
4月26日(木)、久しぶりに重い腰を上げて畠山記念館へ。
大名茶人 松平不昧と天下の名物--「雲州蔵帳」の世界が4月7日~6月17日まで開催中でした。
「雲州蔵帳」とは不昧の蒐集した茶道具の目録です。
その日は10時半から約60分、学芸員の方が展示品について解説してくださるというので、のこのこ出かけました。

都営浅草線・高輪台駅(または都営三田線・白金台駅)から畠山記念館へ向かう道はこの季節、とても気持ちがよく大好きな道です。
爽やかな風に吹かれ、新緑や庭先の花を楽しみながら進むと、いかめしい門構えの畠山記念館が見えてきました。

10時半にはまだ間があるので、先ずは茶室・省庵横の畳の展示場から拝見することにしました。
最初に出会った「蓮鷺図」(れんろず)伝牧谿筆
・・・秋も終わりでしょうか、蓮の葉が破れ、やがて枯れ果てていく蓮池。
暮色を思わせる、物憂い墨の色が覆う中、一羽の白鷺が今まさに降り立とうとする瞬間を描いています。
白鷺の構図や降り立つ瞬間の姿が見事で、墨色と白鷺の対比も味わい深く、人生の安らかな晩秋のような静謐な佇まいに心惹かれ、いつまでも観ていたい「蓮鷺図」でした。
畠山記念館には同じく牧谿筆と伝える「煙寺晩鐘図」(国宝)がありますが、「蓮鷺図」もお気に入りになりました。
解説書を写してきたので記します。
「蓮鷺図」(れんろず)伝牧谿筆
粗い絹に墨色豊かに敗荷(はいか)を描き、画面上部には今降り立とうとする一羽の白鷺を描いています。
鷺の描写は瞬時の光景をとらえた巧みな構成で作者の技量がうかがえます。
(注・・・敗荷(はいか、はいがとも)とは、秋になって風などに吹きやぶられたハスの葉)
名物並の部 南宋時代(13世紀)
表具
一文字 紺地二重蔓大牡丹文金地古金襴(高台寺金襴)
中風 白地二重蔓中牡丹文金地古金襴
上下 白茶地一重蔓菊牡丹唐草文銀襴
伝来 木下大和守ー松平不昧ー月潭(げったん、不昧の子息ー出雲松平家ー畠山即翁

畳の間の展示は、他に「利休書状」「南楚師説墨跡(なんそしえつぼくせき) 送別語」「古銅象耳花入」、
どれも素晴らしく、畳に座ってじっくり鑑賞できてヨカッタです。
(前期(5月10日)までの展示です・・・お急ぎください!)
学芸員・福田さんが全展示品について簡潔に要点や見どころをわかり易く解説し、普通なら見逃してしまうことまで気づかせてくださいました。
その一つ、「蝶螺鈿蒔絵手箱」(国宝)・・・これも5月10日までの展示です。
「あぁ~ステキな蒔絵の手箱ね・・・」と安易に見逃すところでしたが、さすが国宝だけあって、箱を埋め尽くす蝶と牡丹の螺鈿蒔絵の精巧で見事なこと。
学芸員さんの解説を聴き、改めて目を凝らすと一つ一つの蝶と牡丹のデザインが微妙に違っていて、その精巧な技術と美意識の高さにびっくりしました。
遠く鎌倉時代(13世紀)にこのように素晴らしい漆芸品が創作され、今も大事に展示保管されていることが嬉しく、気づかせてくれた学芸員さんに感謝!です。
最後に、「どうぞ1つでも良いですから、貴方のお気に入りを探し出してください」
帰り際にお会いしたので
「素晴らしい解説をありがとうございました。今日来てヨカッタ!です。
私のお気に入りは2つ、「油屋肩衝」と「蓮鷺図」です」
と報告しましたら、嬉しそうにニッコリなさいました。(つづく)
畠山記念館・・・「雲州蔵帳」の世界へ (2)へつづく