(後座の床と点前座)
懐石終了後、中立となり待合の椅子席へ動座して頂き、善哉と口どり(栗と柿)をお出ししました。
正座が長くなってしまうことへの配慮からそのようにしたのですが、皆さま、すっかり落ち着いてしまって・・・「お菓子を食べ終わりましたら腰掛待合へお移り下さい」と催促してしまいました。
大・・・小・・大・・小・・中・中・・・大、銅鑼が7つ打たれました。
後座の床には真行草の紐飾りをした茶壷と花が飾られています。網袋に入っている初座では朝日が昇る景が正面でしたが、後座では桜が満開の吉野山を正面に変えてみました。
花は太神楽(椿)と紅李(ベニスモモ)。紅李はM氏が持参したものですが、可愛らしい太神楽の蕾とピッタリと合い、すっきりした竹の寸切を花入に選びました。
(太神楽(椿)と紅李(ベニスモモ)を寸切に)
座が静まって、濃茶点前が始まりました。濃茶は「無上」(柳桜園詰)です。
頃合いを見計らって温めた替茶碗を持ち出すと、主茶碗で濃茶を一心に練っているところでした。M氏の濃茶は練り方にいろいろこだわりがあるようで、とっても美味しいのです。きっと今日は一層・・・と思いました。さらに2碗をしっかり温めてからそれぞれ濃茶を練り上げ、水屋からお持ち出ししました。
濃茶、後炭と順調に進み、お客さまとの楽し気な会話や和やかな雰囲気が伝わってきて、水屋で秘かに小梶さんと喜んでいました。
「胴炭がきれいに割れて、炉中がキラキラときれいでした・・・」と嬉しそうに後炭の報告をしてくれました。
薄茶になり、干菓子の銘「ちはやぶる」が運ばれました。
ちはやぶる神世もきかず龍田河
唐紅に水くくるとは (古今集)
在原業平の和歌をイメージして、M氏の友人でもある行松旭松堂(石川県小松市)へ「ちはやぶる」を特別注文したそうです。
(干菓子「ちはやぶる」 行松旭松堂製)
ご亭主の思い出が詰まった茶碗や水指のことが話され、座中はさぞや盛り上がったことでしょう。四客様とお詰さまへ各服で薄茶を点ててお持ちしました。
しばし、席中の一員になって会話へ加わりたいとも思いましたが、M氏とお客さまが醸し出している雰囲気を壊したくなく、早々に退散しました。
口切から最後の見送りまで本当に見事に口切の茶事をやり遂げられて、誠におめでとうございます!
・・・そして有難うございます!! 一緒にお手伝いできて口切の茶事の感動を共に味わえて幸せでした。
(濃茶の主茶碗・・・御本三島)
(薄茶の主茶碗・・・竹絵 清風 鵬雲斎筆 即全造)
茶事の忘備録(思い出)としてご亭主M氏が作成した会記の一部を掲載します。
会記
寄付
床 且座喫茶 相国寺派管長 有馬頼底師 筆
本席
床 応無処住而生其心 足立泰道師 筆
壺 吉野山 仁清写 菁宝 造 口覆 唐松文緞子
炭斗 フクベ
羽箒 梟
鐶 鉄 畠春斎 造
火箸 桑柄 利休好み 大西清五郎 造
香合 大亀 加賀瑞山 造
香 松濤 坐忘斎好 松栄堂
灰器 備前 佐藤圭秀 造
灰匙 大判 仙叟好み 時代
釜 霰唐松文真形釜 和田美之助 造
炉縁 真塗
花 太神楽椿 紅李(ベニスモモ)
花入 竹 寸切
濃茶席
棚 寿棚
水指 末家焼 束ね熨斗 加藤ひろ子 造
茶入 織部 佐々木八十二 造 仕覆 十二段花兎
御茶 無上 柳桜園詰
茶杓 無事 後藤瑞巌師
茶碗 御本三嶋
替 黒 桂隠斎 銘不老門 一入 造
替 飴釉 大樋年郎 造
替 赤 朴堂和尚 銘 蓬莱 松楽 造
替 呉器御本 久祐和尚 銘 富久音 加藤錦雄 造
建水 曲
蓋置 山水絵 尾土焼
薄茶席
薄器 桑溜塗 面七宝雪吹 大亀老師在判 誠中斎 造
御茶 江雲の白 柳桜園詰 坐忘斎好
茶杓 紅葉狩 藤田寛堂師
茶碗 竹絵 清風 鵬雲斎筆 即全 造
替 日の出鶴 妙全 造
替 乾漆茶碗 染付山水九谷呼継 吉田華正 造
替 二福絵 岡田佳山 造
替 祥瑞写 捻丸文十牛 林淡幽 造
菓子 ちはやふる 行松旭松堂 製
器 箕
(会記は以上です)
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