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Channel: 暁庵の茶事クロスロード
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釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(3)

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        後座の点前座

(つづき)
点前座に廻ると、備前種壷の水指と茶入が置かれ、向切の炉には湯が沸いています。
備前種壷は、N氏のお気に入りで魯山人造の水指と一目でわかり、この後にどのような濃茶が展開するのか、ご亭主の気合をふつふつと感じました。

全員が席入し、しばらく無言の静かな時間が流れます。






茶道口が開き、ご亭主N氏が茶碗を持って進み、濃茶点前が始まりました。
客6人がN氏のお点前に全身全霊で呼応するように見つめます。
紫色の袱紗が捌かれ、いつものように美しい所作で茶入続いて茶杓が清められていきました。

茶碗に思わず惹きつけられました。
大ぶりの茶碗は絵志野、桃山時代でしょうか? 遠目にも深い味わいを感じる茶碗でした。
10月に出かけたサントリー美術館の「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部-美濃の茶陶」展で印象に残った志野茶碗を思い出しながら、それらに匹敵する名椀だこと!・・・と密かに思いました。
鼠志野というのでしょうか、淡いグレーの亀甲文が更なる魅力を増し、大きさといい形といい、N氏が茶室拓きの茶事に選んだのも大いに頷けます。
この茶碗で6人分の濃茶をしっかり練ってくださいました。

美しい青地モールの古帛紗が出されましたが、暁庵の古帛紗バトラを使います。
手に取り、濃い緑色の薫り高い濃茶を一口含みました。
「まろやかな濃茶で大変美味しゅうございます」
濃茶は「宝授」星野園詰だそうで、初めて頂戴しました。

茶入は信楽肩衝、時代の仕覆は紺地松唐草文。
茶杓は煤竹、上部に深い樋があり、大徳寺管長(宝暦頃の)大真和尚が「瀧」という銘を付けられています。
紅葉美しき箱根の山の懐に抱かれて、釣月庵という草庵に響く「瀧」の音、しばしその音に身を委ね、ご亭主や社中の方々と一体となって夢のような時を過ごしました。





渾身の濃茶が終わり、薄茶になり、座が急ににぎやかになりました。
釣月庵を作られた過程や創意工夫したところなどを興味深く伺いながら、薄茶が点てられていきました。
薄器は絵唐津の片口、大きな象牙の蓋が目を引きます。
薄茶の茶碗がたくさん出され、どれもステキでした。

暁庵は、小ぶりな形良い肌色の茶碗、半泥子作です。
御本がまるで桜の花びらが散るがごとく、あるいは、散紅葉が風に舞うがごとく、現われていて、その美しさに見惚れながら緑の薄茶を頂戴しました。





お気に入りの茶室で、お気に入りの茶道具を配して、全身全霊の誠実さでおもてなししてくださったN氏、なんとお礼を申してよいやら・・・・社中一同と共に茶室拓きの茶事を楽しませて頂き、ありがとうございました!

先ずは、第1回が無事に終わり、安堵していらっしゃることでしょう。
これからますます釣月庵にてご活躍されることを祈念しておりますし、思いっきり茶事をなさってくださいまし。。
次のお招きを今から楽しみにしています・・・。


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