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Channel: 暁庵の茶事クロスロード
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釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(1)

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11月30日(土)、箱根・釣月庵の茶室拓きの茶事へお招きいただきました。

茶室の主はN氏、暁庵の茶道教室の生徒さんです。
今までも八ヶ岳山荘の茶事などへお招きくださいましたが、この度、箱根に釣月庵という茶室を持つことになり、その茶室拓きに社中の皆様とお招きされたのでした。

その日は快晴、海老名駅から初めてロマンス―カーに乗って箱根湯本へ、小旅行の気分です。
大山、丹沢、箱根の山々、そして白雪を冠した富士山が車窓に代わる代わる現れて、目を楽しませてくれました。
10月に襲来した台風19号の影響で、今なお箱根登山鉄道が不通になっていて、箱根湯本からタクシーに分乗して向かいます。

別荘は和風の平屋建て、中古と伺っていましたが、どこもかしこも新築同様に調えられていて、N氏の気合を感じます。
玄関に「釣月庵」の扁額が掛けられていました。

待合で一休みし、身なりを整え、社中の皆様とご挨拶をしていると、早や汲出しが・・・。
「今日は一人亭主なので、たいしたおもてなしはできませんが、どうぞゆっくりお過ごしください。
 お支度が整いましたら、こちらから庭の腰掛待合へお出ましください」
「ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます」
N氏の顔が嬉しそうに輝いているのが印象的でした。さらに、待合の掛物を拝見して・・・思わず頷きました。
「釣月耕雲・・・」の漢詩は道元導師の御作で、まさにN氏の心境を照らしているようでした。



   釣月耕雲慕古風
   世俗紅蔘飛不到
   深山雪夜草庵中
        道元

庭の腰掛待合へ出る前に、詰KTさんに板木を6つ打っていただきました。
客は6名、不肖・暁庵が正客、次客M氏、三客Kさん、四客SYさん、五客Uさん、詰KTさんです。



新たに造られた腰掛待合には手あぶりと煙草盆が用意されていて、ご亭主の心遣いを有難く感じながら腰を下ろすと、真っ赤に色づいた1本の紅葉が目に飛び込んできました。






紅葉は2本あったそうですが、茶事支度をしている1週間の間に1本が盛りを過ぎて散ってしまい、もう1本が真っ盛りになったとか。
・・・やがて、水桶を持ったご亭主が現われ、蹲を清め、迎え付けの無言の挨拶を交わしました。



清々しく清められた蹲を使い、躙り口へ進むと、躙り口の隣に貴人口があり、開いていました。
「貴人口を作りましたので、よろしかったらそちらからどうぞ・・・」と前もって言われていたのですが、膝の調子もよろしいようなので躙り口から席入りしました。

茶室の広さは4畳(点前座が向切)、半間の床の間があります。
床には「無事」の御軸・・・この軸はかつてお目に罹ったことがあり、N氏の亡き父上である書道家汀風氏の雄渾な御筆です。
今日の茶室拓きになんてぴったりなんだろう・・・
無事に今日の好き日を迎えられたことをN氏も亡き父上もさぞや喜んでおられるだろう~・・・と思いながら拝見しました。



すぐにご挨拶となり、暁庵も社中の皆様も異口同音に
「本日は誠におめでとうございます! 茶室拓きの茶事にお招きいただき、ありがとうございました」
「楽しみに伺いましたが、想像していた以上に素晴らしく、お話をいろいろ伺いたいです・・・」 


         釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(2)へつづく

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