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Channel: 暁庵の茶事クロスロード
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釣月庵・夜咄の茶事に招かれて・・・(1)

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 (「GO TO トラベル」でにぎわう箱根へ出掛けました)

 

連日、コロナウイルスの一日の新規感染者数が最多となり、今日(21日)は2500人を超えています。

そんな折ですが・・・11月14日(土)、N氏から夜咄の茶事に招かれました。

今年3月末に予定していた箱根・釣月庵の茶事がコロナウイルスのため中止になり、それ以来お招きがなかったのですが、この度夜咄の茶事へお招きくださいました。私にとってもコロナ以来初めての外でのお茶事でした。

・・・N氏がお茶を習い始めた30代のころに、初めての茶事にお招きされ、それが夜咄の茶事だったそうです。短罫や蝋燭の灯りに魅了され、お茶の世界の深さに心惹かれて、茶道にのめり込んでいったとか・・・そのきっかけが夜咄の茶事だったと伺ったことがありました。

・・・そして、N氏はそのことを胸に抱きながら着々と準備を進めてくださったのでした。暁庵はともかく、お正客のRさま、暁庵社中のKさんとUさんに夜咄の茶事を経験して、夜咄ならではの趣を味わってほしい・・・と願っていたのです。

半東はM氏、男性二人でおもてなしをてくださることが暁庵にとっては何より嬉しく、どのような茶事になるのか・・・とても楽しみでした。

茶事にハプニングは付きものですが、タクシーが捕まらず最初からドタバタしました・・・。それでも、ご示刻(17時30分)には釣月庵へ辿り着き、😥ヤレヤレ一安心です。

 

 

足元行灯が随所に置かれ、待合に入ると「釣月耕雲慕古風・・・」の色紙が掛けられています。道元導師の詩句に感銘したご亭主が「釣月庵」と茶室に命名したそうです。

   釣月耕雲慕古風
   世俗紅塵飛不到
   深山雪夜草庵中
        道元

   読み下し・・・釣月(ちょうげつ)耕雲(こううん)古風を慕う

          世俗(せぞく)紅塵(こうじん)飛んで到らず

          深山(しんざん)雪夜(せつや)草庵の中

 

 

詰Kさんが板木を5つ打つと、半東M氏が汲出しを持って来てくださいました。生姜入りの甘酒でした。

待合を出ると、そこは暗闇と行灯の露地が広がっています。正客Rさまに手燭で足元を照らして頂きながら、5人仲良く腰掛待合へ進みました。

腰掛待合には手あぶりや露地行灯が置かれ、火入れは古染付でしょうか? 皆、沈黙したまま暗闇の風情や筧の水音を楽しんでいます。小さなお地蔵様の前にも蝋燭が灯されていました・・・。

無月の日を選んだそうですが、思ったより空が明るく、満天の星がきらめいていました。「横浜では見えないけれど、こんなに星が多かったのね・・・

まもなく、ご亭主N氏が手燭と湯桶を持ってお出ましになりました。

蹲を清め、心身を清め、いよいよ夜咄のハイライト、手燭の交換です。

正客Rさまと手燭を交換し、一同深々と礼を交わしました・・・そして、何とも言えぬ感動がひたひたと心を震わせたのです。

 

(カメラを待合へ置いて席入りしたので写真がほとんどありません・・・)

 

約20年前に日本へ偶然やってきたというアメリカ人のRさま、お茶に縁があって今日まで真摯にお茶に向き合い、研鑽を積んで来られました。

30代でお茶を始められ、一時長き中断をはさみながらも、今再び茶の道を歩んでいらっしゃるN氏。

このお二人が箱根・釣月庵で正客と亭主として手燭の交換をされたのです。

「どんなお気持ちで手燭を交換されたのかしら?」お二人の来し方やお茶のご縁の不思議さ、素晴らしさを思いながら・・・ただもう感動していました。

今まで何度も手燭の交換をしていますが、次客として拝見すると、まるで舞台のワンシーンを見ているようでした。

山深い箱根の静寂の中、釣月庵という草庵、たくさんの灯りのゆらめき、影法師が大きくなったりゆらゆらしたり、そして見上げると満天の星空・・・舞台装置もステキでした。 

蹲をつかい、順次、席入りしました。(つづく)

 

   釣月庵・夜咄の茶事に招かれて・・・(2)へつづく

 

 


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