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Channel: 暁庵の茶事クロスロード
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口切の稽古・・・台天目

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   近くの公園のケヤキが色づいてきました
(新しいカメラを使いこなせず、写真アップに苦戦しています 


11月10日の炉開き&口切の会では台天目で濃茶を点てます。
これは恩師N先生の口切の仕方を順守しています。
なぜ口切に台天目の点前をするのか、暁庵は今一つ分かっていないのですが、
お家元の口切の式に従っているのではないかと思っています。


今年の会ではN氏に台天目で濃茶を点ててもらうので、先だって炉でお稽古をしました。
実はN氏は素晴らしい天目台と天目茶碗をお持ちです。
出来たら口切の会へお持ち出しいただいて、それらの鑑賞をお願いしました。すると
「先生、よく覚えていてくださいましたね。
 仕舞ったままで忘れていましたが、皆さんに見ていただけるのは光栄です」



以前の印象では、古い時代(鎌倉?)のもので、天目台に散りばめられた細密な螺鈿模様が素晴らしく、それを使うなど考えられないほど繊細な台だった・・・と思い出しながら
「本当はそれで台天目のお点前が出来たら最高でしょうね・・・」
「・・・考えてもみませんでしたが、一度使ってみるのも良いですね」

・・・そんなわけで、思いがけず台天目はお持ち出しということになりました。
天目台に添った天目茶碗は、小ぶりの灰かつぎ天目でした。
「濃茶3人分の予定ですが、茶碗を変えますか?}と私。
「いえ、これで点ててみたいと思います」と頼もしいN氏。 




台天目のお稽古が始まりました。
客は3人、暁庵、Kさん、Uさんです。
いつも通り、きれいなお点前のN氏ですが、足運びを含め、全てゆっくり丁寧に・・・とご指導しました。
特に繊細な天目台の上に小さな天目茶碗をのせたまま3人分の濃茶を練るのは大変だったと思います。客も内心ドキドキしながら見つめました。

濃茶が点ち、天目台が鐶付に出されました。
緊張しながら左右と天目台を取ると、羽の薄さ、繊細な肌触り、思いがけないほどの軽やかさを感じます。そっと持ち、低い位置で丁寧に運びました。
小ぶりの天目茶碗にたっぷりと練られた濃茶・・・濃さも丁度飲みやすく、3人で美味しく頂戴しました。

「先生、お道具を丁寧に扱うように・・・と言われていたことが実感できました」
茶道点前の三要素の一つの所作、時代のある天目台と天目茶碗とのお出会いは自ずと丁寧な扱いの所作となり、何よりの経験となったみたいです。




「素晴らしい天目茶碗と天目台で濃茶を美味しく頂戴し、ありがとうございました。
 小ぶりなので心配でしたが、あの台にはあの茶碗がぴったりお似合いですね」
「まさか実際に使う日が来ようとは思いもかけないことでした・・・」

・・・なんか、N氏も天目台と天目茶碗も、とても晴れやかで嬉しそうでした。
きっと炉開き&口切の会でもステキな時間になることでしょう・・・。 



     暁庵の裏千家茶道教室    前へ    次へ   トップへ



2019年「炉開き&口切の会」・・・(1)

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2019年11月10日は暁庵の茶道教室の「炉開き&口切の会」でした。

この日に決めたのは大安の日曜日ということもありますが、亥の年の、亥の月の、初亥の日(辛亥かのとい)だったからでした。

江戸時代から亥は陰陽五行で水性にあたり、火災を逃れるという信仰がありました。
茶の湯の世界でもその日を炉開きの日として、茶席菓子として「亥の子餅」を食べ、火災の厄除けや子孫繁栄を願います。


    主菓子の「亥の子餅」  石井製(旭区都岡)

今年の会は茶事形式とし、初座の亭主はKさん(昼食まで)、後座の亭主はKTさんに後入りの合図の銅鑼からお願いし、全員稽古ということで口切、初炭、台天目、濃茶、員茶之式で薄茶を皆さまで担当していただきました。
初座の席順は、正客N氏、次客KTさん、三客SYさん、四客M氏、詰Uさんです。



10時40分に待合集合、11時席入りです。
皆さま、素敵な着物姿でいらしてくださり、「炉開き&口切の会」らしいお目出度い雰囲気が漂います。
男性二人も茶人の正装である、N氏は十得、M氏は袴姿で、きりりと座を引き締めてくれました。
(暁庵は金茶地扇地紋の紋付に緑の森の帯・・・忘備録です)

詰Uさんが打つ板木の音で、初座の亭主Kさんが梅昆布の入った汲出しをお出し、腰掛待合へ案内しました。
待合の掛物は「紅葉(画)舞秋風」、前大徳・一甫和尚の御筆です。かつて口切を御指導頂いた恩師N先生から贈られた御軸を掛けました。

Kさんが迎え付けへ出ます。
水桶から蹲に注がれる水音を清々しく聞きながら、炉に濡釜を掛けました。



床には恐れ多くも大好きな利休居士四規七則のお軸を掛けました。
紫野・太玄老師の御筆です。

和敬清寂に始まり、
一.炭は湯の沸くように
一.花は野にあるように
一.降らずとも雨の用意
一.刻限は早目に
一.相客に心せよ
一.夏は涼しく冬暖かに
一.茶は服のよきように

四規七則は当たり前のことのようで、どれ一つとってもきちんと為すのは難しく、身が引き締まる思いでいつも拝見します。茶事はもちろんのこと、普段の稽古や暮らしでも四規七則を心に留めたいもの・・・です。

亭主Kさんがお客さま一人一人と挨拶を交わし、正客N氏からお声が掛かりました。
「ご都合により御壷の拝見をお願いいたします」
「承知いたしました」
・・・いよいよ口切が始まりました。



茶壷の拝見が終わり、口を切る頃に再び席中へ入り、口切を見守りました。

茶壷は六古窯の一つ、丹波焼で、作者は市野信水です。
小ぶりの茶壷ですが、形がきりっと小気味いい切れ味があります。
土見せの茶色、壷全体にかかった緑がかった土色の釉薬が生み出す深味、さらに濃い焦げ茶色の釉薬が掛けられ、その流れが大胆かつ繊細で、壷全体に鶉班(うづらふ)のような微妙な景色を生み出していて、深遠な壷の世界へ誘います・・・。
口覆いは笹蔓緞子です。

Kさんは緊張した面持ちで、されど落ち着いて小刀で口辺をゆっくりと切っていきます。
客一同、そして暁庵も一緒に口切しているような心持で、Kさんの所作を息をのんで見詰めます。

・・・やがて蓋が開けられ、「どちらのお茶にいたしましょうか?」
「どうぞご亭主様にお任せいたします」と正客N氏。
「承知しました」
茶の入った半袋3つのうち1つが取り出され、茶銘を読み上げ、挽家(ひきや)に入れました。
「松花の昔でございます」


      御茶入日記

葉茶上戸に開けられた詰茶をトントントットッ・・・と一方へ寄せて挽家へ、次いでトトトントン・・・という音と共に残りの詰茶がさらさらと茶壷へ流し入れられました。

口切の中で葉茶上戸の扱いと軽やかな音もステキな一瞬のご馳走です。
再び口が封印され、茶壷を水屋へ引いて口切は終わりました。

(Kさん、立派に口切のお役を果たされて、おめでとうございます!)


      2019年「炉開き&口切の会」・・・(2)へ続く

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2019年「炉開き&口切の会」・・・(2)

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つづき)
次はUさんの初炭です。
大きな瓢の炭斗ですが、大きな炉の炭を置くと丁度釣り合いが取れて好い感じです。
直近の稽古日に初炭を稽古したので、炭手前はUさんに託して、Kさんと昼食の準備に取り掛かりました。

きっと席中では半年ぶりに炉を囲み、
炉縁を清める羽箒の動きに心躍り、
炭の大きさに季節の移ろいを思い、
湿し灰の撒かれる様子にご自身の手前を重ねたのではないでしょうか。


        霰唐松真形釜(美之助造) 

炭道具を以下に記します。
 炭斗  瓢(新瓢ではありませんが、友人から贈られた宝物です) 
 羽箒  シマフクロウ
 鐶   初代畠春斎造
 火箸  利休好 桑枝   清五郎造
 灰器  備前
 灰匙           清五郎造
 香合  染付木瓜     須田菁華造
 香   梅ヶ香      松栄堂
 
初炭の終了後に待合のテーブル席に動座していただき、昼食です。
四季弁当(戸塚区温石製)、煮物椀、八寸と一献をお出ししました。


        昼食の四季弁当と煮物椀

昼食後に亭主がKTさんに変わり、茶壷の紐莊りをお願いし、暁庵は後座の正客として腰掛待合へ座わります。
後座の迎え付けの銅鑼が7つ打たれました。
つくばってKTさんの打つ銅鑼の音に心をゆだね、ツワブキや小菊の咲く露地を進み、蹲の水で心身を清め、順次後入りしました。




四規七則のお軸はそのままで、上座に紐莊の茶壷、床柱に花が莊られていました。
花は白玉椿と花水木の照葉、花入は竹尺八です。
点前座には曲げの水指、その前に茶入と天目台が置かれ、台天目の設えです。
台天目は四畳半で行われ、客は暁庵、Kさん、M氏の3名です。
後方を見学席(椅子席)としました。



座が落ち着くと、襖が開き、N氏が縁高を持ち出しました。
「お菓子をどうぞお召し上がりください」
・・・早速3人で「亥の子餅」を頂戴しました。
再び、襖が静かに開けられ、台天目のお点前が始まりました。
口切の時もそうでしたが、客も見学者もN氏の流れるような袱紗捌きや清めの所作を真剣に見つめます。


       素晴らしい天目茶碗(灰潜天目)と天目台

天目茶碗(灰潜天目)と天目台はN氏のお持ち出しで、今まで蔵の奥深くしまわれていて、実際に使うのは初めてとのことでした。
いつにも増して、ゆっくりと丁寧にお点前が進み、濃茶が天目茶碗に掬い出され、天目台の上で練られました。
天目茶碗が小ぶりな上に、時代のある螺鈿が見事な天目台だったので、さぞかし練るのが大変だったことでしょう。

濃茶がたっぷり入った天目茶碗をバトラの古帛紗の上に置き、頂戴しました。
濃さも丁度好く、薫り高い濃茶が美味しく喉を潤していきます。
「お茶銘は?」
「松花の昔で、小山園の詰でございます」



天目茶碗と天目台の拝見は全員でさせていただきました。
恐る恐る・・丁寧に扱わねば・・と思いながら、皆様、熱心かつ慎重に拝見してくださって、とても好い経験になりました。
愛蔵のお道具をお持ち出ししてくださったN氏に感謝です。

続いてM氏の濃茶点前です。(つづく)


     2019年「炉開き&口切の会」・・・(3)へ続く


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2019年「炉開き&口切の会」・・・(3)

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    奈良・室生寺の紅葉  (2019年11月18日撮影)


    後座の床に紐飾りされた茶壷が置かれました

つづき)
M氏に棚の薄茶点前で濃茶4人分練っていただきました。
寿棚や桶川の水指を運び出し、茶入と棗を莊り付けると、お客さま4人が六畳に入りました。
正客KTさん、次客N氏、三客SYさん、詰Uさんです。

縁高に入れた主菓子(猪子餅)が運び出され、
「お菓子をどうぞお召し上がりください」

静かに襖が開けられ、袴姿も清々しく、M氏がゆっくり穏やかな歩調で茶碗を運び出し、濃茶点前が始まりました。
建水が運ばれ、内隅ねらいで座り、柄杓を蓋置に引いて総礼。
炉の濃茶点前の始まりですが、客一同も見学者もM氏の動きや所作に呼応するように緊張気味に見守ります。
紫色の袱紗が捌かれ、茶入次いで茶杓が清められていきます。
茶碗に湯を入れると中蓋がされ、ここでも炉での濃茶点前が実感されます。

炉の初点前と思えないほどリズムの好い点前は心地好く、茶入から緑の抹茶が回しだされ、再び釜蓋が開けられ、湯が茶碗に注がれると、早や茶香が薫り立ちました。
しっかりと練られたようでしたが、「お服加減はいかがでしょうか?」
「大変美味しゅうございます」と正客KTさん。この声できっと安堵されたことでしょう。中仕舞いをして濃茶点前が続きます・・・。


       濃茶の点前座

濃茶は松花の昔、小山園詰です。
茶碗は魚屋(ととや)、韓国・山清窯のミン・ヨンギ作です。M氏の古帛紗が添えられたのですが・・・?。
茶入は織部肩衝、佐々木八十吉造、仕覆は十二段花兎金襴です。
茶杓は銘「紅葉狩」、雲林院の寛道師の作です。
この茶入と茶杓は、愛媛県宇和島市に住むお茶の先輩Kさまから頂戴したもので、有難く使わせて頂いてます。



     竹尺八に花水木の照葉と白玉椿をいけました

台天目と濃茶点前の次は薄茶です。
員茶之式風に十種香札を引いて、札元が読み上げた札の人が名乗ってから干菓子を食べ、薄茶を飲み、点前をします。
ゆっくり干菓子と薄茶を味わってもらいたいので、薄茶の亭主KTさんに茶碗2個を持ち出して2服続けて点ててもらい、お点前さんを一人ずらしました。


      前日の薄茶のお稽古の時に・・・

3月に入門したSYさんは炉での点前は今回が初めてでした。それで、員茶之式に備えて前日に薄茶点前をお稽古しました。
全員が点前するので、最後の仕舞い付けが誰に当たるのだろう?・・・皆の関心事です。暁庵は内心SYさんに当たると良いのだけれど・・・と。
お茶の神様がお選びになったのは、台天目で奮闘してくださったN氏でした。
今年はN氏がトリを務めて、これにて無事に炉開きと口切の会が終了しました。

緊張感あり、笑いあり、学びあり、反省あり、思いやりの優しさあり、・・・
「和敬清寂」や利休七則をどこかに感じつつ、社中の皆様と炉の時期の好いスタートが切れました。 

昨日(22日)から冷たい雨が降っており、小春日和だった炉開き&口切の日を愉しく思い出しながら記しました・・・。


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紅葉の奈良・同窓会・・・(1)亀の香合

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      金色の鴟尾が輝く東大寺大仏殿を望む


11月17日に大学の同窓会が奈良であり、3泊4日の関西の旅へ出かけました。
毎年この時期は茶人にとって忙しくやり繰りが大変ですが、今年は奈良、しかも口切の茶事をしないことに決めていたので、浮き浮きと出かけました。

奈良出身&大阪在住のTさんの案内で、興福寺(金堂、南円堂、五重塔、国宝館)、東大寺、二月堂、春日神社などをぶらぶらし、ささやきの小径を通って宿舎到着。


        大好きな東大寺二月堂を見上げて・・・

総勢23名が夕食を囲みながら近況報告やら、同窓会の今後について真剣な議論(?)が交わされました。
近況報告ではどちらかというと女性の方が元気そう、まだ仕事を楽しく続けているという人が結構いたりして、元気づけられます。

隣りに座ったH氏は久しぶりの出席でした。
聞けば鬱病を発症して数年間大変だったとのこと。やっと長いトンネルから抜け出ることができて、今回参加したそうです。
5年前にお会いした時は仕事も趣味の絵画も充実した様子で、まさかそんなことになっているなんて・・・思いがけないお話でした。
今回お互い元気で参加できたことを喜び合い、来年の同窓会での再会を約しました。





もう一方お隣のA氏、去年の幹事さんです。
去年の同窓会(恵那峡、苗木城跡、岩村城跡など)での誠実なおもてなしが思い出されました。
A氏の趣味は陶芸です。3年前の汲出しから始まって、ご恵贈頂いた茶碗などの作品は我が家の茶事や稽古で大活躍しています。

昨年の同窓会で「亀の香合」をお願いしたのですが、忘れずに持参してくださいました。
後で渡された香合を見て、もう感謝感激!でした。 
大きさ、色合い、顔の表情や雰囲気が違う「亀の香合」を4つも創ってくださったのです。
・・・今まで見た亀の香合とは違う豊かな味わいがあり、とても気に入りました。どれから使おうかしら?と迷ってしまいます。



「4つもステキな亀香合を創ってくださって、ありがとう! 大事に使わせていただきます」
すると、
「全部で10個ほど創ってみたのだけれど、4つ選んできた・・・」そうです。


    

いつも我儘な注文を受けてくださって本当にありがとう・・・
「いやいや・・・けっこう楽しんで創ったし、展示会に出品したりして良かったよ」と言ってくださいました。・・・ヨカッタ!(ほッ!

              感激しています   


紅葉の奈良・同窓会・・・(2)室生寺へ

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          室生川の紅葉  

つづき)
今年の同窓会は、幹事組が「日本一長い路線バス」に乗って熊野方面へ行きたいとのことで、朝食後に自由解散になりました。

晴れていたら室生寺へ・・・と決めていました。
予報の雨を吹き飛ばして、その日は秋晴れになりました。
室生寺への大人の遠足に付き合ってくださった参加者は総勢7名、京都のK氏、名古屋のA氏(亀香合の作者)、大阪のYさん、東京のYさん、静岡のMさん(待合掛けでお馴染みの布絵作家さん)、横浜のI氏(別名ツレ)と暁庵です。

近鉄大阪線「室生口大野」駅で降り、バスで室生寺まで20分くらいでしょうか。シーズンなので臨時バスが出ていました。


          室生寺仁王門

バス停から門前町の店屋が並ぶ通リを進み、室生川に掛けられた赤い橋を渡ると室生寺です。
紅葉が美しい参道を進むと仁王門があり、仁王門をくぐると、鎧坂と呼ばれる急な石段が続きます。
杖を借りて、果敢に石段を上っていきましたが、五重塔の先の奥の院まで行けるかどうか、まあ~行けるところまで行ってみましょう~っと。

室生寺には国宝がたくさんあって、有名な五重塔の他にも素晴らしい仏像や仏殿があります。
鎧坂を上ったところに在る檜皮葺の金堂(国宝)のたたずまいに魅せられ、高床式の縁を巡りながら、中におわします御仏を拝ませてもらいました。
中央の釈迦如来立像(国宝)は室生寺のご本尊で、榧(かや)の一木造り、平安初期の作です。光背に帝釈天曼荼羅図が描かれているのが珍しく、こちらも国宝です。


         金堂(国宝)へ

釈迦如来立像の向かって左側に文殊菩薩像、右側に薬師如来像(いずれも重文)がおわしましたが、金堂内の五尊のうち、十一面観音像と地蔵菩薩立像(いずれも国宝)は現在、東京国立博物館へ出張中でお目にかかれず、心残りです。

・・・それでも、大きな金堂の内陣を圧するごとく、息遣いが感じられるごとく、慈悲に溢れ威厳のある御仏たちを目の前にすると、極楽浄土にだどりついた感がありました。
今、宝物館が造られていますが、この金堂で御仏たちを拝める崇高感、神秘感は何とも有難く、得難いものだと思いました。十一面観音像と地蔵菩薩立像を拝みにまた金堂へ来たいものです・・・。


 五重塔(国宝) 美しい檜皮葺の屋根の勾配と軒下の木組み


弥勒菩薩(重文)の祀られている弥勒堂、さらに石段を上った本堂、そしてさらに石段を上っていくと、あの丹塗りの五重塔(国宝)がゆっくりと目の前に現れてきました。
平成10年の台風で痛ましいほど破損した姿をテレビで見て、心を痛めたのが昨日のことのようです。
平成12年に修復が完成したそうですが、想像していたより華奢で小ぶりの五重塔が期待通りの優美な姿で聳えていました。
下から見上げると檜皮葺の屋根の勾配や軒下の木組みが美しく、階段の途中で止まってしばし魅入りました。

「こちらから見ると、五重塔がまた違って好く見えるよ」とツレの声がしました。
奥の院へ続く石段を少し上ると、確かに違って見えるのですが、私の膝も前と違っていました。左膝が痛み出していたのです・・・奥の院はあきらめて戻りました。


        別の角度からの五重塔

昼食は門前のお店で山菜とろろそばです。
京都のK氏夫人から頂戴したシフォンケーキを、7人で仲良く食べたのもよき思い出になりました。


   龍穴神社の入り口にある杉の巨木
   (その幅は7人で手をつなぐ程の太さでした)

バスの時間まで、室生川の上流1キロにある龍穴神社へ行くことになったのですが、とても清々しく気持ちのよい神社で、お勧めです。



室生寺よりも古い歴史をもつ古社で、水の神、竜神を祀っています。渓谷の奥には雨や雲を支配する龍王が住むという龍穴があって、雨乞いが行われているそうです。
杉の大木に囲まれた境内は清冽な気が満ちていて、思わず深呼吸しました。



帰りは近鉄大阪線に乗り、名古屋、京都、大阪、静岡、東京・・・それぞれの方向(人生)へバラバラになりましたが、ツレと奈良へ戻りもう1泊しました。


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竜田姫の茶事へ

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11月19日、Mさまから嬉しい茶事のお招きを受け、竜田姫の茶事と名付けました。

奈良からJR関西線で大阪へ、姫路行きへ乗り換え、芦屋で下車しました。
芦屋はほぼ初めてで、谷崎純一郎の細雪の舞台であり、高級住宅が立ち並ぶ街らしいという知識しかありません。
タクシーの運転手さんに住所を告げると、すぐ門前まで運んでくれました。
途中、欅の街路樹の紅葉がハラハラと舞い散るさまは美しく儚げで、竜田姫の古歌を思い出しました。

   
     竜田姫たむくる神のあればこそ
        秋の木の葉の幣と散るらめ     兼覧王(古今集)

待合へ入ると、「竜田姫」の掛物が目に飛び込んできました。

煙草盆の設えが珍しく、楽しく拝見していると、相客のMさまが到着しました。
香煎が運ばれ、青白磁の汲出し茶碗を持つと、指が透けて見えて、なんとも美しい景色を生み出しています。あとで深川製磁と伺いました。



小春日和の陽光の中、外腰掛でご亭主の迎え付けを待ちました。
水桶を持ったご亭主が出てこられ、ザァッと蹲へ水が注がれました。
いつも思うのですが、心中の余計なものを洗い流してしまう、爽快な水音でした。
クリーム色の無地の着物に黒地に銀模様の帯をお召しの美しい竜田姫と無言の挨拶を交わします。
蹲で心身を清めて席入りしました。

床の掛物を拝見すると、淡々斎の御筆のようですが、初めて目にする禅語でした。
「心楽五聲和」(心楽しく五聲の和)
ご亭主にお尋ねすると
「五聲というのは、人間には色々な笑い声があって、はっはっはっ、えっへへ、オホホ・・・、笑い声も違い、個性も違う人間が和やかに一堂に集い、心を交わして楽しむと解釈しています。淡々斎の御筆でございます」
・・・竜田姫の茶席にぴったりと思い、素晴らしいお軸を掛けていただき、感謝でした。



炭手前が始まりました。
「炉開きをしたばかりで稽古が追い付かずごめんなさい・・・」
炉縁に寄ると、炉中の灰がそれは美しく整えられ、菊炭3個が赤々と美しく、炉の時期のご馳走を堪能しました。
釜は真形芦屋釜、與斉作、炉縁は松葉文様のある真塗です。

「時分どきで御座いますので、別室にて点心をお召し上がりください」
動座すると、そこは点茶盤や喫架のある立礼席になっていました。
こちらで立礼の稽古をなさっていると伺い、暁庵も9月から立礼の稽古を始めたばかりなので、同志の先輩を得た心地がして嬉しくなりました。


    立礼席の掛物 「和」

点心と煮物椀が運ばれてきました。
前日までお稽古やら会合やらでお忙しくしていたのに、お手作りしてくださり、もうもう感激しました。
相客Mさまとご亭主と3人で相和し、美しく盛りつけられた点心を舌鼓しながら頂戴しました。
点心が苦手な暁庵は何でもさらさらとなさるMさまに点心をお習い出来たら・・・と密かに思いました。


     美しい点心・・・美味しく量もぴったりでした


     こちらも手作りの金団 銘「錦秋」(・・・だったと思う)



     令法(りょうぶ)の照葉と西王母

後座の席入りをすると、床に照葉と椿が竹一重切にいけられていました。
枝ぶりの好い照葉は令法(りょうぶ)、ピンクの椿は西王母。
火相も湯相も宜しく、弘入の黒楽茶碗で美味しく濃茶を頂きました。
続いて薄茶になったのですが、正客なのにうっかりして(というよりすっかりくつろいでしまって・・・)お菓子を頂戴し、薄茶も頂いてから気が付きました。
「ごめんなさい。つづき薄なのにお先に頂いてしまいました・・・」

ご亭主も次客Mさまもにっこりして、少しも動ぜず感謝申し上げます。
茶入と仕覆が拝見に出され、何事もなかったように薄茶の時間が愉しく過ぎていきました。
拝見をお願いし、茶杓と棗が拝見に出されました。
寿棚に置かれた十二角染付水指や竜田川の蒔絵のある青漆の棗に魅了されました。
棗は輪島塗、今治の桜井漆器で入手されたとか、桜井漆器が興味深くいろいろ教えて頂きました。


竜田姫ことご亭主Mさま、次客Mさま、暁庵のために素晴らしいお茶の時間を作ってくださって、ありがとうございました。 お陰様で忘れがたい関西の旅となり、感謝いたします。
足腰が動くうちに、お早めに我が家の茶事へ足をお運びくださると嬉しいです。  

魂のコルトレーン茶会へ

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11月20日、播磨在住のKさんの茶会へお招き頂きました。

1年ぶり・・・7回目の訪問です。
今年1月にKさんに不幸があり、お見舞いに伺いたいと思っていたところ、「車で四国遍路」へ出掛ける直前にメールが届きました。
「よろしかったら四国遍路の帰りに播磨へお寄りくださいませんか?」
ツレが一緒だったし、2人とも疲れ切っていると思うので、別の機会に伺うことにしました。
・・・そして、この度やっと「偲ぶ茶会」へ伺うことができ、「魂のコルトレーン茶会」と名付けました。


10時過ぎの電車に乗り、Kさん宅へ10時30分頃に到着しました。
Kさん宅は紅葉の真っ盛り、きれいに掃き清められたアプローチには水がたっぷり打たれ、一歩一歩石畳を踏みしめ、目の覚めるような庭木を鑑賞しながら玄関へ。
中へ入ると待合が調えられ、俳句が書かれた短冊と花が掛けられていました。

   石段の落ち葉上より掃き下ろす



     紅葉が真っ盛りのアプローチ


ご亭主Kさんが汲出しを持って現われ、
「白湯をお飲みになりましたら、庭へ出ていただき、石のテーブルの椅子に腰かけてお待ち下さい」

お気に入りの石のテーブルに木を刳り貫いた盆が置かれ、灰皿とJAZと書かれたマッチ・・・いつもの変わらぬ佇まいに安堵感を覚えます。
落ち葉の季節なのに、きれいに掃き清められた庭や瑞々しい緑苔にKさんの心意気を感じます・・・。
最初に来た時も12月初めで、まだ木々の紅葉が残っていたことを思い出しながら、天蓋の紅葉の下の椅子に座り、気をいっぱい浴びながら迎え付けを待ちました。
 
水桶を持ったKさんが現れ、蹲を清め、迎え付けです。
いつもと同じように、無言の挨拶を交わし、Kさんを見送りました。




席入りすると真っ暗な茶室、手燭と燭台の灯が床や点前座へ誘います。
床にかわいらしい子供の写真(5歳の時の写真だそうです)が掛けられ、香が焚かれていました。
数珠を持つ手を合わせ、亡き魂の安らかならんことを祈ります。
点前座に廻り、湯気を上げている手取り釜や炉中を拝見してから床前の席へ座りました。

この頃になって、暗い茶室にコルトレーンの曲が流れているのに気が付きました。
閑かに厳かに魂が清められるような・・・
「なんて、この場、この茶室にぴったりなんだろう・・・」
しばし目を閉じて、コルトレーンの演奏に耳を傾けていると、涙がにじんできました・・・・
Kさんの息子さんへの想いであり、魂の慟哭のようであり、あの世との会話であり、全身全霊の祈りのようでもありました。

Kさんがいつものように炉の流し点てで薄茶を点ててくださいました。
白い茶碗で薄茶を頂戴し、黒い茶碗でもう一服が点てられ、写真の前に供えられました。
1年間は供養のため、毎日、献茶し、息子さんと会話をしているとか・・・。
「能好きの親友から「もの狂い」と言われたけれど、その段階は済んだみたい・・・」
きっとその時は「もの狂い」の時間がKさんにとって必要だったのだ・・・と頷いていました。



     黄色いツワブキに冬の到来を感じます


「先ほどの石のテーブルで薄茶か珈琲を差し上げたいのですが、どちらにいたしましょうか?」
「珈琲にも惹かれますが、薄茶を頂きます」と私。

躙口から外へ出ると、待っていたかのように1匹の黄蝶が現われ、石のテーブルへ誘います。
石のベンチには暖かな座布団やひざ掛けが用意されていました。
盆略点前で薄茶を点ててくださいました。
茶碗、薄器(池川みどり作)、茶杓などの茶道具は全部前席のもので、さりげないおもてなしがシンプルで素敵です。
益々、無駄なものを削ぎ落し、シンプルな中にもコルトレーンの演奏のように魂を清められるKさんのお茶。
紅葉の美しい林間の一服は、忘れられない至福の一服になりました。ありがとうございます。





「こちらで少し休息していただいてから、待合の荷物を持って、裏のゲスト棟へお入りください。
 そちらでお昼のお好み焼きを差し上げます。電車の時間までおくつろぎください」

言われるままに、別荘のような素敵なゲスト棟でお好み焼きをたっぷりご馳走になりました。
珈琲(Kさんの珈琲はvery good!なの・・)も淹れてくださってニコニコでした。

帰りの電車の時間が迫っており、また再会を約して重たい腰を上げました。
関西旅行・最終日のその日は、姫路から新幹線で京都へ行き、京都国立博物館で閉館ぎりぎりまで「佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」を見てから横浜へ帰るという、私にしては強行スケジュールでした。


      駅近くの変わらぬ風景が嬉しい・・・

初回に駅で出迎えてくれた、あの笑顔を思い出しながら、駅まで見送ってくださったKさんとお別れです。
また来年、きっと来るからね! 元気でお会いしましょう!  



(忘備録)この度で7回、Kさんの茶会へお邪魔しています。その感動を忘れないようにブログに一部書き留めています。よろしかったらお読みください。

  1.思い出の茶事  一客一亭 2008年12月
  2.あこがれのJAZZ茶会(一客一亭) 2010年11月
  3.Jazz茶会ー2  Moon Bow  2013年10月11日
  4.「どくだみ茶会」-1  2014年6月6日 
  5.夕去りのたけのこ茶会・・・播磨にて  2016年4月19日
  6.播磨・コルトレーン茶会・・・その1   2018年11月2日
  7.魂のコルトレーン茶会    2019年11月20日  



和楽庵の茶事に招かれて・・・(1)

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    「大有宗甫之文」(書き捨ての文)
     宗甫(小堀遠州)が書き残した文で、十五代宗匠・小堀宗通氏の御筆)


11月22日(金)にRさまの「和楽庵の茶事」にお招きいただきました。
Rさまは小堀遠州流、東京駒場で「和楽庵」という茶室で、内外の方のおもてなしをされ、茶道教室を主宰されています。
先だって、小堀遠州流Yさまの「長月の茶事」でお目にかかったのが嬉しいご縁になりました。

その日は今にも雨が降り出しそうな天気でしたが、KTさんと颯爽と出かけました。
玄関を入ると、客迎えの花(竜胆、赤い実、黄菊)がダイナミックな花器に生けられていて、和楽庵ワールドの始まりでした・・・。
「祥雲」と書かれた短冊が掛けられ、宗園(小堀遠州流当代家元)とありました。

待合で三島の茶碗セットで香煎を頂戴しました。
奥様の宗明さま(三客)がご亭主に代わって、いろいろお話してくださるので、すぐに打ち解けて、ご亭主のこだわりぶりが分かりやすかったです。
古い鰐口が掛けられていて、それが合図でした。 
詰Fさまが鰐口を4つ打って水屋へ知らせ、玄関小上がりの腰掛待合へ移動しました。





まもなく白い羽箒を手にし、袴姿のご亭主が迎え付けに現われ、無言で礼を交わしました。
昼まで持つかしら? と案じていた雨が降り出したのは残念でしたが、露がキラキラ光る苔を横目に蹲を使い、席入りしました。

座が静かになると、お詰のFさまが「エッヘン」と合図を送ります。
ご亭主が袴姿も凛々しくお出ましになり、挨拶を交わし、床のお軸のことなどお話しいただきました。

お軸は「大有宗甫之文」(書き捨ての文)、
宗甫(小堀遠州)が書き残した文で、小堀遠州流の十五代宗匠・小堀宗通氏の御筆です。
「書き捨ての文」と呼ばれているようですが、さらさらと三段に分かれて文がいっぱい書かれていました。

内容は、茶の湯の心得、茶の湯の奥義とも言えるもので、その中にも暮らしの中にこそ茶の湯の本質がある、古い道具だけでなく新しい道具も使うように・・・など、先例にとらわれない柔軟さを身につけ、自分の茶の湯を目指して精進せよ・・・と言っていらっしゃるように、勝手ながら思いました。ゆっくりきちんと読んでみたい書でした。

お軸の下の金継ぎのある陶器の台、台に置かれた李朝の美しい小壷を一瞥したとたん、心惹かれました。
模様と形が斬新な陶器の台は、韓国の陶芸作家・李禹煥(リ・ウファン)作で、祭器を形作っているそうです。
・・・見るもの、伺うもの、ワクワクしてなかなか先に進みませんが、丁寧に説明してくださって嬉しかったです。
点前座へ廻ると、品川棚に青磁太鼓銅の水指が置かれています。
釜は遠州お好みの糸目肩衝釜、炉縁は真塗、面に七宝繋ぎの蒔絵がありました。


     遠州お好みの糸目肩衝釜

初炭は詰のFさまがなさいました。
小堀遠州流の炉の炭手前は初めてで、興味津々です。
唐物炭斗に炭が入っているのですが、炭の大きさや長さ、炭斗中の置き方が裏千家流とは全く違い、たしか枝炭は黒、しかも一本だけなのが驚きです。
孔雀の小さな羽箒が垂涎ものでしたが、こちらも先代・小堀宗通さま自作だとか。

花筏を思わせるような炭の置き方が興味深く、順々に火がついていくように工夫されていると伺い、大いに納得し、最後に黒の枝炭1本が導火線のように置かれました。
すぐにぱちぱちという音がして一安心です。

懐石になり、水屋でYさまとKTさまが腕まくりして料理してくださった懐石の数々、御出汁がしっかりとしたお味で、しかも薄味、美味しく夢中で頂戴しました。
特に一文字のご飯が最初は熱々の炊き立てが出され、次にふっくらと、「御飯だけで美味しいわね」という声が飛び交いました。
煮物椀の蟹真蒸の柔らかさと美味しさが今でも思い出されます。
白みそ仕立ての汁も美味しかったのですが、最初は蕪、次は焼豆腐と中身が変わり、参考と刺激になりました。ご馳走様でした。



織部の鉢に銀杏を思わせる淡い色調の主菓子が運び出され、皆で嘆声を上げて賞味しました。
中立で雨が激しくなっていたので、露地を通らず待合へ直行しました。 (つづく)


      和楽庵の茶事に招かれて・・・(2)へつづく


和楽庵の茶事に招かれて・・・(2)

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(つづき)
穏やかな音色で銅鑼が5つ打たれました。
後入すると、床に白玉椿が白磁の壷に生けられていました。
李朝の台でしょうか? ぴったりとお似合いです。
席について再び正面の床を見ると、白玉椿のあまりの見事さに感動し・・・「魯山人みたい・・・」
茶入が品川棚の天板に莊られています。釜の湯相もよろしいようで濃茶が待ち遠しいです。

濃茶点前が始まりました。
小堀遠州流の茶事は3回目ですが、袱紗のさばき方、茶巾の畳み方(千鳥茶巾)、茶筅の向き、茶入や茶杓の清め方、茶碗の拭き方などを頭に焼き付けるように拝見しました。
武家茶道らしく堂々とした佇まいの中にも修練されたお点前で、さすがRさまです。
白磁の大ぶりな茶碗に濃茶が掬い出され、湯が入ります。

丁寧に練られたアツアツの濃茶は薫り高く、濃さもほどよく美味しゅうございました。
濃茶を頂くと、茶巾で清め、戻さずに少し進めて次客へ手渡しました。(裏千家は同じ場所で飲み清めますが、少しずつ飲み口をずらして頂きます)
三角に折られた出し袱紗を使って、小堀遠州流の仕方で茶碗を乗せ、清めた後、そのまま次客のKTさまへ手渡しました。

白磁の茶碗は李朝時代の祭器だとか、呉器茶碗に似て、おおらかで存在感がありました。
私も高麗や李朝のものが大好きで、3年前に訪れた韓国・慶尚南道の古窯跡を巡る旅を思い出しました。 
茶銘は「天王山」、宇治の山政小山園詰、初めて頂いた濃茶です。
茶入は遠州お好みの丹波焼「生野」写、仕覆は渋い玉虫色の荒磯緞子でした。
茶杓は銘「破沙盆」、わかったようでわかりにくい禅語です・・・う~ん?

濃茶が終わり、再度、待合へ中立をしました。
本来なら鎖の間へ動座して薄茶を・・・ということらしいですが、茶室が1つなので・・・。
再び席入りすると、魔法をかけたように短い時間で別室の鎖の間になっていました。



        三度・・・鎖の間の床にて

床には再びお軸が掛けられていました。

壽山 青く老いず・・・茶を寿ぐ山はいつまでも青々として若く、老いることを知らない・・・ご亭主の心意気を感じます。

花や花入、そして花台も変わっていて、前と違う雰囲気でステキ!でした。
さらに点前座には香炉卓のような優美な棚に遠州好みの高取水指が置かれ、風炉先屏風も前と変わっていました。
さらにさらに炉縁が真塗から木の炉縁に変わり、もうびっくりでした。
手品か魔法みたいで、そのご趣向にワクワクし、Rさまの茶事を堪能しました。





やっと興奮が収まると、ご亭主が茶碗3つを重茶碗をで持ち出して、薄茶点前が始まりました。
選んでくださった茶碗のお話も楽しく、雲鶴の茶碗でお代わりまで頂戴しました。
薄茶席に懐石を手伝ってくださったYさまとKTさまが入られて、急ににぎやかになり、楽しくお話が付きません・・・。

最後に、書院に莊られている文具や珍しい燭台のことを嬉しそうにお話してくださいました。
居心地がよく、いつまでもRさまのお話に耳を傾けていたかったのですが、早や、お別れの時間になりました。





Rさま、奥さま、Yさま、KTさまの暖かなおもてなしが忘れられず、時々反芻して茶事の余韻を楽しんでいます・・・
ありがとうございました!!


        和楽庵の茶事に招かれて・・・(1)へ戻る



釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(1)

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11月30日(土)、箱根・釣月庵の茶室拓きの茶事へお招きいただきました。

茶室の主はN氏、暁庵の茶道教室の生徒さんです。
今までも八ヶ岳山荘の茶事などへお招きくださいましたが、この度、箱根に釣月庵という茶室を持つことになり、その茶室拓きに社中の皆様とお招きされたのでした。

その日は快晴、海老名駅から初めてロマンス―カーに乗って箱根湯本へ、小旅行の気分です。
大山、丹沢、箱根の山々、そして白雪を冠した富士山が車窓に代わる代わる現れて、目を楽しませてくれました。
10月に襲来した台風19号の影響で、今なお箱根登山鉄道が不通になっていて、箱根湯本からタクシーに分乗して向かいます。

別荘は和風の平屋建て、中古と伺っていましたが、どこもかしこも新築同様に調えられていて、N氏の気合を感じます。
玄関に「釣月庵」の扁額が掛けられていました。

待合で一休みし、身なりを整え、社中の皆様とご挨拶をしていると、早や汲出しが・・・。
「今日は一人亭主なので、たいしたおもてなしはできませんが、どうぞゆっくりお過ごしください。
 お支度が整いましたら、こちらから庭の腰掛待合へお出ましください」
「ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます」
N氏の顔が嬉しそうに輝いているのが印象的でした。さらに、待合の掛物を拝見して・・・思わず頷きました。
「釣月耕雲・・・」の漢詩は道元導師の御作で、まさにN氏の心境を照らしているようでした。



   釣月耕雲慕古風
   世俗紅蔘飛不到
   深山雪夜草庵中
        道元

庭の腰掛待合へ出る前に、詰KTさんに板木を6つ打っていただきました。
客は6名、不肖・暁庵が正客、次客M氏、三客Kさん、四客SYさん、五客Uさん、詰KTさんです。



新たに造られた腰掛待合には手あぶりと煙草盆が用意されていて、ご亭主の心遣いを有難く感じながら腰を下ろすと、真っ赤に色づいた1本の紅葉が目に飛び込んできました。






紅葉は2本あったそうですが、茶事支度をしている1週間の間に1本が盛りを過ぎて散ってしまい、もう1本が真っ盛りになったとか。
・・・やがて、水桶を持ったご亭主が現われ、蹲を清め、迎え付けの無言の挨拶を交わしました。



清々しく清められた蹲を使い、躙り口へ進むと、躙り口の隣に貴人口があり、開いていました。
「貴人口を作りましたので、よろしかったらそちらからどうぞ・・・」と前もって言われていたのですが、膝の調子もよろしいようなので躙り口から席入りしました。

茶室の広さは4畳(点前座が向切)、半間の床の間があります。
床には「無事」の御軸・・・この軸はかつてお目に罹ったことがあり、N氏の亡き父上である書道家汀風氏の雄渾な御筆です。
今日の茶室拓きになんてぴったりなんだろう・・・
無事に今日の好き日を迎えられたことをN氏も亡き父上もさぞや喜んでおられるだろう~・・・と思いながら拝見しました。



すぐにご挨拶となり、暁庵も社中の皆様も異口同音に
「本日は誠におめでとうございます! 茶室拓きの茶事にお招きいただき、ありがとうございました」
「楽しみに伺いましたが、想像していた以上に素晴らしく、お話をいろいろ伺いたいです・・・」 


         釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(2)へつづく

 釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(2)

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(つづき)
「炭を置かせていただきます」
久しぶりに拝見する向切・初炭手前です。
拝見していると、いろいろなことに気づきました。
茶道口が背の高いN氏に合わせて高くなっていること、給仕口が従来の茶室の寸法通リのようでとても低いこと、
そして何より床と点前座の仕切り壁の下方が程よく開いていて、正客席からお点前がよく見えることに感激しました。
これなら親しくご亭主とお話が弾むことでしょう・・・。
もう一つ、仕切り壁の上方に月形の窓があり、「釣月庵」を象徴する月でしょうか?
小さな茶室の中にいろいろな可能性が秘められていて、これからのN氏の茶事が楽しみです。

・・・そんなことを妄想している間に炭手前が進みます。

釜は甑口芦屋、栗材の炉縁でした。
向切、特に炭手前は出炉に慣れていると違いがあって切り換えが大変なのですが、さらさらとなさい安堵しました。
出炉でないので炉辺に皆で寄ることがないのが、ちょっとさびしいかしら?
小さな香合が拝見に出されました。
・・・そして、あの羽箒も拝見をお願いしました。
手に取ってみると、焦げ茶色の香合は茶室拓きにふさわしい亀、窯元を伺うと時代の交趾焼とのことでした。
何処かに鶴が待っているのかしら? と楽しみになりました。
垂涎の羽箒は青藍、今や入手困難な貴重品をゆっくり拝見します。

交趾焼(こうちやき)・・・中国南部で生産された陶磁器。名称はベトナムのコーチシナ(交趾支那)との貿易で交趾船によりもたらされたことに由来する。黄、紫、緑、青、白などの細かい貫入の入る釉薬がかかった焼き物をさす。

初炭が終わると、広間へ動座して昼食です。
広間の床におめでたい掛物があり、蓬莱山でしょうか? ここで鶴に出会えました。


      広間の床の掛物 ・・・ 鶴が飛翔していました


      床に莊られた香炉は大好きな高麗狂言袴香炉です・・・!

豪華なお弁当を広間の椅子席で頂戴しました。
吸物椀や茶碗蒸しが出され、社中の方々が甲斐甲斐しくお手伝いしているのも嬉しいことでした。
懐石風のお弁当はボリュームたっぷりで、隣のM氏に少し助けてもらおうかしら?と思いましたが、M氏も残さず食べるのが必死のご様子・・・美味しかった御飯をほとんど残してしまいました。




満腹でしたがお菓子は別腹とか、美味しゅうございました。
古伊万里の大皿に盛られたピンクと黄色の掛け分けの金団は虎屋製(御殿場)、銘が・・・秋の山??。

「お菓子をどうぞ。お菓子をお召し上がりになりましたら、先ほどの腰掛待合へお出ましください」
「それでは中立させていただきますが、ご用意が調いましたらお鳴り物などでお知らせください」
「ことによりましたらそのようにさせてただきます」
再び、気持ちよい外腰掛へ座りました。



ここで大失敗・・・露地の風情を眺めながら皆でくつろいで清談をしていると、誰かが
「銅鑼の音が聞こえます・・・・」
慌てて皆でつくばって銅鑼に耳を傾けたのですが、それが最後の一打だったようです。
・・・それで、もう一度銅鑼をお願いしました。ご亭主が飛び上がっている様子が目に浮かびます・・・。
本当に申し訳ございません・・・





午後の陽を浴びて美しい紅葉を見ながら、蹲を使い、後座の席入をしました。
床には露がたっぷり打たれ、照葉とりんどうが信楽の旅枕にいけられていました。
移り変わる季節の一瞬が鮮やかに表現され、花や花入の持つ命の輝きや力強さを感じながら、点前座へ進みました。(つづく)


     釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(3)へつづく    (1)へ戻る

釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(3)

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        後座の点前座

(つづき)
点前座に廻ると、備前種壷の水指と茶入が置かれ、向切の炉には湯が沸いています。
備前種壷は、N氏のお気に入りで魯山人造の水指と一目でわかり、この後にどのような濃茶が展開するのか、ご亭主の気合をふつふつと感じました。

全員が席入し、しばらく無言の静かな時間が流れます。






茶道口が開き、ご亭主N氏が茶碗を持って進み、濃茶点前が始まりました。
客6人がN氏のお点前に全身全霊で呼応するように見つめます。
紫色の袱紗が捌かれ、いつものように美しい所作で茶入続いて茶杓が清められていきました。

茶碗に思わず惹きつけられました。
大ぶりの茶碗は絵志野、桃山時代でしょうか? 遠目にも深い味わいを感じる茶碗でした。
10月に出かけたサントリー美術館の「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部-美濃の茶陶」展で印象に残った志野茶碗を思い出しながら、それらに匹敵する名椀だこと!・・・と密かに思いました。
鼠志野というのでしょうか、淡いグレーの亀甲文が更なる魅力を増し、大きさといい形といい、N氏が茶室拓きの茶事に選んだのも大いに頷けます。
この茶碗で6人分の濃茶をしっかり練ってくださいました。

美しい青地モールの古帛紗が出されましたが、暁庵の古帛紗バトラを使います。
手に取り、濃い緑色の薫り高い濃茶を一口含みました。
「まろやかな濃茶で大変美味しゅうございます」
濃茶は「宝授」星野園詰だそうで、初めて頂戴しました。

茶入は信楽肩衝、時代の仕覆は紺地松唐草文。
茶杓は煤竹、上部に深い樋があり、大徳寺管長(宝暦頃の)大真和尚が「瀧」という銘を付けられています。
紅葉美しき箱根の山の懐に抱かれて、釣月庵という草庵に響く「瀧」の音、しばしその音に身を委ね、ご亭主や社中の方々と一体となって夢のような時を過ごしました。





渾身の濃茶が終わり、薄茶になり、座が急ににぎやかになりました。
釣月庵を作られた過程や創意工夫したところなどを興味深く伺いながら、薄茶が点てられていきました。
薄器は絵唐津の片口、大きな象牙の蓋が目を引きます。
薄茶の茶碗がたくさん出され、どれもステキでした。

暁庵は、小ぶりな形良い肌色の茶碗、半泥子作です。
御本がまるで桜の花びらが散るがごとく、あるいは、散紅葉が風に舞うがごとく、現われていて、その美しさに見惚れながら緑の薄茶を頂戴しました。





お気に入りの茶室で、お気に入りの茶道具を配して、全身全霊の誠実さでおもてなししてくださったN氏、なんとお礼を申してよいやら・・・・社中一同と共に茶室拓きの茶事を楽しませて頂き、ありがとうございました!

先ずは、第1回が無事に終わり、安堵していらっしゃることでしょう。
これからますます釣月庵にてご活躍されることを祈念しておりますし、思いっきり茶事をなさってくださいまし。。
次のお招きを今から楽しみにしています・・・。


     釣月庵の茶室拓きの茶事・・・(1)へ戻る    (2)へ戻る


師走の五葉会・・・麗しき香付花月

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    12月13日(金)は令和元年・師走の五葉会でした。 この日の科目は、法磨之式、軸莊花月、香付花月です。   前日から必要な道具類を用意しておくのですが、 法磨之式・・・花台一式、炭道具、濃茶(包み帛紗にて)、菓子器(菓子)、折据、十種香札と長盆 軸莊花月・・・折据、軸、袱紗、白菊扇、薄茶(花月) 香付花月・・・折据 香道具一式、香包3つ、文台、奉書、硯箱、薄茶(花月)   こんなにいろいろな道具を揃えるのは久しぶりです。 3科目のいずれもお勉強することがいっぱいあり、それぞれやりがいがありますが、一番印象深かったのは香付花月でした。         折据を乗せた香盆が正客へ運び出され、折据を回し、月(香元)と花(花月の初花)が名乗ります。 香元は重香合に入っている3種の香包から一包を選んで、香を焚き、一同香を聞き、香包に書かれた香銘を拝見します。 香が終わると、花月になり、薄茶を点てて飲んでいる間に香銘にちなむ和歌を考えます。   和歌の初心者である私たちにはその場で和歌を詠む・・・というのは少し無理があり、前もってメールで香銘をお知らせしておきます。 この日は、「枯野」「初雪」「埋火」より「初雪」としました。 (丁度、数日前に横浜で初雪のたよりがありました)   花月が終わり、亭主が水次を持って立つと同時に八畳へ戻ります。正客は折据を持って、八畳上座七目に置きます。       亭主は水屋から硯箱と奉書を乗せた文台を持ち出します。この日は重硯箱ではなく硯箱を使いました。 すぐに硯箱を上座縁内におろし、両手で蓋を取って縁内下座に置きます。 墨をすって記録紙を作り、奉書を二つ折りにし、硯箱の蓋を閉め、文台の上にのせます。     文台の正面を正し、文台を正客の前に運びます。 亭主は座に戻ると、「どうぞ文台おまわしを」と正客に言います。 正客から順に、奉書の自分の名前の上に和歌をしたため、次客に回します。 亭主も和歌をしたため、奉書をひろげたまま正面を向こうにし、文台を正客の前に持っていきます。   正客から順に歌を拝見していくのですが、五葉会では唱和之式のように2回ずつ唱和していただきます。 麗しき声が朗々と響きます・・・ すると、心を込めて詠んだ和歌が一段と輝きを増し、ストーンと頭と心に入って来ました。   それに、和歌を奉書にしたため、皆で唱和する・・・この瞬間、この時間が大好きです。 きっと皆様も、「和歌を作るのは大変だけれど、この優雅な時間を同好の士と過ごす喜びは何とも代えがたい・・・」 と思っていてくださって、素晴らしい五葉会のお仲間に感謝です。              香付花月之式

     二   宗曉
     一   宗貞   二
   月     宗里   三
     三   宗陽
        主 宗悦   一          香付花月之記
   
   初雪のたより舞い込む朝の苑
      落ちる葉残る葉ルノワールの秋   宗曉

   初雪の積もりし庭の生垣に
      紅き山茶花さむざむ咲けり     宗貞

   紅葉の映えたる木々に
      初雪のふりそそぎて心凍てつく   宗里

   張りつめし稽古納めの静寂に
      初雪見舞う障子真白く       宗陽

   忙しなき街も我が家も静めたる
       しんしんと降る初雪の朝      宗悦            暁庵の裏千家茶道教室    前へ    次へ    トップへ    

2019年 クリスマスの茶事・・・(1)

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12月22日(日)に我が家でクリスマスの茶事をしました。

クリスマスの茶事にお招きされたことは何回かありますが、自分でするのは京都以来かもしれません?
クリスチャンでないのに、キリスト生誕を茶事でお祝いするのもねぇ~と気が引け、なかなか気乗りがしなかったのです。
・・・それが、突如ヤル気になったのは次の理由からでした。

もう一度今年最後の茶事をしたい! 日ごろお世話になり、親しくしている茶友をお招きし楽しみたい・・・と。 
もう1つは、社中の方をお招きして、少しずつ茶事の楽しさや奥深さを経験してもらえたら・・・と思ったのです。それで、入門1年のIJさんとSYさんをお招きしました。
お二人とも大先輩の中で緊張したと思いますが、お客様(正客Yさま、次客Oさま、詰Rさま)が素晴らしい方なので、優しく穏やかな雰囲気の中にも大事なことをいろいろ学んだことでしょう。

その日は暖かかったけれど、天気予報は曇り のち 雨
何とか後座の席入まで持ってくれれば・・・と願いながら、晴雨両方の準備をして臨みました。



玄関入り口にメキシカン・クリスマスリースを飾り、お客さまをいそいそと迎えます。
このリースは20年ほど前にテキサス州サンアントニオで購入したものですが、今も大事に使っています。そういえば、クリスマスグッズは古いものばかりかも・・・。

 


11時に待合に集合です。
板木が5つ打たれ、半東KTさんが甘酒をお出しし、腰掛待合へご案内しました。
待合の掛物は「Silent Night」の色紙、友人の布絵作家・森下隆子さんの作です。
幸い雨はまだ降らず、腰掛待合でお待ちいただき、迎え付けができました。

初座の床は

「去々来々来々去々」のお軸、足立泰道老師のお筆です。

歳月もそうですが、人や物事もまた

「去って行ってしまう、去って行ってはまたやって来る、来たと思うと去ってゆく・・・」

・・・それらを心静かに受け入れる境地とでもいうのでしょうか。 

 

お客様がベテランさんなので初炭所望とし、正客Yさまが炭を置いてくださいました。

炭斗はフィンランド製のカバ細工の籠、水次もスウェーデンで買ったカバ細工の水次(見立て)です。

香合はイギリスのアンティーク、1820年に作られた嗅ぎ煙草入れです。10年前の横浜開港150周年記念の茶事の折に購入しました。

香は黒方、香元は山田松香木店です。 

  初炭が終わり、待合のテーブル席へ動座していただき、懐石をお出ししました。 暁庵が懐石を担当しましたので、半東KTさんに給仕をお願いしました。 12月に入ってから、どのような懐石を差し上げたらよろしいかしら?と思案したり、試作したり・・・献立を記念に記します。   クリスマスの茶事 献立   飯椀    一文字 (ミルキークイーン)
  汁椀    舞茸  胡麻麩  白味噌  辛子
  つぼつぼ  柿なます(忘れてしまい、後から鉢でお出ししました・・・)
  お向う   山かけ  山葵  加減醤油
  煮物碗   銀杏と海老の真蒸  松茸  紅葉麩  三つ葉  柚子
  焼き物   ビーフステーキ ポテトサラダ ミニトマト 芽キャベツ        強肴    ふろふき大根  春菊のお浸し
  箸洗い   昆布引き湯  松の実      
  八寸    鮭の昆布巻  干し柿(チーズ)  
  香もの   沢庵  奈良漬  キュウリ糠漬け          
  湯とう   お焦げ
  酒     越乃寒梅           2019年 クリスマスの茶事・・・(2)へつづく    

2019年 クリスマスの茶事・・・(2)

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  (つづき) 腕まくりの懐石が終わりましたが、今一つ自信がなく・・・如何だったでしょうか?  主菓子をお出ししました。 クリスマスなのでいろいろ迷いましたが、久しぶりに手製の金団に挑戦です。 菓子銘は「ホワイトクリスマス」、ガラスの大皿にアイビーとピペリカムのリースで飾りました。   腰掛待合へ中立の予定でしたが、雨がぽつぽつ降り始め、このまま待合で銅鑼の合図を待って、玄関前の蹲を使って後入りしていただきました。       後座はまっ暗闇の中、蝋燭の灯りの元、濃茶を差し上げました。 半東KTさんがしっかり温めてくださった茶碗のぬくもりを感じながら襖を開け、茶碗を運び出します。 帛紗を四方捌きしながら、クリスマスの教会の厳粛なミサを思いました・・・。 織部肩衝の茶入、茶杓を清め、茶碗をゆっくり温め、茶筅通しをします。 茶入から濃茶5人分を回しだすと、早や茶香が薫り立ちました。 柄杓にほぼ満杯の湯を汲み入れ、丁寧に心をこめて濃茶を練りました。 5人分なので2杓目の湯をたっぷり入れたのですが、少し濃い気がしてもう1杓入れさせて頂きます。 大ぶりの茶椀で熱々の濃茶をたっぷりとお出し、モールの古帛紗を添えました。   「お服加減いかがでしょうか?」 「薫り高く美味しく頂いています」(お正客さまの一言で安堵しました・・・)   濃茶の回し飲み・・・これは「利休がカトリックの聖体拝領の儀式からヒントを得たのではないか」という説があります。昔は各服点てだったとも・・・今でも流儀によっては各服点てです。   話は飛びますが、昔、亡父から濃茶の回し飲みについて次の話を聞いたことがあります。 大阪城の茶会で、豊臣諸将が集まる中、大谷刑部(吉継)と石田三成が同席しました。 濃茶が出され、ハンセン病を患っていた大谷刑部の後の濃茶を回し飲むのを皆がためらっていたところ(一説には鼻汁が茶碗に入った?)、三成がこともなげにその濃茶を飲み干したそうです。 このことに恩義を感じた大谷刑部は関ケ原の戦いでは三成の西軍に馳せ参じ、奮戦したそうです。       濃茶は「天王山」、宇治の山政小山園詰です。 詰Rさまの「最後まで美味しく飲めました」とのお言葉を嬉しく聞きました。   水指は手付の白磁、砥部焼です。キリスト生誕の飼葉桶に見立ててみました。 茶碗は利休好みの魚屋(ととや)、韓国・山清窯のミン・ヨンギ作です。 茶入は織部肩衝、佐々木八十二造、仕覆は十二段花兎です。 茶入は宇和島市に住む黒河さまから「お茶を教えている貴女に役立ててほしい・・・」と贈られたもので、お茶の先生だった亡き母上様の遺愛のお品です。 茶杓は銘「たんちょう(誕生)」、大徳寺・藤井誠堂師作です。     後炭をしたくって、後炭の炉の中の景色を見て頂きたくって、まっ暗闇にしたのかもしれません・・・「お炭を直させて頂きます」 釜を上げると、暗闇の中、残り火のキラメキが・・・・。 胴炭は割れないくらい、しっかりと残っていたのですが、後の炭はほとんど燃え尽きています。 匙香をし、残りの湿し灰を撒きました。 輪胴を灰器に移し、炭を逆に継いでいきます。 丸管と割管と枝炭1本を上手に持てるかしら? 後炭の最大の見せ場であり、難関です・・・実は1回で成功させないと、大変なことになることが多く、気合を入れて持つと、一度に持てて定位置に置けました。(「ヤッター!」・・・影の声です)   薄茶になり、半東KTさんにお点前をお願いしました。 煙草盆と干菓子器2つが運び出され、薄茶点前が始まりました。   薄器はガラス製、ガラス作家の西中千人作です。「暁」という銘があり、呼継(よびつぎ)という特殊な手法で製作されています。 呼継(よびつぎ)とは陶芸の伝統的な修復技法である金継(きんつぎ)の一種を言います。 しかし、ガラスなので従来の呼継とは少し違います。 一度作ったガラス器を壊して、ガラス器の壊れて足りなくなった部分に別のガラス片を埋め合わせてガラスで継ぎ直し、新たな作品を創り出しています。   ガラス薄器  銘「暁」 西中千人作    茶碗は上野焼と京焼(橇の乗ったサンタの絵)です。 薄茶は「金輪」、丸久小山園詰です。 2種のお菓子は、「霜柱」と「白雪姫」(リンゴの干菓子)をお出ししました。 「霜柱」は仙台・玉澤製の銘菓、社中の方の差し入れです。 口に含むと消えてしまう繊細な霜柱も、それを入れた菓子器も天使が運んできてくれたみたいで、好評でした。    仙台の銘菓「霜柱」 玉澤製   天使の台のガラス器に入れて     薄茶と干菓子を頂きながら、皆様、ニコニコと楽しそう・・・お話が弾み、時の経つのを忘れそうでした。 いつか雨が本降りになり、これにてお開きにしました。          2019年 クリスマスの茶事・・・(3)へつづく  (1)へ戻る    

2019年 クリスマスの茶事・・・(3)

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  後座の床の花です(半開きだった椿が途中で開花しました)

 

つづき) 

最後のご挨拶が終わり、待合へ戻ってクリスマスのプレゼント交換をしました。

思い思いのプレゼントが美しく梱包され、長靴ならぬバスケットに入っています。

サンタが奏でるジングルベルを聞きながらクジを引く予定でしたが、サンタさんが静か(故障?)・・でした。童心に帰り、プレゼントを開けて喜び合いました。

茶事もそうですが、プレゼントも何とも言えぬ幸せをもたらしてくれます。

 

 茶事後、アイビーとピペリカムをワイングラスにいけました

 

あれから早や1週間、心温まる後礼のお手紙が届くと、その度に茶事のシーンが鮮明によみがえってきます。いくつかをご紹介させて頂き、ご来庵のお客様に厚く御礼申し上げます。

 

 SYさまより

年の瀬もいよいよ押しせまり、慌ただしく日が過ぎようとしています。

この度は貴重なお茶事の機会をくださり、有難うございました。

待合では歌声が聞こえてくるかのような掛物、かわいらしい一閑人とハンサムなサンタさんのお出迎え、思わず笑顔になりました。

初炭のお点前では、暁庵先生が入って来られた所作に目を奪われました。足の運び方、羽箒の使い方、座る位置など先生がいつもおっしゃっている事が腑に落ちました。

一つ一つの動作がぴったりとはまり気持ち良く進んでいく。お茶事全体の中で流れに呼応するようにお正客様やお客様が応えられる。心地よい時間の流れがあるのですね。

濃茶の席では蝋燭の火だけが静かに灯り、厳かな空気の中、キリスト生誕にかけたお道具の数々が和の中の不思議な異国へといざなわれた気がします。

その中で練られた濃茶の美味しかった事!!

いつも濃茶は気合を入れて頂くのですが、すっーとお茶が喉を通って行き、思わず飲み干してしまいそうになりました。

また薄茶のお席では、天使が運んで来る霜柱や、白雪姫と名付けられた林檎菓子。薄茶器の中の景色が森に見え、童話の世界に入り込んだかのようでした。

前後しますが、懐石のお料理の数々、大変美味しく頂きました。

白味噌仕立ての汁物は優しい甘さで、一椀目と二椀目で具が違っており、思わず得した気分になりました。お大根の田楽や舌の上でとろけるようなお肉など、お腹だけでなく心も満腹になりました。

全てに趣向を凝らされお心遣いに満たされたお茶事に入らせて頂き、先生をはじめ、御正客様、同席くださったお客様、半東をしてくださったKTさまに深く感謝いたします。

最高のクリスマスプレセントでした。・・・後略・・・   かしこ  SYより

 

 

 Rさまより

今年の師走はまだ寒さが本格的でない気がします。

一番の寒さと言われた日曜日もあんなに暖かく幸せだったからでしょうか。

改めて日曜日はクリスマスの茶事にお招きいただきまして、ありがとうございました。

暁庵さまのお茶事は毎回テーマがあり、お道具や設えだけでなく会話の中にも繋がって行くので、一瞬たりとも気が抜けないのです。

今回も待合の一閑人が軽快なお帽子で装っているのを見てから、楽しいゲームの仲間入りをさせていただいているような気分でした。

生姜が入った甘酒は身体を芯から暖めてくれました。腰掛に座って席入りを待っている静かな時間は寒気でさえいとおしく、この寒さがあるからこそ余計に炭火が有難く、懐石をいただく度に身体が温まって行くのを改めて覚えた気がいたします。

炭の香り、釜の音、部屋の明るさ・・・五感が覚醒されて行くのも分かりました。

美味しい懐石と見目麗しいきんとんに歓声をあげた後の後入りでは、飼い葉桶に見立てた手桶水指が柔らかな光にゆらゆらと浮かんでいるのが見えました。

 

何故 神であるキリストが「飼い葉桶」のような低き場所で生まれたのか・・・

「キリストは神の御姿であられる方なのに、ご自分を無にして、仕える者の姿をとり、人間と同じようになられた」

私たちも自分の感じ方、考え方、方法にこだわらず、自分を無にして神の方法を受け入れなさい(ピリピニ章六節)・・を思い出しておりました。茶道に於いても、キリスト教でも、そして一人の人間としても、「無にする」事の大切さを感じます。

庚子は心に留めて、暁庵さまをお招きする年にしたいと願いつつ、来年も宜しくお願いたします。

                   かしこ  Rより

 

 暁庵より

Sさまのお手紙を拝読して、入門して1年なのにお茶事の細部をしっかり捉えていらっしゃる内容に感心し、とても嬉しかったです。また、懐石が美味しかったそうで安堵しました・・・。

Rさまのお手紙を読んで、漠然としていた来年のテーマがはっきり姿を現わしたような気がしました。

来年のテーマは「シンプル」ですが、「無にする」についても考え、追求出来たら・・・と思います。

ありがとうございました。  

 

     2019年 クリスマスの茶事・・・(2)へ戻る   (1)へ戻る

 

読者の皆様へ 

今年も「暁庵の茶事クロスロード」をご愛読いただき、ありがとうございました!

どうぞお元気で良い年をお迎えください。   令和元年大晦日  暁庵  

 

 

謹賀新年・・・2020年元旦に

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  謹賀新年  


いつも「暁庵の茶事クロスロード」をお読みいただき、ありがとうございます
今年もどうぞ宜しくお願いいたします

 

 

2020年(令和2年)はちょっぴり嬉しい年になりそうです。

・・・というのも、2年間の天中殺が開けるからです。(正式(?)には2月の節分までらしい・・・)

「それでは開けたから何が変わるの?」

それは正直分かりませんが、きっとお茶の神様が行くべき時に背中をしっかり押してくださることでしょう。

暁庵としては、淡々と目の前のやるべきことを丁寧に、そして愉しみながらやっていこう・・・と改めて決意しています。

 

  近所の「三嶋神社」へ初詣 (頭を切られた欅が痛々しいです)

   社務所で恒例の御神矢とおみくじを買いました

 

それから、これからやりたい茶事が現われました。「暁の茶事」と「箱根・釣月庵の茶事」です。

今年から毎年1回(出来る時まで)、「暁の茶事」に挑戦してみようと思っています。

実は、我が家の茶室事情(茶室ではなく八畳の広間、突き上げ窓がないなど)から「暁の茶事」は頭っから断念していましたが、その一方で「最後は・・・暁の茶事かしら?」と妄想していました。

最後は・・・などと妄想し、延期している時間貯金がないことを自覚したのです。

そのことに気が付いた昨年末からずっ~と我が家で「暁の茶事」をするとしたら・・・とシュミレーションをしています。

突き上げ窓も素晴らしい露地もありませんが、暁庵の「暁の茶事」を試行錯誤で工夫しながらやってみたいのです。

毎年1回やることで、それなりの進化や深化を目指したいし、茶友や社中の皆様をお招きする(午前4時半の席入なのでご迷惑をお掛けしますが・・・)という楽しみも出来ました。

 

  獅子舞が穏やかな正月を祝って、ユーモラスに舞います

 

もう一つは、「箱根・釣月庵」の茶事です。

「箱根・釣月庵」は、暁庵の茶道教室のN氏の茶室です。

「暁庵先生が使いたいときにいつでも使ってください」と有難いお申し出を頂戴しています。

「箱根・釣月庵」でどのような茶事をしたいのか・・・これも今年の大きな課題です。

 

    

健康に留意し、膝や足腰を鍛錬しながら頑張りますので、応援してね! 

 

    今頃、箱根駅伝の最中かな?

 

 

有馬温泉・雅中庵の初稽古・・・in 2020

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   待合 「榊」  宙宝宗宇筆  明堂筆 榊の絵

 

令和2年(2020年)1月5日、今年もまたS先生の初稽古へ東京教室のOさまとYYさまとOYさまと4人で参席しました。
毎年、初稽古は兵庫県有馬温泉の有馬グランドホテル・雅中庵で行われています。

新横浜駅8時29分発のぞみ号で新神戸駅へ向かい、11時30分にはホテルに到着し、ロビーでOYさまと合流。

12時からS先生を囲んで全員で昼食を頂きました。

東京教室からOさま、YYさま、OYさま、暁庵の4人が参加できてヨカッタ!と思いましたし、S先生もご挨拶に廻って来られ、嬉しいそうでした。

その時は「美味しいね!」と皆でお話ししながら夢中で頂きましたが、御献立を見ると、兵庫県有馬温泉らしい料理がたくさん盛り込まれているのに気が付きました。例えば、柚子酒炭酸割り、百合根饅頭と蟹の湯けむり蒸し、神戸牛味しゃぶしゃぶなど・・・写真がないのが残念です。

昼食後に雅中庵の濃茶席と薄茶席へ廻りました。

久しぶりに懐かしい社中の方々とお会いして、ついお話が弾み、濃茶席の開始時間ぎりぎりに到着、入り口で奥様がはらはらした様子で待ってくださって、誠に申し訳ございません。

 

 菓子席御床  淡々斎筆「知足富」  蓬莱飾り

 

待合や菓子席の御床は後でゆっくり拝見することにし、濃茶席へ滑り込みました。

まもなく、縁高が運び出され、末富製(まだ今日庵の初釜の前なので)葩餅にかぶりつきました(懐紙で口元を隠しながら・・・)。

1年ぶりの葩餅に感激していると、縁高が拝見に回ってきました。

縁高は3種、吉野絵(利休好)と溜片木目と唐松蒔絵爪紅です。手に取ると驚くほど軽く、それぞれ違う味わいで素敵ですが、吉野絵が正月らしく華やかでお好みかな・・。

 

  濃茶席 御床   近衛前久筆  元日詠草

 

御床の掛物は、和歌のようですが、元日・・・所々しか読み取れませんで会記より書き記します。

 近衛前久筆  元日詠草

    東よりかすみそめつつ くる春の

       わがものかほに いはふ山さと

    

    立ちそうか春風かすみ老のなみ

 

先生のお話によると、「最後の一行は俳句のようですが、この時代にまだ俳句は流行っていないので、連歌の発句だと思います」とのことでした。

花は、ふっくらと見事な蕾の曙椿と鶯神楽です。

花入は、又玄斎一燈作、仙叟好窓二重です。今年は又玄斎一燈の生誕300年だそうですが、二重窓の形やカスガイで止めた継ぎ目の斬新なデザインが印象に残りました(ため息~)。

 


襖が静かに開けられ、S先生の濃茶点前がはじまりました。
袱紗が捌かれ、茶入、茶杓と清められていきます。
自然体ですが、指の先まで神経が行き届いているような緊張感のある所作は美しく、全員が先生の一挙一動を息を凝らして見つめます。
そして、茶入から3杓掬いだされた後、サラサラと滝のように緑の抹茶が回し出され、その美しさにうっとりと魅せられます。

12代慶入作嶋台の亀に続いて、鶴茶碗で7人分が練られ、東京教室のお仲間4名と御一緒に頂戴することができたのも素晴らしい思い出になりました。

濃茶席の茶碗は、如心斎好嶋台(慶入造)と飴釉嶋台(九代長左衛門造)と古萩筆洗茶碗です。
濃茶は「延年の昔」(星野園詰)、香り佳く、まろやかな甘みを感じる濃茶で美味しく頂戴しました。

茶入は瀬戸破風窯の翁手で銘「玉津島」、落ち着きのある形、味わい深い茶入と嬉しい再会を果たしました。「玉津島」は玉津島神社(和歌山市和歌の浦)のことで、和歌の神様を祀る神社(他に住吉神社と柿本人麻呂神社がある)として天皇や貴族、歌人たちに崇拝されてきました。


茶入「玉津島」には小堀権十郎箱書があり、箱には素晴らしい和歌が書かれています。

   人問はば知れる翁の夜語りを
        昔にかえす和歌の浦波

茶杓は、坐忘斎作で銘「天眼」、華甲のお祝いにお家元から頂戴した茶杓でした。「天眼」の意味するところをお話し頂いたのですが、思い出せず・・・とほほです。

 

 

濃茶席から薄茶席へ移動しました。今年の薄茶席は花組さんの担当でした。

とても分かり易く丁寧に御床やお道具のことをお話してくださり、濃茶の後の薄茶を美味しく頂戴しました。

薄茶席は先生がいらっしゃらないのですが、その分余計に先生の初稽古への気合いというか、新しい年への思いや、社中に対する熱い眼差しが道具組や茶碗の一つ一つに感じられ・・・幸せでした。

 

   薄茶席点前座の設え

 

今日の初稽古に、どんなにたくさんの時間とエネルギーをかけてご準備くださったのだろう・・・と思うと、有難く涙がでる思いです。

今年も初稽古へ参席できたことが嬉しく、来年も出来る事なら元気で参加したい・・・と願っています。

その日はOさま、YYさまと有馬グランドホテルで一泊し、有馬の名湯・金泉と銀泉に浸かってきました。

「今年も春から縁起がいいわいなあ~」     

 

 

京都・お初釜の茶事に招かれて

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    冬の京都は静かで寒くって好きかな・・・・南禅寺三門にて

(三門とは、仏道修行で悟りに至る為に透過しなければならない三つの関門を表わす、空、 無相、無作の三解脱門を略した呼称だそうです)

 

 のち  のち 

有馬温泉・雅中庵の初稽古の後、京都のYさまのお初釜の茶事にお招きいただきました。

その日は生憎の小雨模様、タクシーを降り、大きなカバンを引きずりながら3人(正客Oさま、次客暁庵、詰YYさま)で路地奥のYさま宅を目指しました。

到着すると、奥から調理の軽快な音が聞こえてきました。お正月早々のこと、さぞかしご準備が大変だったと思いますが、素晴らしいお茶事でございました。

「守破離」という道を指し示す言葉がありますが、多くの茶事や茶会を積み重ねて、到達されたYさまらしい独自の世界や表現に随所で感じ入りました。

 

 

御床の斬新なむずび柳に目を見張りました。”輪と和”が柔軟かつ芸術的に広がり、大綱和尚の「壽」のお軸と相和してシンプルでステキな空間です。

初炭では釘環とその扱いが珍しく、炉縁のほんのりとした赤(・・に見えます)や楽入の灰器がはんなりを醸し出し、ご亭主の所作を美しく引きたてていました。

香合は正月らしくお目出たい鶴、どこかで亀が出てくるのかしら? 

 

懐石になり、「いつも美味しい懐石をたった一人で手際よく、どのようになさるのだろう・・?」と不思議なのですが、今回もまたどれもこれも美味しゅうございました。「今度作ってみたい・・・」と憧れ、大いなる刺激を頂戴しています。

そして、毎回ステキな懐石の器が登場するのも楽しみです。

 

 

懐石献立 (既に忘れていますが、参考にしたいので書きとどめておきます)

向付      蕪蒸 (白身魚、ゆり根、蕪、ワサビ)  

汁 (熱)   慈姑  白味噌  辛子

煮物椀(熱)  蟹真蒸  シイタケ 三つ葉  柚子 

焼物      鰆の西京漬 (銘々皿で)

炊き合せ    海老芋  棒鱈  春菊のお浸し

和え物     きのこ  水菜  青菜 ?

箸洗      柚子 

八寸      カラスミ   芽キャベツ  

湯斗      おこげ

香の物     千枚漬  赤カブ  沢庵  すぐき  もう1種

酒       新潟産の ?   

 

  

          向付のかぶら蒸

懐石後に出されたお手製の花びら餅、お餅(雪平せっぺいとか)がやわらかく、中のゴボウと味噌餡が絶妙で感激しながら頂きました。

雨が本降りになり、待合へ中立し、銅鑼の音で後入りしました。

後座の御床がユニークで印象に残っています。

花は水仙と乙女椿、花が斜めにいけられているのですが、酒器だったという花入との出会いの妙でしょうか。

結び柳の縦の線と重ならず、見事に調和し、ご亭主の創意工夫が楽しく伝わってきます。

 

 

後座の点前座には棚(旅卓)が置かれ、小ぶりの水指(京唐津)がお似合いでした。水指に合う棚を探したそうです・・・。

金春金襴の仕覆が脱がされると、赤絵の小壷風茶入が現われ、早や心を奪われます。(紅安南かしら?) 

茶入から濃茶が、床の柳のように美しい筋を見せながら回しだされると、すぐに茶香が漂い始めました。

熱い湯が注がれ、心を込めて練ってくださった濃茶の、なんと馥郁とまろやかで美味しいこと。濃さも程よく、飲みやすかったです。

「天授」(丸久小山園詰)という茶銘を聞いて、思わずうなずきました。

茶碗は大樋焼の飴釉(大樋年朗造)、形や飴釉が美しいだけでなく、口縁から濃い釉薬が少し垂れてモダンな景色を生み出していました。

 

     点前座の旅卓(表千家流の棚です)

後炭もしてくださって嬉しかったです。

釜をあげたときの炉中の景色、胴炭は大きかったのでまだ黒々としていましたが、他の炭はほぼ燃え尽きて、過ぎた時間を告げています。

丸ぎっちょ、割りぎっちょが1個ずつ継がれ、丸管・割管・枝炭2本の4本を持ってさらりと置かれ、日頃の修練がしのばれます。

匙香ではなく、香合を取り出し、香(松濤)が炊かれました。香合は萩焼の分銅亀(田原陶兵衛造)、ここで鶴亀が揃い、めでたしめでたしでした。

 

   (手作りの5種の干菓子が圧巻で美味しく・・・)

薄茶になり客3名でしたが、1人ずつお茶碗を変えて薄茶を点ててくださいました。お手作りの干菓子5種を1つずつ味わいながら、干菓子も薄茶もお話も堪能し、充実した時間を過ごしました。

 

 (茶事後の写真なので替え茶器がかざられています)

 

Yさま、お心こもるおもてなしを頂き、ありがとうございました!

客一同、深く感動し、たくさんの刺激を受け、令和2年・お茶事の幸先良いスタートを切ることができたと、喜んでおります。

足腰が動くうちに、我が家の拙い茶事へ足をお運びくださると嬉しいです。 

 「お待ちしています・・・」 

 

 

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