
雲の下、小さく北岳(南アルプス)が見えました(10月10日撮影)
(つづき)
ログハウスの壁の一角ににじり口があり、自然石の蹲踞も備え付けられています。
蹲踞をあらため心身を浄めたご亭主の迎え付けを、一同無言で有難くお受けしました。
席入りすると、茶室は四畳半、奥に長さ1間半の板の間があり、その一部が板床になっています。
床の掛物は

山静如太古
山しずかにして太古の如くなり・・・と読むのでしょうか。
静けさを感じる清々しい御筆は三重・玉瀧寺の明道和尚です。
「山は静かにしていつも太古から在ったように変わらない・・・山荘に来るとホッとします」とご亭主N氏。
暁庵もお軸を拝見していると、雄大な山に抱かれるような心地がし、ベランダの腰掛待合と同様、清々しい風がここにも吹いているのを感じたのでした。
点前座には葦(よし)棚が設えられ、羽箒と香合が荘られています。
風炉は志野焼、釜は筒糸目釜で辰敏造(?)だったような・・・。
やがてご亭主が席へ入られ、お一人お一人と挨拶が交わされました。
暁庵はご亭主が無事に今日の日を迎えられたこと、そして社中の皆さまと念願の山荘の茶事へお招き頂いたことを感謝し、感無量でした・・・

ご都合で初炭が先になり、炭所望です。
お受けした次客Fさんが灰器を持って点前座に進み、炭を置き、月形を切って席へ戻ります。
「どうぞお直しの上、お香を・・・」とFさん。
香が焚かれ、先ほどから楽しみにしていた香合の拝見をお願いしました。

香合は桐木地に金箔の銀杏が彫られていて、今日庵にご縁のあるもののようです。
N氏が30代の頃、今日庵の青年部夏期講習会へ参加した時の思い出の香合でした。
先ほどの待合の色紙の時もそうでしたが、ここでも夏の暑い熱い今日庵で一生懸命修練している若き日のN氏が目の前に現われてきました。
「この年になると、しきりに昔のことが思い出されまして・・・」
「きっと楽しく刺激的で、いつまでも忘れられない講習会だったのでしょうね・・・」
初炭が終わり、灰器が引かれる時
「遠くから拝見していますと、色も美しく、珍しい形の灰器でございますね。
よろしかったら後ほど灰器と灰匙を拝見したく存じます」
「承知いたしました。それでは後ほど・・・。
昼食を用意しましたので、待合のリビングへお戻りください」

(里帰りした古伊万里の置物・・・ワインのデカンタとか)
リビングの一画の食堂でN氏手料理の昼食を御馳走になりました。
献立は、手打ち蕎麦とつけ汁、蒟蒻の和え物、香の物です。
シンプルですが、香の物以外はN氏の手作りでどれも美味しく(特に蕎麦とつけ汁が絶品)、「男の茶事」らしくって素敵だなぁ~と思いました。
かわいらしい(?)エプロン姿のN氏のかいがいしい働きぶりがカッコよく、惚れ直した感じです。
一人亭主でご準備から蕎麦の手打ちまで本当に大変だったと思うのですが、客4人は贅沢なおもてなしを心地好く楽しませて頂き、御馳走さま! (つづく)




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