。
韓国らしい菓子「バクダン?」(雷オコシを連想)と薄茶を美味しく頂戴しました。
お茶だけでなく、着物とチマチョゴリの民族衣装の共演もあり、夢のような茶の湯交流のひと時でした。

それから、隣りの幼稚園舎へ移動し、韓国茶礼を興味深く拝見しました。
韓国では茶の栽培があまり適さなかったことから、茶以外のとうもろこし茶やゆず茶などが伝統的に親しまれてきました。
近年では茶の栽培も盛んとなり、独自の茶道「韓国茶礼」が盛んになっているそうです。

          

         

伝統音楽のテープに合わせ、チマチョゴリを着た女性が流暢な点前でお茶を淹れました。
日本で拝見した韓国流茶道(?)とは異なり、抹茶ではなく煎茶(?)を淹れて飲みます。
目の前の茶道具一式で実際に茶を淹れる、韓国茶礼の体験をさせて頂きました。
小ぶりの茶道具一式は園児用で、この幼稚園では園児が韓国茶礼を習っているそうです・・・いいですね!

交流茶会が終了し、遅めの昼食(東采名物・ハルメパジョン)をしっかり平らげて、釜山空港から成田へ。

                      
                               帰りの飛行機からパチリ

一期一会という言葉は茶事だけでなく、ツアーにも通じることを実感した、韓国を訪ねる旅でした。
丸山陶李先生、ガイドの文仙姫(ムン ソンヒ)さん、同行の素晴らしい皆様に心から感謝です。
持参した茶箱の出番はなかったけれど、充実した4日間でした・・・。

         
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2016年 炉開きの会・・・・・その1

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11月2日に暁庵の茶道教室の炉開きの会をしました。
11月2日にしたのは2つの行事、「亥の子」と「献上かざり」を取り入れたいと思ったからです。

炉開きはふつう旧暦10月(亥の月)の初亥の日に行うそうですが、今年は11月1日がその初亥の日でした。
江戸時代から亥は陰陽五行で水性にあたり、火災を逃れるという信仰がありました。
茶の湯の世界でもその日を炉開きの日として、茶席菓子として「亥の子餅」を食べ、火災の厄除けや子孫繁栄を願います。

「亥の子(いのこ)」という年中行事があり、主に西日本で行われています。
旧暦10月(亥の月)の最初の亥の日に行われ、玄猪(げんちょ)あるいは亥の子祭りとも呼ばれていて、「亥の子餅」を食べ、無病息災や子孫繁栄を祈ります。

愛媛県西予市出身のツレの話では、その日に子供たちが地域の家々を、唄を歌いながら亥の子石で地面を搗いて回るそうです。
子供たちが石を搗くと、餅、菓子、小遣いが振る舞われ、皆で均等に分けるとか。
外国の風習のハローウィンが日本で大もてですが、「亥の子」の年中行事は廃れつつあるらしく、なんか残念ですね・・・。
菓子舗「寿々木」製の「亥の子餅」を予約できたので、炉開きの趣向の一つにしました。
(亥の子餅を食べ終わってから写真がないのに気が付きました・・・ )

                    
                     「遠山無限碧層々」のお軸

もう一つは「献上かざり」です。
11月3日は「文化の日」ですが、昭和23年までは「明治節」といい、明治天皇の生誕日でした。
「明治節」を祝って、菊の花を奉書と紅白の水引で飾る「献上かざり」をしたそうです。
菊花は黄色で、2日までは小菊を、3日からは大輪の菊を飾ります。
この風習もすっかり廃れてしまっていて、茶友の炉開きの茶事(2014年11月)で初めて見聞きした次第です。
それで、11月2日なので黄色い小菊の「献上かざり」とし、趣向の一つにしました。                
さて、肝心な炉開きの会ですが、茶事の稽古になるので茶事形式で行いました。
待合(板木、白湯)、外腰掛、迎え付け、席入、(炉開きの挨拶)、口切、初炭、昼食(懐石弁当、煮物椀、一献)、菓子、中立(銅鑼)、濃茶(台天目と濃茶平点前)、薄茶、退席です。

                    

待合で詰Yさんが板木を打つと、亭主Fさんが汲み出し(志野焼)をお出しし、外腰掛へご案内しました。
席入後に改めて炉開きの挨拶をし、新しく入会された方の紹介や全員の自己紹介をしました。
亭主Fさんへ再びバトンタッチし、お一人ずつと挨拶を交わし、いよいよ口切です。
正客N氏より「ご都合によりお壷の拝見をお願い致します」
「ご都合により・・・」と言ったのは、口切の前と、口切の後に拝見するのと仕方が二通りあるからです。ここでは口切の前に拝見する仕方で行いました。

床に荘られている壷がかぎ畳へ運ばれ、口紐と網が外され、かぎ畳を大きく回って正客前へ運ばれました。
右から左へ、左から右へ・・・・、カニ手(?)で壺を持ち、重いので下でごろりごろり・・・ゆっくり回して拝見です。

                    

拝見を終わり、亭主が御茶入日記を正客へ運びだし、壺を持ち帰ります。
封印を改め、再び口覆をすると、正客N氏より
「お壷は?」
「丹波焼で、市野信水作でございます」
「小壺ながらぴりりっとした切れ味があり、壷肌にかかる釉薬の景色が何とも味わい深く・・・堪能させていただきました。お口覆の裂地は?」
「笹蔓緞子でございます」
「ありがとうございました」


         2016年 炉開きの会・・・その2 へつづきます

2016年 炉開きの会・・・・・その2

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(つづき)
葉茶上合一式が持ち出され、今日の炉開きのハイライト、口切となりました。
亭主Fさんが小刀で合口の封を切っていきます。

実は、この時が亭主の心意気の見せ所だと思っています。
お客さまが見詰め、口切への期待が高まる中、亭主はこの瞬間に魂を込め、主客一体となるような雰囲気を味わいながら口を切っていくのです。
なかなか難しいことですが・・・もし、そういう瞬間を味わえたら最高ですね。

                  
                   (御茶入日記を連客で回し、
                   頂くお茶を決めておきます)

口を切り終わると蓋を置き、正客へお尋ねします。
「いずれのお茶を差し上げましょうか?」
正客は口切を共有した喜びを感じながら、客を代表して応えます。
「初昔をお願い致します」
「承知いたしました」

茶壺より詰茶が上合へ開けられ、「初昔」の袋を取り出し挽家へ。
口切の風情の一つでもある、トントントトトーンという音の響きもよく、
上合にあけられた詰茶が詰と書かれた挽家へ入れられました。
茶壺が封印され、諸道具を水屋へ戻し、壷を網袋へ入れて水屋へ持って下がります。
最後に御茶入日記を下げ、茶道口で総礼して口切が終わりました。

                   

初炭はYさんです。
釜を上げると、下火がかろうじて持てるほどで、時間の経過を物語っていました。
炉縁が羽箒で清められ、全員で炉の近くへ寄り、炉中や湿し灰を撒く様子、炭の継ぎ方を拝見します。
見慣れた風炉の炭と違い、炉の炭のなんと大きく頼もしいこと!
赤い炭火が美しく炉縁を照らし、撒かれた黒い湿し灰のコントラストに見惚れます。
点炭が継がれ、末客から席へ戻りましたが、このまま温かな炉を皆で囲んでYさんの手前を見ていたいような気持でした。
香が焚かれ、香合が拝見に出され、釜が掛けられました。
香合は織部の「くくり猿」、香は「黒方(くろぼう)」(鳩居堂)です。

初炭が終わると待合へ移動し、昼食(懐石弁当、煮物椀、一献、果物)を頂きました。
主菓子「亥の子餅」(寿々木製)が出され、腰掛待合へ中立となりました。


     2016年 炉開きの会・・・・・その3へつづく     その1へ戻る


2016年 炉開きの会・・・・・その3

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(つづき)
銅鑼が7点打たれ、後座の席入です。
亭主Fさんが昼休みに紐飾りしてくださった茶壺が床に荘られています。
点前座には吉野棚、水指は平戸焼・色絵四方で久しぶりの登場です。
京都・鷹ヶ峰に吉野太夫ゆかりの常照寺があり、遺芳庵(吉野席)という侘びた茶席があります。
今頃は紅葉が綺麗でしょうね・・・。
吉野棚を選んだのは、吉野窓と言われる丸窓から眺めると、色絵の水指が一段と美しく映えるからです。

                      

                          
                         京都・鷹ヶ峯にある常照寺の遺芳庵(吉野席) 

濃茶は、先ずはN氏の台天目です。
N先生の炉開きでは濃茶は台天目、懐かしく思い出しながらそれに習いました。
釜の蓋が南鐐なので、N氏初めて(20年ぶり?)の帛紗使いとなりました。
炉に変わり中蓋、中仕舞なども半年ぶりですが、すらすらと点前が進んでいきました。
湯相もよろしく、美味しい濃茶を練って頂き、3名で頂戴しました。
濃茶は「初昔」(柳桜園)です。
天目茶碗は葵天目、天目台は真塗、茶入は薩摩焼の胴締、象牙茶杓は利休形、仕覆は大黒屋金襴でした。

次いで、Mさんに長緒の点前で濃茶を練って頂き、4名で頂戴しました。
茶碗は井戸茶碗、高麗御本です。
(1639年から1717年まで釜山にある窯で、高麗茶碗と呼ばれる日本の茶人向けの茶器が焼かれました)
とても大きい茶碗なので、茶杓は京都で特注した約21センチの竹元節を使ってもらいました。
茶入は膳所焼の内海、仕覆はペルシャ裂です。
茶杓銘がステキでした・・・。
銘「小男鹿(さおしか)」、歌銘とのことなのでMさんに和歌をお詠み上げいただきました。

   わが岡に 小男鹿来鳴く 若萩の 
             花妻問いに 来鳴く小男鹿       大伴旅人(万葉集)

                     

薄茶はKさんです。
久しぶりの炉の薄茶平点前ですが、すらすらと点前が進みます。
牡丹銀杏が描かれた京蒔絵の棗から薄茶が掬いだされ、湯気の上がる釜から湯が汲まれ、軽快に茶筅が振られました。
茶碗は祥瑞、人形手、黄瀬戸の3種、薄茶は「五雲の白」(上林春松)です。
濃茶の後なので、細かな泡立ちの薄茶がすっきりと美味しく、喉を潤してくれました。
途中、Fさんと交代し、茶碗を替え、楽しい談笑が茶席に満ちていました。

                     
                       (11月7日・・・今日は立冬。今朝は冷え込みました)

こうして「炉開きの会」が無事終了しました。
「炉開きの会」で初めて稽古デビューされたTさんから翌朝メールが届きました。

 
おはようございます。
昨日は大変貴重な炉開きの会に参加させて頂き、本当にありがとうございました。
初めて目にすることばかりで、新鮮な発見と感動の連続でした。
お庭や床の間の草花の美しさ、口切の茶事、掛け軸や万葉集からのお言葉、茶釜の湯気やお香の香り、美味しいお茶とお料理、そして素敵な社中の皆様のお茶を愛するお気持ち・・・・まだまだ初心者の私ですが、大いに五感に刺激を受けて素晴らしいお時間を過ごすことができました。
(今朝もまだその幸せな余韻に浸っております)心より感謝申し上げます。   Tより

 
嬉しいメールを頂き、ありがとうございます。
初めての上、茶事形式でしたので大変だったと思いますが、これもめったにない経験だと思いますし、
私からみて違和感なく皆さまの中にとけ込んでいたように思えました。 皆さま、いい方でしょう・・・
昨日の炉開きの会が幸せなひと時になったようで、ヨカッタ!です。
心配していましたが、お迎えが間に合って、こちらもヨカッタ!です。   暁庵より


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2016年 名残の茶事へ招かれて・・・その1

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                          「 無 事 」  汀風筆

10月23日に社中N氏の名残の茶事へお招き頂きました。
とても心に染み入るステキな茶事でしたので、どうしても備忘録へ留めておきたい・・・と書き始めました。
気長にお付き合いくださると嬉しいです。

20年ぶりというN氏の茶事亭主再デビューに快く馳せ参じてくださったお客さまは、
正客I氏、次客M氏、三客Oさん、四客Mさん、五客暁庵、詰Sさんの6名でした。
半東は社中Fさんがしっかり務めてくださいました。

さて、茶事前の最終稽古の時でした。
「Nさん、花は私にお任せということでしたが、やはり自分の足で花を探してみてください。
 そうしないと亭主のおもてなしの心が通じないと思うので・・・」
「わかりました・・・・考えてみます」

                       
                              標高1500Mの紅葉が茶席の玄関に

当日の朝、横浜市内の茶席K邸へN氏の車で向かいました。
後部の座席には茶道具の他に鮮やかな紅葉が溢れんばかりに積まれています。
「八ヶ岳の紅葉と竜胆を生けたいと思い、3日前に山荘へ行ったのですがチリチリになってしまって、
 昨日また行ってきました」
(えっ! それじゃ昨夜遅く帰ってきたばかりなの?
 N氏の今日のお茶事に対する熱い思いや一生懸命さが伝わって来て、思わず・・・・

                        
                           「良寛にあらざれば・・・・」 半泥子画賛

待合に半泥子の画賛が掛けられていましたが、う~ん・・・謎々みたいです。
「どんなお話をしてくださるか、楽しみですね」と正客I氏。
亭主の迎え付けで蹲踞をつかい、茶室(四畳半)へ席入し、挨拶が交わされました。
「本日は誠におめでとうございます。
 きっとご亭主は夜も眠れぬ思いで今日のお茶事を迎えたことと思いますが、お招きを受けて以来、とても楽しみにしておりました・・・・」

早速、正客から待合の掛物についてお尋ねがありました。
「待合の掛物は半泥子の筆のようでしたが、どうぞお読み上げを・・・」
たしか(?)「良寛にあらざれば林檎なるべし、林檎にあらざれば良寛なるべし・・・」

半泥子に私淑しているというN氏は次のようなお話をしてくださいました。
「若く仕事に無我夢中だった頃は、どうせなら日本一の立派な林檎になろう・・・と思っていましたが、
立派な日本一の林檎でなくても「林檎は林檎たれ、良寛は良寛たれ」で良いのではないか・・・と。
最近、半泥子の人となりや生き方に強く惹かれるようになりました・・・」

床には見事な筆で「無事」、N氏の父上・汀風筆とか。
「この年になると「来し方」を省みることが多くなり、よくぞここまで無事に来られたという感謝と共に、亡き父が残した書を掛けてみよう・・・という気になりました」
晩年、観音崎に住して書を教えていたという父上の豪快な書と汀風という号が心に残りました。

                         
                      百人一首切れ  二条(冷泉)為相筆

その後、広間へ動座し、懐石を頂きました。
広間の床には百人一首切れが掛けられています。
二条(冷泉)為相筆で三種の和歌が書かれていて、歌切れにふさわしく華麗な表装が目を惹きます。

   おほけなく 浮世の民に おほうかな 我がたつ杣に 墨染の袖

   花さそふ 嵐の庭の雪ならで 降りゆくものは 我が身なりけり

   来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身も焦がれつつ

N氏の「来し方」の心境としては「花さそふ・・・」がぴったりかしら?
書院にはお気に入りの古薩摩の水注が荘られ、優雅な雰囲気でしたが、
それらを横目に美味しい懐石と楽しい談話をしっかり堪能しました。

 名残の懐石献立
  向付  昆布〆鯛薄造り 防風 黄菊 岩茸 山葵 
  汁   三州味噌仕立て 焼き茄子 粉山椒
  煮   飛竜頭 青菜 松茸 青柚
  焼   かます柚庵
  預   冬瓜の海老そぼろ煮  針生姜
  鉢   柿としめじと三ツ葉  胡麻酢和え
  小吸  のし梅  松の実
  八寸  落鮎の煮浸し  銀杏
  湯香  沢庵 胡瓜  しば漬
 

      2016年 名残の茶事へ招かれて・・・その2へつづく

2016年 名残の茶事へ招かれて・・・その2

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                           八ヶ岳の標高1500Mの照葉と、野菊と竜胆
(つづく)
広間での懐石の後、四畳半の茶室へ戻り、初炭です。
風炉では下火の塩梅が難しいのですが、何とか初炭まで持ったようで安堵しました。
さらさらと炭手前が行われ、父上・汀風氏ゆかりの根来塗香合を拝見しました。
きんとんの「野辺の秋」を頂戴し、中立しました。

                       

中立の間にお客さまのことを書いておきます。
正客I氏と四客Mさまは茶事と茶道具が大好きな御夫婦です。
お二人の茶室「仙桃庵」の茶事に招かれたり、我が家や京都「灑雪庵」の茶事へもお出まし頂きました。

今回も快くお二人揃ってお出まし頂きました。
・・・が、2年ほどお会いしていなかった間にMさまが体調を崩され、その日は車椅子で来てくださったのです。
椅子を用意して・・・と考えていましたが、慣れない椅子に長時間座るのは無理と判断し、車椅子のまま茶室へ入って頂きました。
茶席K邸もさぞや驚かれたと思いますが、了解して頂き感謝です。

Mさまは「それではご亭主や皆さまに申し訳ないので・・・」と躊躇していましたが、この日一番感動したのは茶事一同の優しい心意気でした。
即座に「大丈夫ですよ。どうぞそのままでお楽に・・・」とご亭主。
連客の次客M氏、三客Oさま、詰Sさま、そして半東Fさん、皆さまビクとも動ぜず、そのままを受け入れ、適切に対応してくださって、もう感謝で胸がいっぱいになりました。 
Mさまもその様子に安堵し、そのまま後座を愉しんで頂けたようです・・・(ヨカッタ!)。

                     
                          紅葉がやっと里まで下りてきました

銅鑼が6つ打たれ、後座の席入です。
床には、八ヶ岳の標高1500Mの照葉、山荘に咲いていたという野菊と竜胆がかわいらしく顔をのぞかせていました。
古備前の手付水指の前に白い仕覆に入った茶入が置かれています。
釜の湯相も好く、濃茶点前が始まりました。
威風堂々(内心はわかりかねますが・・・)、十徳姿のN氏が寂かに茶入を清め、茶杓を浄めていきます。
茶入は木地の棗、茶杓が大きく何だか変な形・・・です。

                     
                            白い仕覆に入った茶入

薄暗い茶室の中に心地良い緊張感がみなぎり、我がことのようにお点前を見詰め、やがて茶香が満ちていきました。
ご亭主は一生懸命に濃茶を練っています。
古志野らしい大ぶりの茶碗に濃茶が練り上げられ、一碗を6名で頂戴しました。
美しい緑地に金の刺繍のある古帛紗(金糸縫い取りモール)が添えられています。
香りと甘みを楽しみながら頂いた濃茶、6名分を練るのは大変ですが練りがもう一息かしら。

この日使われたお道具は名残の茶事にふさわしく、侘びた風情のものでした。
茶入は木地の中棗、戸澤左近作で箱に阿蘇山の槐樹を以て作る・・・とあるそうです。
(戸沢左近・・・江戸中期の茶道具の職人。何代か続き、遠州好みを始め茶器を多数制作。
 左近の茶器は松、桜など木肌を生かしたものが多く、木工らしい作意を見せている)
槐(えんじゅ)は硬く丈夫な木だそうですが、手に取ると、棗は驚くほど繊細で軽やか、美しい木目に惹きつけられました。
使い仕覆だそうですが、こちらも生成りの絹が時代を経て品佳く、シンプルな美しさを感じました。

                     
                           木目が美しい槐(えんじゅ)の棗
                   
いよいよあの変な形の茶杓の拝見です。 (つづく)


         2016年 名残の茶事へ招かれて・・・その3へつづく    その1へ戻る

 2016年 名残の茶事へ招かれて・・・その3

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(つづき)
いよいよあの変な形の茶杓です。

半泥子作で茶杓銘は「苦茶(くちゃ」とか。

川喜多半泥子は半泥子という号の他に「無茶法師」「其飯(そのまま)」などと名乗っていたそうで、「無茶法師」を連想する「無茶苦茶(むちゃくちゃ)」からの銘でしょうか、
対でもう一本「無茶(むちゃ)」という銘の茶杓がありそうですね。
茶杓「苦茶」は幅広でユニーク形状ですが、右利きの人が茶を掬いやすいように工夫して、わざと変形した形になっています。
形にとらわれない自由な発想が素晴らしく、遊び心を感じる銘と言い、半泥子の魅力いっぱいの茶杓でした。

                                          

ご亭主N氏は若くして会社を起し立派に育て上げた実業家であり、古美術の蒐集家でもあるので、
実業家そして陶芸家である川喜多半泥子(1878~1963年、明治11年~昭和38年)を大いに尊敬し、その作品を愛していらっしゃいます。
今回の茶事にはできたら半泥子作を・・・と思ったようで、待合の掛物、茶杓、さらにもう一点が登場して、私たちを楽しませてくれました。

濃茶が無事に終わり、流石のN氏も少々お疲れのようで、後炭と薄茶は半東Fさんが大活躍でした。
N氏も交え、いろいろなお話をしながら薄茶を頂きました。
干菓子はいちょう煎餅と紅葉です。
主茶碗は紅葉御本、半泥子作です。
上品で優雅な姿、内側に現れた火色の美しさ、持てば手にしっとり馴染む感触・・・好いですねぇ。
「秋の風」という銘があるそうですが、四季を通じて使って頂きたい茶碗でした。

薄器は古唐津の広口茶器、大きな牙蓋が付いていて、数寄者好みの一品です。
半泥子の「苦茶」の茶杓が侘びた味わいの薄器にぴったりお似合いでした。

                      

・・・楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますね。
こうして名残の茶事「来し方を省みて・・・」は終了しましたが、今なお茶事のあれこれを思い出しています。
N氏の堂々の亭主ぶりに安堵し、私も客として茶事の愉しさをしっかり味わいました。
一口に茶事といってもいろいろな茶事がありますが、車椅子で来てくださった茶友と過ごした、
忘れられない茶事になりそうです・・・。


最後に三客M氏から嬉しいメールが届いたので記します。(もう感謝!しながら・・・

暁庵さま
先日は茶事にお誘い頂きありがとうございました。

Nさまのご亭主ぶりには深く感じ入りました。
「正真に慎み深く、おごらぬさまを侘と云う」という言葉を思い出しました。
懐石や点前の一所懸命さ、道具の説明をするときの楽しそうなご様子に
こちらも愉しくひとときを過ごさせて頂きました。
また、Mさまの 時を過ごすにつれお元気になられる姿も印象的でした。
型にはまらぬ暖かい一座に加えて頂いた事に心より感謝申します。   Mより


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鎌倉円覚寺の風入と呈茶席

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11月3日~5日まで鎌倉円覚寺で宝物風入がありました。
最終日5日の午後、5年ぶりに円覚寺を訪れました。
円覚寺は正式には瑞鹿山円覚興聖禅寺といい、臨済宗円覚寺派の大本山です。

                    

お目当は円覚寺の開山・無学祖元(仏光国師)の所要品を入れた開山箪笥と国宝・舎利殿です。

開山箪笥は背負えるくらいの小さな箪笥のため、火災などの難を免れ、今に伝えられています。
繊細な鎌倉彫や自然木の払子(ほっす)、水晶の数珠、団扇、精密に彫られた酔翁亭図堆黒盤や椿梅竹文堆朱盤がガラスケースの中に展示されています。
開山箪笥の中には九条袈裟や法具を包んだ帛紗があって、遠く中国の南宋や元時代の織物、染色、刺繍の素晴らしさが垣間見られます。
それにしても開山・無学祖元が使用した物たちのなんと繊細で優雅でオシャレなことか・・・当時の仏教文化の質の高さにびっくりしました。

                                          
                    
                          開山所用と伝えられる茶道具

九条袈裟(たぶん「白茶地団龍文紋羅九条袈裟」だと思う・・・)が一枚展示されていました。
しっかり見ようとして、右足指を防御柵にぶつけ、おもわず「痛いっ!!」 
すると、目の前の廊下に座っていらした3人の御坊様から声が掛かりました。
「あぁ~痛かったね。痛いのは生きている証しや・・・」と。
「・・・・(痛みでしばし絶句のあと)なぜ九条袈裟と言うのですか?」とお尋ねしました。

お坊様が通常着用している袈裟の大きさが一条、九条とはその9倍の長さ、約4メートルの大きな袈裟が九条袈裟です。
四ツ頭など正式な儀式には九条袈裟を着用しますが、大きな袈裟のため着用が大変で難しく、円覚寺では七条袈裟を用いることも多いとか。

風入なので、どの部屋にも素晴らしい墨跡、書状、仏画などが所狭しと掛けられています。
足指の痛みをこらえながら見て回りましたが、いささか疲れてきたころに
「茶席で抹茶を一服いかがでしょうか? 最終のお席になります」とお声が掛かりました。
喜んで第二展示場(大書院)の呈茶席へ入りました。

                    
                              大書院から庭を見る

床には無準師範像(南宋時代の高僧、無学祖元の師)、無学祖元像、夢窓疎石像の3幅の肖像画が掛けられています。
点前座には風炉釜、染付の水指が置かれた高麗卓があり、私は点前座に近い末座に座れたのでじっくりお点前を拝見させて頂きました。
お点前は若い雲水さん、裏千家流です。
文字で表現するのは難しいのですが、歩き方、茶碗の運びだしから魅了されました。
所作の一つ一つが基本を守りつつ、指の先端まで神経が行き届いているような繊細な美しさを感じ、
1つも漏れさじと見つめます。

特別注文したという蓮弁の菓子と、天目台に乗った茶碗が運ばれてきました。
菓子と薄茶を頂戴しましたが、その間もお点前が気になって目が離せません。
最初から最後までゆったりと落ち着いたテンポも、閑かなる気迫も崩さず、見事でした。
別世界のような清々しい雰囲気はお点前の雲水さんのお茶に対する心構えや日常の修練から生まれていると思うのですが、
円覚寺の風入へ来て思いがけず、自らを反省する機会を得、茶の原点に触れたような気がしています。
(きっと今の私に必要なことだったのでしょう)

                    
                    妙香池(みょうこうち)・・・夢窓疎石作と伝える庭園の遺構

日が落ちるのが早いので、せかされるように国宝・円覚寺舎利殿へ。
大好きな舎利殿と5年ぶりの再会でしょうか。
そのあとに弁天堂と「洪鐘(おおがね)」へ長い階段を登り、眼前に広がる北鎌倉の秋景を楽しみ、帰途に着きました。

                    
                              国宝・円覚寺舎利殿

足指の痛みが取れず、2週間以上が経ってから近所の整形外科へ行き、レントゲン写真を撮りました。
「ほらっここ見て。骨折しています・・・」とM先生。
湿布して、中指と一緒にテーピングしていますが、年内にくっつくかしら?? 


五葉会・唱和之式・・・晩秋の花を詠む

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11月11日に五葉会が開催され、久しぶりにN先生にお出まし頂きました。

科目は軸荘付花月、唱和之式、昼食後に茶通箱付花月です。
とてもハードな内容でしたが、N先生のご指導の下、新鮮な気持ちでお勉強ができました。
中でも唱和之式が大好きでして、1年ぶりにワクワクしながらお稽古しました。

                     

唱和之式は、全員で花を活け、亭主が香を焚き、全員で香を聞き、亭主が濃茶を点て、全員で濃茶を頂きます。
(思い出すままに、ポイントだけ書きますが、詳しくはコチラをご覧ください
最初は八畳ですが、亭主が香を最後に聞き、香盆を床(書院)へ荘り、立つと同時に連客一同四畳半へ進みます。

亭主が濃茶を点て、仮座へ入り、亭主も一緒に濃茶を頂き、拝見の茶碗を正客へ持っていき、亭主は点前座に戻ります。
「薄茶は花月で」の亭主の挨拶で客は帛紗を付け、(菓子付)花月となります。
薄茶が終わり、拝見物が出され、亭主が取りに出て、総礼の後、亭主は拝見物を持ち、正客は干菓子器を持って、連客一同立って、亭主は水屋へ下がり、客は八畳に戻ります。

亭主が重硯箱を持ち出し、客は懐に忍ばせていた短冊に、最初に活けた花に因む和歌をしたためます。
亭主が文台を持ち出すと、正客から順に短冊の和歌を二度読み上げ、短冊を文台に置いて回します。
和歌をひねり出し、短冊に書き付け、唱和するシーンが何とも言えず優雅な雰囲気です。
自分はさておき、皆様の様子を拝見して、いつもうっとりしています・・・

                    

花も季節によって違いますので、炉と風炉と、時季を変えて楽しみたい唱和之式です。
記念に和歌を記しておきます。

                    
        ほととぎす
           ほととぎす亡き人しのぶ花なれば
                幼き我を重ね思ほゆ      宗真


                    
        野紺菊
           雨に濡れ心も寒し野紺菊
               永遠の別れの友をしのぶ     宗里


                    
        もみじ
           風ふけば落つるもみじば水きよみ
               ちりぬ影さえ底に見えつつ    宗智


                    
        つわぶき
           虫の音も百花も絶えてそののちに
               庵なぐさむつわぶきの花     宗曉


                    
        石蕗
           照葉には心うつろふ様々と
               石蕗凛とまっすぐに立つ     宗悦


                    
        菊
           菊の香に昔の教え忍びつつ
               我が行く道に思いおこせば    宗厚



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霜月の稽古だより・・・歌銘の茶杓

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                      やっとコナラが色付いたのに雪が・・・(11月24日)

霜月もつごもりとなり、あわてて稽古だよりを書いています。
その日(23日)は午前中にKさん、午後からFさんとAさんの稽古でした。

27日の口切の茶事にKさんが半東見習いとして茶事デビューすることになり、
足指負傷の亭主に代わり薄茶点前を担当してくださいます。
それで、口切の茶事の茶道具を使って薄茶点前をお稽古しました。
(・・・茶事当日、いつものようにきれいなお点前でデビューを無事果たしました。
 きっと本人は大変だったと思いますが、一生懸命のおもてなしはお客さまに心地良く伝わったことでしょう。
 見習いの文字が取れるのを目標に頑張りたいとのこと・・・頼もしく思っています)

                   

午後はFさんの初炭手前から始まりました。
炉になって初めての初炭なので、ベテランさんとはいえ基本に返って細かく指導します。
特に歩き方、座わる位置、湿し灰の撒き方、炭の置き方でしょうか。
香合は朱色が鮮やかな柿、持つとずっしりと重く、高岡銅器です。
香は鳩居堂の黒方(くろぼう)でした。

Fさんの台天目、Aさんの唐物と薄茶平点前と稽古は続きます。
風炉と違い、炉では外隅と内隅があり、足の運びや座る位置が難しく、
身体が慣れ親しんだ頃に風炉へ変わるのはいつものことです。

                   

Aさんの薄茶の茶杓銘が素敵で、毎回伺うのを楽しみにしています。
この日の茶杓銘は「常盤(ときわ)」、歌銘とのことなので
「どうぞお歌のお詠み上げを・・・」とFさん。

「お歌は
   常盤(ときわ)なる松のみどりも春来れば  今ひとしほの色まさりけり

 作者は源宗于(みなもとのむねゆき)、古今和歌集でございます」

有名な歌ですが、Aさんがお詠み上げくださると一層みやびに聞こえて、うっとり。
食いしん坊の暁庵はこの歌からいつも表千家の常盤饅頭(ときわまんじゅう)を連想しています。
常盤饅頭は、千年変わらない松の翠(みどり)を寿ぎ、白い薯蕷饅頭に緑色に染めた白小豆を包んだ、お正月用の菓子です。

歌銘の茶杓に刺激を受けた暁庵はさっそく文庫本・万葉集(三)を購入し、何か心に留まる万葉の歌はないかしら? と読んでいます。

                   

                   
                        ・・・こんなに積もりました

ところで、「常盤なる松の・・・」の源宗于(みなもとのむねゆき)ですが、
調べてみると、他にもお気に入りの和歌がありましたので、記しておきます。

    冬
    
    山里は冬ぞさびしさまさりける  人めも草もかれぬと思へば   (古今集)


    恋
    
    人恋ふる心は空になきものを  いづくよりふる時雨なるらむ

   (人を恋する心は我が胸にあって空ではないのに、どこから降ってくる時雨(涙)なのだろうか)


翌日(24日)の未明から雪になり、11月の雪景色にびっくりでした。   


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清峰会茶会へ・・・畠山記念会館・浄楽亭にて

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              「仙桃庵」(せんとうあん)の軸・・・一目見ただけで胸が熱くなりました

6月頃に茶友Mさんこと松尾宗華さんから電話を頂きました。
「11月20日に畠山記念会館で茶席を持つことになりました。
 Kさんと一緒に是非いらして下さい」
体調が今一つというMさんですが、とても明るく前向きな姿勢にいつも元気づけられています。

                       

その日から11月20日の清峰会茶会を楽しみに待っていました。
その間にご主人I氏とMさまがお揃いで社中N氏の名残の茶事へお出ましくださり、感謝です。

当日11時にKさんと畠山記念会館のフロントで待ち合わせ、すぐに濃茶席へ・・・。
でも濃茶席は2席(翆庵と毘沙門堂)とも既に整理券が配られ満席とのことで、
茶会に不慣れな二人はうろうろするばかり・・・。
やっと薄茶2席(沙那庵と明月軒)の整理券をゲットし、早めに点心席へ入り一息着きました。

                       

石州流の沙那庵と裏千家流の明月軒で薄茶を頂戴し、Mさんの浄楽亭へ向かいました。
すでに15時近くになり最終のお席だそうで、間に合って良かった!
Mさんは表千家流、暁庵は裏千家流なので
「席主のMさまは古い茶友でございまして、お流儀が違いますが正客席に座らせて頂きました。
 どうぞ皆様、宜しくお願い致します」

             

席主Mさんは洋服、しかも車椅子です。
その堂々とした席主ぶりと床の「仙桃庵(せんとうあん)」と書かれたお軸に感激し、もう胸が熱くなりました。
「Mさま、本日は誠におめでとうございます・・・
「仙桃庵」は表千家九代・了々斎の御筆です。

仙桃とは中国神話に登場する桃のことで、
崑崙山に住む最高位の仙女・西王母の誕生日(3月3日)に蟠桃会(ばんとうえ)という宴が催されます。
古来、桃は魔よけの力があるといわれ、崑崙山には不老不死の霊薬とされる桃の木(蟠桃)がありました。
この桃は三千年に一度しか熟さず、西王母は桃が実ったのをお祝いして蟠桃会を開きます。
その宴に呼ばれるのは超一流の神仏たち、長寿と富貴を象徴する宴だそうです。

そんな神話から「仙桃庵」とは、西王母にちなんで長寿と富貴を慈しみ、茶を楽しむ庵と思っていたら、
席主Mさんの誕生日が3月3日で、茶会の直前にお軸との出会いがあったとか・・・。
実は、ご主人I氏とMさんが建てられた茶室の名前が「仙桃庵」、「仙桃庵」の茶事へもお招き頂きましたが、初めてその命名の意味を知ったのです。
茶道具との出会いは不思議なもので、軸「仙桃庵」が清峰会茶会へ臨む、Mさんのすべての思いを表わしているように思われました。

                    

茶花が大好きなMさん、どんなお花かしら? と楽しみにしていました。
花は桃色の西王母とブルーベリーの照葉、黄釉の花入(即全作)が花をより華やかに引き立てています。
時代を感じる春秋蒔絵香合、そして赤楽茶碗が床に荘られていました。
あとでお尋ねすると、六代・覚々斎手造の赤楽で銘「羅漢(らかん)」、
Mさん扮する西王母の茶会へ馳せ参じた聖者のお一人のようにも思われます。
機会がありましたら、「羅漢」で濃茶を喫んでみたいものです。

                    
                    

お点前さんは袴姿の若者、久しぶりの表千家流お点前です。
華麗な呉竹蒔絵の大棗(一后一兆作)から茶が掬いだされ、さらさらと茶が点てられました。
薩摩焼の呉器写という珍しい茶碗(碌々斎書付)で、まさに月に叢雲の薄茶を頂戴しました。
しっかり熱く美味しかった! 茶銘は金輪、詰小山園でした。
 
最後に、気になっていた茶杓ですが、銘「西王母」(碌々斎作、即中斎箱書)。
その銘を伺って、やっぱりMさんは西王母の化身として今日の茶会へ現われたのだ・・・と妙に納得し、
お体の回復と長寿と益々のご活躍を祈りつつ、浄楽亭を後にしました。

口切の茶事を2回しました・・・・2016年11月

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                         遠山は遥か奥深く遠けれど・・・
                         ゆっくり歩んでいきたい

今年も残りわずかとなり、年内にどうしても書いておきたい茶事があります。

口切の茶事を11月19日(土)と27日(日)に頑張って(?)2回しました。
近頃あちらこちらと故障がちの我が身を省みると、少しでも元気なうちに皆さまを我が家の口切の茶事へお招きしたい・・・と発心したからであります。

                        
                              後座に荘られた茶壺

19日のお正客は茶友Sさま、6年前にSさまの内口切の茶事へお招きされて以来、いつか私も口切の茶事をしてみたい・・・と密かに憧れておりました。
やっとお招きすることが出来て、もう感無量でした。
ご連客様は日頃親しくしている方ばかりで、次客Hさま、五葉会のお仲間の三客Yさま、四客Kさま、五客Yさま、そして詰は社中のN氏です。

                        
                              柏葉あじさいと西王母 (11月19日)

27日のお正客は京都の茶友Sさま、8月にお伺いすると
「あいてます!!その日!是非参席させて下さいませ!」とのことで、京都から駆けつけてくださり感謝感激です。
三客Nさまと四客Tさま、京都へ出かける寸前のNさまの茶事を懐かしく思い出しながらお招きしました。
次客Oさま、五客Iさま、詰Yさまは暁庵と稽古に励んでいる東京教室のお仲間です

                         
                          ニシキギと白玉椿 (11月27日)

懐石は佐藤愛真さん、前回に続いて腕を振るって頂きました。

                        
                             煮物椀 (銀杏のすりながしです)
                        
                           炊き合せ (愛真さん自製のひろうずが絶品でした)

そして、亭主をサポートする半東ですが、19日は社中のベテランFさんに半東を、27日は社中の新人Kさんに半東見習いをお願いしました。

こうして全ての役者が揃い、口切の茶事の幕が二度上がったのですが・・・・。
茶事にアクシデントはつきもので、それをどのように乗り越えるのかが亭主の課題と重々承知していましたが、一番の課題は私の足指の怪我でした。
爪先立ちが大変で、お点前や懐石の運びなどお見苦しかったことと思います。
半東のお二人に助けられ、19日はFさんに懐石と薄茶を、27日はKさんに薄茶をお願いして乗り越えました。
それでも、それらの状況を全て飲み込んでお客さま方は口切の茶事を楽しんでくださったようで、それが何より嬉しく、私も幸せなひと時を過ごしました・・・。

今回ほど、お客さまからのお手紙が待ち遠しく、嬉しかったことはありません。
それで、19日の茶事のYさまと27日の茶事のSさまから頂戴したお手紙の一部を掲載したいと思います。
心から感謝を込めて・・・・

                        

 Yさまより
いちょうの黄葉が美しい季節になりました
先日は口切の御茶事有難う存じました
それぞれ物語のあるお道具と美しいお点前での大変美味なお濃茶
経験豊富な御連客様との愉しい会話と
まことに御茶事冥利につきる時を過ごすことができました
心から感謝申し上げます
暁庵さまのお茶に対する思いを少しでも知りたいと、
五葉会の門を叩かせて頂いた私としましては貴重な経験でした
やっと御茶道の入口に立った私です  どうぞ今後とも宜しくお願い申し上げます
御足の具合はいかがでしょうか
くれぐれも御身大切になさってください   Yより


                

 Sさまより
露地の落葉がはげしく掃除に途方に暮れています
先日は口切の茶事へのお招き ありがとうございました
口切は大寄せとか稽古でしか経験がなく 今回横浜まで寄せて頂いた甲斐があり
全体の流れもよくわかり勉強になりました・・・と申しますより何より楽しかったです

「茶壺を準備するところからして大変そうやな」と、とても自分はできないと
常々思っていた口切りをあのようにするするされるとは驚嘆です
封印の和紙をじょりじょり切る所作はどきどきするとともに何だか楽しい作業のように思えました
半袋までお手作り、詰茶も自分でとお聞きしこれまたびっくりです
「簡単よ!」とおっしゃいますが、身近にそういうことをこなされている方がいない身にとっては
「それって自分でできるなんて知らなかった!!」と目からウロコでした。

                    
                          暁庵も大好きな「古染の向付」 

思い入れのあるお道具 社中N氏蔵の垂涎の古染の向付  大きな大きなふくべの炭斗
ぎんなんのすり流しの煮物椀が素晴らしかった印象に残る懐石 いずれも心にのこります
黒楽茶碗「不老門」に再会できたのも嬉しかったです
炭もよく熾って炉の中を覗くのが楽しいくらいでした

「遠山無限碧層々」のお軸の遠山が茶の湯の深い深い山で、
奥まで行きつかないという思いは私も同じです
それでも先を行かれる暁庵様のあとを追ってさらに分け入りたいと思った茶事でした
ありがとうございました      Sより


(独り言・・・
 私が言うのも変ですが、とてもステキで楽しい口切の茶事でした。
 それも全てお客様のお客ぶりのおかげと感謝しております。
 とっても楽しかったので、またまた「茶事したい病」にかかりそうです。
 皆さま、ありがとうございました )    やっと

夜咄の茶事へ招かれて・・・・・その1

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                         茶事の写真がないので・・・・我が家のですが


今年も残りわずかとなり、年内にどうしても書いておきたい茶事があります。

12月3日(土)、Oさまから夜咄の茶事へ嬉しいお招きを頂きました。
本当に久しぶりの夜咄の茶事、ご指名で、不肖・暁庵が正客、次客はお名前だけは伺っているKさま、詰は社中N氏です。

茶事の数日前にOさまから電話を頂きました。
日没の関係で16時半から17時待合へ変更したいこと、Oさまは懐石に専念したく、亭主はOさまに代わってM氏が務め、半東はSさまがいたしますとのことでした。
(どうやらN氏の名残の茶事へお出まし下さったOさま、M氏、Sさまの3人連携でなさる夜咄の茶事らしい・・・と、やっと事情が呑み込めました)

さらに、次客Tさまは今日庵へ出入りしておいでの大先輩だそうです(陰の声・・・その方に正客を!)。
しかし、夜咄なので手足が覚束ないといけないので、正客をお願いしたい・・・とのこと、
「・・・委細、承知いたしました」と潔く覚悟を決めましてございます。

「何を着て行こうかしら?」
夜咄には灯火の邪魔をせず、・・・といって暗闇に潜むようなものでなく、さんざん迷った挙句、
口切(27日)に着たグレイの色留袖に、ある方から頂戴した紺地に尾長鳥の帯を締めて臨みました。
N氏も迷ったそうですが、袴ではなく十徳をお召しでした。

                      

O邸へ着くと、既にあたりは薄暗く、待合には行燈が用意されています。
先着の大先輩Kさまとご挨拶を交わし、萩焼でしょうか、達磨のような手あぶりに心もほっこり温まりました。
半東Sさまが汲み出しを運んできました。
「あらっ!何かしら? 甘いですね・・・」
なんせ薄暗がりの中、よく見えません。あとで伺うと橙(だいだい)のジャムが入っていたみたい。

    吾妹子(わぎもこ)に 逢はず久しも 甘美物(うましもの)
    阿部橘(あべたちばな=橙)の こけむすまでに      万葉集 詠み人知らず


                      
                                  橙(だいだい)           

手燭を持ち、三人一体となって外腰掛へ。
Oさん宅はいったん外へ出てから裏庭へ回ると外腰掛があります。
所々に足元行燈や灯りが置かれているのですが、手探りするように芝戸を開けて外腰掛へ辿り着きました。
そこは都会とは思えぬ別世界、しだれ桜でしょうか、葉をすっかり落した樹が灯りの中に浮かび上がり、石灯籠に蝋燭が灯っています。
灯りのあやなす趣きを楽しんでいると、ご亭主M氏が湯桶を持って現れました。
胸に熱いものを感じながら手燭の交換をし、無言の挨拶を交わしました・・・。

手燭で足元を照らしながら一歩一歩蹲踞まで雁行、一足お先に席入りしました。 


        夜咄の茶事へ招かれて・・・その2へつづく

夜咄の茶事へ招かれて・・・・・その2

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                          茶事の写真がないので・・・・我が家のですが

四畳半の茶室へ席入りすると、床に「無事」が掛けられ泰道老師のお筆です。
ご亭主M氏と挨拶を交わし、すぐに前茶(ぜんちゃ)が点てられ、たっぷりの薄茶をおもあいで頂きました。
短罫の下、水屋の有り合せの道具で点てられる前茶は夜咄独特のものです。
道中の寒さを思いやる亭主の温かなおもてなしが嬉しいひと時でもあり、
ジャム入りの汲み出しの甘みが舌に残っていて、待ち遠しい前茶でもありました。

続いて初炭になり、玄々斎好の鴨箱炭斗が持ち出されました。
手燭を持って灰器が点前座へ運び出されるのですが、この瞬間が大好き・・・です。
短罫に手燭の灯りが加わって、茶室は少し明るくなり、同時に複雑な陰影も増していくようです。

初履きがされ、急ぎ炉縁へ寄って覗くと、3本の下火がほんのり赤く浮かび上がり、湿し灰が撒かれた炉中の美しさに大満足でした。
実は亭主M氏は湿し灰作りの名人でして、暁庵はこの一瞬を待ちわびていたのでした。
加えて、もう一つ楽しみにしていることが・・・・(これは後ほどに)。
しばらくこのまま炉中の風情を見惚れていたいと思ったのですが、さらさらと炭手前が進み、香合の拝見をお願いしました。

                         

夜咄の面白さはいろいろありますが、夜目、遠目で見たものを手近に寄せ手燭で拝見すると、予想と全く違っていることもその一つです。
「タヌキ」と思っていた香合は「フクロウ」、ウインクしているように見えます。
「黒柿かしら」と思っていた炉縁は「焼き杉」でした。
今にして思えば・・・この辺りから、夜咄の持つ魔力に引き込まれていったような気がします。

Oさま手づくりの懐石が出されました。
膳燭が出されたのですが、中身が全くわかりませんで、まさに闇鍋状態でした。
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を総動員して何を食べているのか、探りながら賞味しました。
懐石といえば、先ずは視覚から食欲を覚えますが、それが欠落すると大変なことになります。
あっ、これはゴボウらしい、これは・・・??

懐石後に栗餡の乗った粟ぜんざいをたっぷり頂き、中立となりました。
「それでは中立をさせて頂きます。用意が整いましたら、どうぞお鳴物などでお知らせください」
「ことによりましたら、そのようにさせて頂きます」
(陰の声・・・実はM氏のお鳴物がもう一つの楽しみ!でした)


M氏の打つ喚鐘の音色が心を震わせ、今でも耳に残っています・・・・


        夜咄の茶事へ招かれて・・・その3へつづく     その1へ

夜咄の茶事へ招かれて・・・・・その3

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                       セキショウ (季節の花300提供)

後座へ席入りすると、床にセキショウの鉢が置かれていました。
とても立派なセキショウで、青々とした葉が清々しく、Oさまのお心入れを感じます。
点前座にまわると、古備前らしき種壷の水指と茶入が荘られ、湯相も好く、濃茶が楽しみです。

濃茶点前が始まり、一同、閑かに目を凝らしてM氏の点前を見詰めます。
一糸乱れぬ所作と佇まいに緊張感と清浄感を覚えながら、
「お点前は茶事の御馳走、亭主の最大のおもてなしです」と言われたA業躰先生を思い出しました。

茶香が茶室に満ちて来て、熱くよく練られた濃茶を頂戴しました。
「お服加減いかがでしょうか?」
「熱く、まろやかな甘みがあって、とても美味しゅうございます」
五感を総動員して闇の中で味わう濃茶は格別でした。
茶銘はたしか?祥瑞の昔、広島・平野園の詰だったと思います。

濃茶が終わり、薄茶になりましたので
「よろしかったら、Oさま、Sさまもご同席でいかがでしょうか」とお声掛けをしました。
すると、水屋にいらしたOさま(懐石)、Sさま(半東)、それにIさま(灯り担当)の3人が席に入られました。
なんと! 客3人に亭主方4人のおもてなしに改めてびっくりし、みなさまのお気持ちに大感激でした。
その日の道具組から鴨とり権兵衛さんの昔話やなら橘プロジェクトから取り寄せてくださった干菓子に因む話、
N氏の名残の茶事の思い出など次々と話が弾み、夜が更けていきました。

                   
                          橘(たちばな)の実

頃合いを計り、亭主M氏が箱炭斗を持ち出して、炭を継ぎました。
止め炭です。
薄茶が終わり、釜の煮えも落ち始めています。
このままの状態で客を送るのはしのびなく、もう一炭して釜が松風を奏でるまで清談して過ごすのです。

Oさまがいろいろ考えて取り合わせてくださったお道具のうち、茶杓を書き記しておきます。
茶杓は後藤瑞巖和尚作で銘「庵の友」でした。
京都に居るときにOさまが灑雪庵・節分の茶事へお出まし下さって、その時の茶杓が「庵の友」でした(今は茶友Sさまの元にありますが・・・)。
これからも「庵の友」として親しくご交誼頂けると嬉しい限りです。

清談はなかなか尽きませんが、このへんでお暇の挨拶となりました。
      
                   


・・・あれから2週間が過ぎ、その間に思うことがいっぱいありました。
夜咄の茶事は独特の感性が磨かれる、特別な茶事だとやっと気が付きました。
人間が本来持っていた野生の感覚、いつか失われたり、忘れてしまっている感覚が暗闇ゆえに呼び覚まされ、それが鍛えられる貴重な機会ではないかと・・・。

それとは別に夜咄ならではの工夫や道具組の面白さにも心惹かれ、大いに刺激を受けました。
夜咄の茶事はかくあるべき・・・といったようなことは一切無にして、
暁庵が夜咄の茶事をやるとしたら、どんな茶事になるかしら?・・・考えるだけで楽しいです。


        夜咄の茶事へ招かれて・・・その2へ戻る    その1へ戻る  


師走の教室だより・・・Merry Christmas !

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                               雪景色 (2016年11月24日撮影)

                         
                        皆さま Merry Christmas !
                          
もうじき~楽しい~クリスマス~ですね。
昨年は、ご近所さんとクリスマスの茶会を楽しみましたが、今年は諸事情により自重しています。

12月17日(土)、Tさんが娘のSちゃんを連れてお稽古にいらっしゃいました。
Sちゃんは幼稚園の年中組なので5歳、暁庵へ2回目の来庵です。
「娘のSも先生宅へ伺うのをとても楽しみにしています」というメールを頂き、
クリスマスも近いので、どんな趣向でお迎えしようかしらと、こちらも楽しみでした。

20年前にアメリカのサンアントニオで買ったメキシカンツリーを玄関に吊るし、
待合に「聖夜」の色紙と手製のリースを飾り、長年出番のなかったサンタさんにも登場してもらいました。
主菓子は、きんとんのクリスマスツリーです。
それから、鳥、うさぎ、オルゴール付香合などを並べ、中にお菓子(金平糖、マーブルチョコ、飴)を少しずつ入れておきました。
ささやかなプレゼントです。

                         

当日、Tさんがお稽古をしている間、お点前の真似をしながら遊んでもらえば・・・と思い、
小さなお盆に盆略点前の一式を用意しておきました。
ところが、小さな扇子を前に置いてきちんと挨拶するではありませんか。
そして、Tさんの盆略点前の稽古が始まると、横目で見ながら一緒に手を動かし始め、
帛紗の代わりにハンカチを取り出し、棗や茶杓を拭き始めました。

「むむっ! これは本当にやる気だわ」・・・びっくりするやら嬉しいやらです。
「お母さんのお点前が1回終わったら、帛紗さばきを教えますからね。
 それまでハンカチを使って一緒にお稽古していてね」

Tさんは11月から入門し、今日が3回目のお稽古でした。
割り稽古が終わり、盆略点前で初めて薄茶を点ててもらい、Sちゃんと暁庵が頂戴しました。
主菓子はクリスマスツリー、ふくろうが描かれた小服茶碗でゆっくり飲んでもらいました。
「熱いけれど美味しい・・・」

                         

Tさんが2回目の支度をしている間に、袱紗捌きの稽古です。
基本の基なのできちんと姿勢から教え、棗と茶杓の清め方まで教えました。
手が小さいので思うようにいかず、何度もやり直しました。
2回目の稽古の間も熱心に袱紗捌きに取り組んでいて、終わるころにはとてもきれいに帛紗が畳めるようになりました。
う~ん・・・子供ってスゴイ!ですね

Sちゃんのやる気と一生懸命さが伝わって来て
「月に1回で良いからお母さんと一緒にお稽古にいらっしゃい」と言いました。
Sちゃんはニッコリして頷き、Tさんも嬉しそうでした。

あの言葉が耳元でささやきます。
「養之如春 (これを養う春の如し)」
ゆっくりでいいから楽しくお稽古をしてくれたら・・・と思います。


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師走の教室だより・・・炭手前に汗して

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                           水仙が咲きだしました

炉の初炭手前にほぼ全員で取り組んでいます。
一口に初炭手前と言っても、棚なし、棚あり、台子、長板、大炉、釣釜、透木釜などがあり、
奥が深いことに改めて気が付きました。

先ずは11月2日の教室の炉開き、毎年交代で初炭手前をしますが、今年はYさんでした。
吉野棚でしたが、羽根と香合は炭斗に仕組んで初炭をしていただきました。
遠方なので事前の稽古はできずに心配していましたが、見事にお役を果たされました。
きっと身体が動くようになるまで家でお稽古をしてくださったのでしょう・・・。

                        

教室の目標として、11月と12月の間に少なくとも1回は初炭手前に挑戦してもらうことにしました。
ベテランさんも新人さんも、一からスタートで汗しています。

他所から暁庵の教室へ移っていらして、初めて炭手前に挑戦した方もいらっしゃいました。
きっと大変だったことでしょう。
でもね! 大丈夫! 失敗を恐れずに何度でも挑戦してみてください。
一度やってみると、炭手前の見学ポイントが段違いに違うことを実感すると思います。
あとは稽古をしっかり積んでいけば、炭手前が好きになり、楽しくなること間違いなしです。

                        
                        懐かしい灑雪庵のクリスマス飾り
  利休百首より

  茶の湯とはただ湯を沸かし茶を点てて飲むばかりなる事と知るべし
   (言うは易し、行うは難し・・・)

茶事で炭手前はとても重要で、欠かすことができません。
茶事の初炭では、後座でお客さまに濃茶を美味しく差し上げるため、火相と湯相をぴったり合うように心がけますが、何度やっても難しいです。
炭を選び、置き方も空気の通り道を塩梅して(湯が早く沸くように、または、ゆっくり沸くように)置いていきます。

炉用の茶炭は京都から購入していますが、火のまわりが早く、いつも懐石途中で沸きすぎてしまうのが、目下の悩みです。
それで、炭の置き方や大きさを考えたり、炭を何日前に洗うべきかなど、研究中です。
一方で、茶事中にはハプニングは当たり前、うまくいかなかったことをどのように対処するか・・・が求められます。
中立で炭を足すこともできますが、後炭の風情が変わってしまうので、なるべくやりたくありませんの・・・(いつもじっ~と我慢して後炭を迎えます)。

                        

さて、稽古の方ですが、炭手前を楽しんで稽古してくださると嬉しいです。
炭道具は変わり映えしませんが、香合や練香はいくつか取り揃えているので、
季節や年中行事についての問答を楽しんで頂けるかしら?

あと1週間で新年を迎えますが、1月18日に「初釜」を茶席K邸でいたします。
客、初座の亭主(初炭、懐石)、後座の亭主(暁庵が濃茶)、半東、後炭、薄茶点前など、社中で交代して初稽古を兼ねています。
N氏が初座の亭主を務め台子で初炭手前、台子の後炭手前は半東Yさん、たぶんお二人とも自宅で猛(?)稽古中でしょうか。
N氏の古染コレクションから香合のお持ち出しを頼んだので、こちらも皆で楽しみ!にしています。 


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クリスマスイブに曨月の茶事へ・・・・1

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                    (写真はすべて相客K様からです)

今年も残り3日となり、年内にどうしても書いておきたい茶事があります。

12月24日に曨月の茶事へまいりました。
ご亭主のTさまは今お茶事に燃えていて、まさに旬の方です。
毎月お茶事をやっているそうで、しかも一人亭主で懐石までなさるとか。
・・・そんなTさまの心意気に同感しながらも、同門ということで正客の指名があり、
初めてのご亭主、連客3名さまとも初めての御目文字に多少の不安を覚えながらの参席でした。

暁庵のお茶サロン
で初めてのお客様をお迎えすることはあるけれど、まさに逆の立場です。
頭と心を柔らかくして、どんな事があっても受け入れること!」と自らに言い聞かせました。
・・・でも、心配は全く無用でした。

その日はよく晴れていました。
客4人は近くの駅で待ち合わせ、Tさま宅へタクシーで向かいました。
待合へ入ると、「忙中閑」の画賛、太湖に舟を浮かべた釣り人が一人、月を眺めながら悠然と釣り棹をたらしています。
その様子は、師走のクリスマスイブに集った私たちのよう、同じ舟に乗ってこれからお茶を楽しむのでしょうか?

                    

庭の腰掛待合で蹲踞の筧の水音を心地好く聞いていると、ご亭主の迎え付けです。
初めて御目文字のご亭主Tさまと心を込めて無言の挨拶を交わしました。
庭先から八畳の茶室へ席入りするところは、我が家と似ています。
床には「今日無事」の軸、天竜寺牧翁和尚のお筆です。
そして、備前でしょうか、種壷が帛紗の上に荘られていました。
点前座にまわると、壁際にクリスマスの飾りが煌めき、炉には存在感のある釜が掛けられていました。

「なんて素敵なお釜かしら! この形はなんというのかしら? 御作は?」
戦国武将を思わせる堂々とした佇まい、天明を思わせる釜肌、乳母口、三角の尖った鐶付があり、海松貝などの地紋も見えます。
後でお伺いすると「塩屋釜」、門脇喜平作(たしか?)とのことで、
「鐶付のところに穴があり、湯が沸くとそこから湯気が出てくるのです。そこが気に入っています」
初炭が終わり、懐石の終わりころにしゅんしゅんと釜から湯気が出始めると、小さな穴からも・・・期待に応えてくれました。

                    

手づくりの懐石が凄かった!です。
かわいらしい注連縄が飾られている雑煮碗が出ました。
「最初に注連縄を下に落として、今年の厄を落としてください」とご亭主。
なんて素敵なご趣向なのでしょう! 
皆、喜んで厄落しをしてから次々出される懐石を次々と平らげていきました。

                    

一人で料理し、盛付けし、運び出すというのは、とても大変なことなのですが、
微塵もそんなことは感じさせず、本当に料理好きで、おもてなし好きなのだなぁ~と感心しました。

もうもう満腹でしたが、伊勢土産という主菓子「宇治橋」(藤屋窓月堂製)を頂戴して中立しました。(つづく)


        クリスマスイブに曨月の茶事へ・・・・2へつづく

クリスマスイブに曨月の茶事へ・・・・2

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                     (写真はすべて相客K様の提供です)

銅鑼が打たれ後座へ席入すると、
床には雪柳と白玉椿が煙突からサンタさんが今まさに入らんとしている花入に生けられています。

点前座には、初座の床に荘られていた種壷の水指、蓋に茶巾、茶筅、茶杓をのせ、前に茶器の入った茶碗が置かれています。
茶筅荘(ちゃせんかざり)のご趣向でした。
茶筅荘は、茶碗、茶入、茶杓以外の水指や風炉先屏風に由緒や伝来がある場合に行われるお点前なので、後ほどお尋ねするのが楽しみです。

お点前が始まり、客4名が一心に茶筅荘のお点前を見詰めます。
仕覆が脱がされると、これまた素晴らしい時代を感じる茶入が現れました。
茶杓は銘「つれづれ」、待合に筒が荘られていて、大亀老師の御作です。
やがて茶入から濃茶が茶碗に入れられ、立ち上る茶香が濃茶の美味しさを予感させます。

熱く、香り佳く、お練り加減よく、まろやかな濃茶を頂戴しました。
早速、水指からお尋ねすると
「桃山時代の古備前の種壷でございます」
何でも穴が開いていて水が漏れるので修理してあるそうですが、
その修理が面白く、石を穴に当てがい、そのまま再度焼成しているとか。
最後に、水指の拝見をお願いしたので、珍しい補材の石を見ることが出来ました(感謝です!)。

                     

茶銘は初昔、上林詰です。
茶碗は高麗茶碗かしら?と思いましたが、江戸初期の対州窯とのことで、
真っ赤な地色に唐草や花などの文様のある素敵な古帛紗(道元緞子)が添えられていました。
道元緞子は曹洞宗・永平寺の開祖、道元禅師が宋より伝えた袈裟裂と伝えられていて、袈裟裂大好きな暁庵には嬉しい古帛紗でした。

対州焼(対州窯)は、江戸時代から明治にかけて対馬で作られた朝鮮風の陶器で、対馬焼とも言います。
高麗茶碗と見まごうばかりで、薄作りの上手の茶碗など茶器が主で、御本手(ごほんて)などがあり、
一般には朝鮮釜山窯の製品も含めて対州焼(対馬焼)と称します。
 
10月の韓国旅行で高麗茶碗のふるさと・慶尚南道を巡ったせいもあり、対州茶碗とのお出会いが嬉しかったです。

                     

湯相も火相もよろしいようで、続き薄茶になりました。
次客KさんのHNの由来を伺ったり、三客Cさんの流儀遍歴のお話などが心に残っていますが、
一番驚いたのは詰のMさんでした。
和のものが大好きというMさんはお茶は全く習っていないそうですが、一人亭主のTさまをサポートして立派に詰のお役を果たしていました。
私も今度、茶歴や流儀にかかわらず、いろいろな方にお役をどんどんやって頂こう・・・と密かに思った次第です。

薄茶を十分頂き、ご亭主Tさまや連客の皆様ともいろいろお話がはずみ、幸せな時間が過ぎていきました。
「忙中閑」の旗を掲げた同じ舟に乗って、楽しく和やかに一座建立できましたことに深く感謝です。
また、皆さまにお会いできますように・・・・。

       
      Merry Christmas & Happy New Year   


         クリスマスイブに曨月の茶事へ・・・1へ戻る

            

稽古納めを除夜釜にて

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                     霜柱  (季節の花300)
                  
                   「無事」・・・大好きな禅語です

12月28日(水)が暁庵の茶道教室の稽古納めでした。

今年こそ稽古納めは除夜釜でしたい・・・と思っていました。
京都に居る頃、暮れも押し詰まるとS先生が自宅で除夜釜をしてくださるのがとても楽しみだったのです。
その日は午後からUさんとFさんの稽古があったので、来れる方だけ16時からの除夜釜に参加して頂きました。

床の掛物は「無事」、宝山寺寛道和尚のお筆です。
「無事」はとても好きな禅語で、次のようなことをお話したような・・・。
「今年も好い事、悪しき事、いろいろな事がいっぱいあったけれど、一切の事をいったん無にしなさい。
 ・・・そして、すべてを無にしてから新年に新たなスタートを切りなさい」
花は椿と蝋梅を二重切の竹花入へ。

Uさんの唐物、Fさんの流し点、Uさんの丸卓で薄茶点前までお稽古が終わり、待合へ移動して頂き、ここから除夜釜となりました。
「皆さまがお揃いになったらお詰さんは板木を打ってお知らせください」

さて、暁庵は大忙し・・・灯火の用意をし、板木で白湯をお出し、席入のご案内をします。
庭の蹲踞ではなく玄関に簡易蹲踞(水屋甕)を設え、それを使って席入して頂きました。

                  

茶事と同様に一人ずつご挨拶を交わすと、それぞれの方の精進や奮闘ぶりが嬉しく脳裏を横切っていきました。
ここでFさんに交代し、今年の最終稽古の後炭となりました。
すでに辺りは薄暗くなり、手燭を持って灰器を持ち出します。
釜が上げられ、初掃きで炉辺に寄ると炭がすっかり流れていました。
蝋燭の灯りの下、ほんのり浮かび上がる残火が寂しそうな炉中の風情はまた格別のものでした・・・。
胴炭を割り、輪胴から炭が左回りに置かれていき、最後に点炭が置かれました。

菓子が運ばれ、皆さまに薄茶をお点てしました。
茶碗は織部と京焼、織部は大学同期生の青木念作、京焼は人形手で初見裕作です。
皆さま、緊張して暁庵の点前を見ていらしたようですが、薄茶タイムを愉しんで頂けたかしら?

                    

薄茶が終わると、再び待合の椅子席へ移動して頂き、埋み豆腐と一献を差し上げました。
埋み豆腐はN先生の納会でいつも出されていたので、それを真似て初挑戦です。
豆腐の上にご飯をのせ、味噌汁(白味噌と赤味噌少々)をかけ、かつお節と海苔をのせました。
向付はイワシに大根おろしです(本来はゆずり葉にうるめイワシをのせるのですが・・・)。
一献の後、ふく梅の清まし汁、炊き合せが2鉢、香の物をお出ししました。
酒は六友と一の蔵です。

生徒さんに助けられて、この1年を楽しく有意義に学ばせて頂いた私からのささやかなお礼です。
もう一つ、曜日が違ってゆっくり顔を合わせてお話しする時間がない生徒さん同士の懇親の場でもあります。


なかなかブログが書けずに、今日はついに大晦日です。
来年も相変わりませず、皆さま、宜しくお付き合いのほどをお願い致します。

どうぞ良い年をお迎えくださいませ!  



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