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Channel: 暁庵の茶事クロスロード
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竜田姫の茶事へ

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11月19日、Mさまから嬉しい茶事のお招きを受け、竜田姫の茶事と名付けました。

奈良からJR関西線で大阪へ、姫路行きへ乗り換え、芦屋で下車しました。
芦屋はほぼ初めてで、谷崎純一郎の細雪の舞台であり、高級住宅が立ち並ぶ街らしいという知識しかありません。
タクシーの運転手さんに住所を告げると、すぐ門前まで運んでくれました。
途中、欅の街路樹の紅葉がハラハラと舞い散るさまは美しく儚げで、竜田姫の古歌を思い出しました。

   
     竜田姫たむくる神のあればこそ
        秋の木の葉の幣と散るらめ     兼覧王(古今集)

待合へ入ると、「竜田姫」の掛物が目に飛び込んできました。

煙草盆の設えが珍しく、楽しく拝見していると、相客のMさまが到着しました。
香煎が運ばれ、青白磁の汲出し茶碗を持つと、指が透けて見えて、なんとも美しい景色を生み出しています。あとで深川製磁と伺いました。



小春日和の陽光の中、外腰掛でご亭主の迎え付けを待ちました。
水桶を持ったご亭主が出てこられ、ザァッと蹲へ水が注がれました。
いつも思うのですが、心中の余計なものを洗い流してしまう、爽快な水音でした。
クリーム色の無地の着物に黒地に銀模様の帯をお召しの美しい竜田姫と無言の挨拶を交わします。
蹲で心身を清めて席入りしました。

床の掛物を拝見すると、淡々斎の御筆のようですが、初めて目にする禅語でした。
「心楽五聲和」(心楽しく五聲の和)
ご亭主にお尋ねすると
「五聲というのは、人間には色々な笑い声があって、はっはっはっ、えっへへ、オホホ・・・、笑い声も違い、個性も違う人間が和やかに一堂に集い、心を交わして楽しむと解釈しています。淡々斎の御筆でございます」
・・・竜田姫の茶席にぴったりと思い、素晴らしいお軸を掛けていただき、感謝でした。



炭手前が始まりました。
「炉開きをしたばかりで稽古が追い付かずごめんなさい・・・」
炉縁に寄ると、炉中の灰がそれは美しく整えられ、菊炭3個が赤々と美しく、炉の時期のご馳走を堪能しました。
釜は真形芦屋釜、與斉作、炉縁は松葉文様のある真塗です。

「時分どきで御座いますので、別室にて点心をお召し上がりください」
動座すると、そこは点茶盤や喫架のある立礼席になっていました。
こちらで立礼の稽古をなさっていると伺い、暁庵も9月から立礼の稽古を始めたばかりなので、同志の先輩を得た心地がして嬉しくなりました。


    立礼席の掛物 「和」

点心と煮物椀が運ばれてきました。
前日までお稽古やら会合やらでお忙しくしていたのに、お手作りしてくださり、もうもう感激しました。
相客Mさまとご亭主と3人で相和し、美しく盛りつけられた点心を舌鼓しながら頂戴しました。
点心が苦手な暁庵は何でもさらさらとなさるMさまに点心をお習い出来たら・・・と密かに思いました。


     美しい点心・・・美味しく量もぴったりでした


     こちらも手作りの金団 銘「錦秋」(・・・だったと思う)



     令法(りょうぶ)の照葉と西王母

後座の席入りをすると、床に照葉と椿が竹一重切にいけられていました。
枝ぶりの好い照葉は令法(りょうぶ)、ピンクの椿は西王母。
火相も湯相も宜しく、弘入の黒楽茶碗で美味しく濃茶を頂きました。
続いて薄茶になったのですが、正客なのにうっかりして(というよりすっかりくつろいでしまって・・・)お菓子を頂戴し、薄茶も頂いてから気が付きました。
「ごめんなさい。つづき薄なのにお先に頂いてしまいました・・・」

ご亭主も次客Mさまもにっこりして、少しも動ぜず感謝申し上げます。
茶入と仕覆が拝見に出され、何事もなかったように薄茶の時間が愉しく過ぎていきました。
拝見をお願いし、茶杓と棗が拝見に出されました。
寿棚に置かれた十二角染付水指や竜田川の蒔絵のある青漆の棗に魅了されました。
棗は輪島塗、今治の桜井漆器で入手されたとか、桜井漆器が興味深くいろいろ教えて頂きました。


竜田姫ことご亭主Mさま、次客Mさま、暁庵のために素晴らしいお茶の時間を作ってくださって、ありがとうございました。 お陰様で忘れがたい関西の旅となり、感謝いたします。
足腰が動くうちに、お早めに我が家の茶事へ足をお運びくださると嬉しいです。  


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