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Channel: 暁庵の茶事クロスロード
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初風炉の茶事に招かれて・・・

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                         (我が家の金魚たち・・・茶事の写真がありませんので)
                
5月22日、「桜の森の満開の下で」の茶事にお招きしたHさまから茶事のお招きがあり、いそいそと出掛けました。

何度も茶事のお招きを受け、茶友の方が数人、いつも半東や水屋を手伝っていらしたのですが、
今回は一人亭主でなさるとか。
暁庵も3年前までは一人亭主が大好きで修行していたのですが、京都を去る時に卒業することにしました。
卒業を決めたのは、体力的に大変になったこと、他力本願で長く茶事を続けたい・・・と思ったからです。
Hさまの大変さを思いやると同時に、やり遂げた後の爽快感や達成感を思い出し、羨ましい気も・・・。

11時過ぎに駅で正客T氏と次客Oさまと合流し、Hさま宅へ向かいました。
そこは都内の3LDKのマンション、一室を素敵な茶室に改造しています。
その日の待合はリビング、「虚心」(大徳寺・大亀和尚筆)という掛物がありました。
心に染みついた浮世の苦楽を解き放ち、無の心境になってください・・・と受け止めましてございます。

半畳の畳2枚が敷いてあり、風炉先屏風の前に瓶掛けが置かれ、鉄瓶が掛かっています。
詰を仰せつかっていたので、汲み出しに香煎を入れ、白湯を注いでお出ししました。
汲み出しは白磁に赤い金魚やメダカなどが描かれ、増田窯(横浜?)とありました。

                 

席入りすると、壁床に「歩々是道場」の御軸、優しく温か味のある筆は淡々斎です。

茶室は三畳台目向切、躙口のある本格的な茶室ですが、随所に散りばめられた工夫が面白く、
何回伺っても新しい発見があります。
今回の発見は茶室に掛けられている扁額でした。
「どなたの書でしょうか?」
とお尋ねすると、Hさまの師匠が書いてくださったとのこと。
優しく風流な味わいの扁額はきっとHさまの大事な宝物なのでしょうね。

ご挨拶の後、手作りの懐石となりました。
一汁三菜、汁椀の替は金色で・・・など、とても参考になりました。
柔らかい鮑の煮物や八寸のカラスミが絶品で、一同何回も舌鼓です。

向切の炉の時と違い、風炉の初炭手前は定法通りでした。
香合が出され、灰器と炭斗が引かれると、いつも垂涎のまなざしで見つめる白鳥の座履きです。
座掃きが持ち出され、サラサラと点前座が掃き清められました。
Oさんと私は前にも拝見しているので、つい騒いでしまうと、
正客T氏が「白鳥の座掃きかと思いましたが、ちらっとチュールのような布が目に入りましたが・・・」
さすがT氏です・・・それはHさまお手製の白鳥を思わせる座掃きでした。
香合は大徳寺古材で作られた錫縁香合、誠中斎作。
風雪にさらされた古材の荒々しさと古材を取り巻く細工の繊細さが対照的な作りに心惹かれます。

                 

後座の席入りをすると、薄暗い茶室の壁に京鹿の子と大山蓮華の蕾が生けられていました。
白い蕾の清らかさとそれを引き立てる高取の筒花入(鬼山雪山造)が今も目に焼き付いています。

たっぷりの濃茶を三人で頂きました。
香り佳く、しっかり練られた、まろやかな濃茶・・・・客一同、異口同音に感激して味わいました。
濃茶は遊亀乃昔、伊藤園詰でした。

続いて薄茶になり、地元の陶芸クラブの友人作という茶碗で二服も薄茶を頂きました。

・・・ここまで筆を進めながら他の事に忙しく呆けておりましたら、その日の茶事で一番大切なことに気が付きました。
それは亭主と客、相客同士の相性がとても素晴らしかったことです。
特に客三人は時が過ぎてゆくのも気づかないほど、茶事にどっぷり溶け込んで愉しませて頂きました。

一人亭主でしたが、懐石もお菓子も心を込めて手作りしてくださったHさま。
Hさまのお茶の魔法にかかって幸せなひと時を過ごさせて頂き、感謝いたします(アリガトウ!)。


「野の花を愛でる」茶会・・・(1)

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                 捩花 (ねじばな)または捩摺(もじずり)とも言う (季節の花300)

頭のどこかで次の歌声(独特の節回しで)が茶事の間中、聞こえていたような・・・。            

   みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに
     乱れそめにし 我ならなくに    河原左大臣(古今集、百人一首)


6月4日に第5回お茶サロン・「野の花を愛でる」茶会を無事に終えることが出来ました。
その日は小田急線が一時不通になり、お客さまは大変な思いをされながら馳せ参じてくださって、感謝です。

詰・Wさんの打つ板木の音で茶会がスタートしました。
半東・Fさんが白湯と文旦ピールを汲み出し(蛍透かし)に入れてお出しし、露台の腰掛待合へご案内しました。
蹲踞を清め、自身を清め、枝折戸を開けて、無言の迎え付けです。
ここでお客さまと顔を合わせるのですが、初めてのお客さまもいらして久々にドキドキしました。

                 
                 摘んできた野の花や茶花がいっぱいになりました

素敵なお客さまは6名様、嬉しい「出会い」を感じながら記念にプロフィールを記しておきます。

正客・・・佐藤愛真さま(裏千家流、佐藤愛真料理教室を主宰。時々、暁庵の茶事で懐石をお願いしていますが、この度はお客さまとして楽しんでいただければ・・・と願っています。そのプロに手づくりランチをお出しするのですから「どうしょう!・・・?」、強力な助っ人の半東・Fさんが頼りです)

次客・・・Rさま(裏千家流、佐藤愛真料理教室の生徒さんでもあります。古美術が好きな父上さまの蒐集品に囲まれて育ち、自然に古いものが好きになったとか。茶花が大好きで、花と向き合う時間を大切にしておられます。郷里山形市の鈍翁茶会のお話をサロンで伺わせてください)

三客・・・Kさま(裏千家流、不思議なご縁で初めての御目文字です。京都から東京へ移転し、お茶環境を整えるのに苦労していらっしゃいますが、お茶に対する姿勢にパワーと情熱を感じます。金剛流仕舞を習っていて「半蔀」の舞拍子の発表会があったばかりとか)

四客・・・Hさま(裏千家流、暁庵の茶友で、一緒にいると心が癒される方です。いつも元気を頂いていますが、今日は元気をさしあげられたら・・・と思っています。淡交会役員を誠心誠意を持って修行中で、心から応援し尊敬しています)

五客・・・KSさま(暁庵の茶道教室の生徒さんです。半東見習いなど暁庵の茶事を手伝ってくださる、頼もしい方です。今日はお客さまとして参加してもらいましたが、茶事を楽しんでくださると嬉しいです。茶道より書道の勉強が長いようです)

詰・・・Wさま(裏千家流、ブログの愛読者で第4回お茶サロン「春は名のみ」の茶事に続いてのお出ましくださいました。「端午の節句」の茶事ではじめて亭主を務められたそうで、茶事に燃えている様子が窺えます。今回は詰をお願いしました)

                 

 
ここで閑話休題、
最近、或る本を開くと冒頭に「ふむふむ!」と深く頷く一文に「出会った」ので、忘れぬよう記しておきます(追って本の題名と作者を記載します)。

・・・・(前略)・・・・
フランスで暮らしていた頃、お客を招く時のご馳走とは食べ物ではなく、「人」なのだ、ということをよく感じさせられた。
気持よく調えられた室内、適当な音楽といった気遣い方もむろんするが、何といっても「相客」という「人」に勝るご馳走はない。また、自分自身という「人」を最上の状態で呈することが、他人を招くための最低の条件であることは言うまでもない。
「出会い」が何よりのもてなしなのだ。よき「出会い」をより楽しくするために、おいしいものを用意するのであって、それ自体が目的ではない。

生活の機械化が進み、人間不在の文化などと言われる時代になればなるほど、私たちは「人」ほどかけがえのない「贅沢品」もない、ということをよくよく考えさせられる。
情報化社会とかで、通信発達に伴って、人と人とがじかに顔を合わせないでも、意志の疎通はできるようになっているはずなのだが、そこが文明の皮肉とでもいうのか、私たちはますます人どうしが出会うことの大切さを知らされている。
・・・・(後略)・・・・


           「野の花を愛でる」茶会・・・(2)へつづく

「野の花を愛でる」茶会・・・(2)

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           「水上青々翠」の御軸
            Wさまがいけたテッセンと春紫苑 (はるじおん)
            花入は白洲正子さん愛用の「鉄製燈明台」の写し、京都にて入手

(つづき)           
待合の掛物は「青楓に杜鵑」(奥谷秋石画)、
本席には「水上青々翠」(足立泰道老師筆)を掛けました。

摘んだ野の花や持ち寄りの茶花を花台と炭台に乗せて持ち出し、お客さまにいけて頂きました。
野の花と言っても季節が少しずれるだけで咲く花が全く違いますので、人も花も同じく一期一会ということでしょうか。
その移ろいゆく一瞬をいとおしむように、花入を選び、花を選び、その方の想いを込めて生け、それを共に味わう楽しさは格別でした。


          
          Sさま・・・紫陽花、ススキ
                ガラス花入(スウェーデン・コスタボダ製、白い織のような襞がステキです)
      
          
          Rさま・・・白い擬宝珠(ぎぼうし)
                駿河千筋籠

          
          Kさま・・・コスモス、野草(かもじ草?)
                やな籠 

          
          Hさま・・・テッセン、都忘れ、下野草
                花入は爵(しゃく、中国・殷周時代の青銅器の一つ。
                三本足の酒器で祭礼に用いた。もちろんレプリカですが・・)
        
          
          KSさま・・・南天の花、木萩
                 花入は韓国旅行のお土産の杼(ひ)。
           (杼は織機の付属用具、横糸とする糸を巻いた管を、舟形の胴部の空所に収めたもの。
            端から糸を引き出しながら縦糸の間を左右にくぐらせる)

お客さまとの出会い、野の花との出会い、花入との出会い・・・床の間が初夏の花に彩られていきました。

茶会最後の挨拶の時、詰・Wさまが
「花を入れながら、その楽しさに皆様の心が一つになったように思いました・・・」
と感想を述べてくださって、その言葉が嬉しく心に響きました。

 

               
        「野の花を愛でる」茶会・・・(3)へ     (1)へ戻る

「野の花を愛でる」茶会・・・(3)

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(つづき)

初炭を終えてから待合のテーブル席へ移って頂き、昼食タイムです。
よき「出会い」をより楽しくするためには、美味しい昼食が欠かせません。
それで、半東Fさんと腕まくりです。 
季節の食材、旬のものを手間暇かけて・・を心掛け、松花堂弁当と煮物椀をお出ししました。

「美味しかった!」というお客さまの声に安堵し、嬉しかったです。
特筆はFさん担当の鮎の焼物、飾り包丁を深く入れてくださったので、
骨まで全部たいらげて頂けたようです。水屋で相伴しましたが絶品でした。
最後に蓋物に入れた湯漬けをお出ししましたが、こちらも好評でヨカッタ・・・。

                  
                              鳥足升麻

写真を撮る余裕は全くなく、記念(?)に献立を記します。
○ 松花堂弁当
  向付  蛍烏賊  木の芽酢味噌添え
  焼物  鮎塩焼  
  炊合せ 蕨 揚げ茄子 里芋 椎茸 蒟蒻 サヤエンドウ
  和え物  天然もずく(沖縄産)の酢の物  青菜のお浸し
  添え物  スモーク卵(山形産)
  生姜炊き込み御飯
 
○ 煮物椀   五色素麺  鰊の炊いたん  オクラ  青楓麩  木の芽
○ 湯漬け   ちりめん山椒  沢庵
○ 酒   上善如水(白瀧酒造) 

昼食後、主菓子をガラス大皿に入れて運び、腰掛待合へ中立をお願いしました。

                  
                    Nさんから頂いた「半夏生(半化粧)」が大きくなりました

銅鑼を打ち、後座の席入です。
点前座は長板の二つ置き。
釜は波文尻張釜(畠春斎造)と揖保川焼水指(池川みどり造、銘「黙坐」)です。
一碗目は、大好きな高麗御本三島(銘「伊備津比女」)で濃茶を練り、
「どうぞ3人さまで」とお出しすると、すっ~と茶道口の襖が開き、次碗(大樋、佳山造)が建水下に出されました。。
手に取るとほんのり温かく、そのタイミングに感激です・・・。
濃茶は「松花の昔」、小山園詰。
主菓子はきんとん・銘「よひら」、打出庵大黒屋製(横浜市中区日ノ出町)です。

                   
                             主菓子「よひら」・・・実際はガラス大皿にて

続いて薄茶となり、半東Fさんに信楽焼の2つの茶碗で薄茶を点てて頂きました。
信楽焼茶碗は鵬志堂イサム造、京都在住のだるまさんにお願いして弘法市で買って頂き、初使いです。
暁庵も席に入り、茶道具やお客さまとのご縁などをお話しし、薄茶タイムを楽しみました。

茶入は薩摩焼、15代沈壽官造、仕覆は能衣装裂(小林芙佐子作)です。
茶杓は銘「颯々」、前田宗源和尚作。銘がお気に入りです。
薄器は、冒頭の「みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに・・・」の歌を想いながら忍ぶ草の蒔絵のある黒中棗を選びました。

野の花がいろいろな出会いを閑かに見守るなか、和やかな時間がアッという間に過ぎていきました。


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「野の花を愛でる」茶会・・・(4)

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                       夏椿が満開です・・・散歩道にて

お心こもる後礼のメールや手紙を頂戴し、嬉しく何度も読み返しました。
ありがとうございます! 
第5回お茶サロン「野の花を愛でる」茶会の思い出に2通掲載させて頂きました。

 Rさまより 
ひんやりした空気が気持ちの良い朝です。
暁庵さま、日曜日は美味しいお茶を賜りましてありがとうございました。
お陰様で満ち足りた一日をすごさせていただきました。

花寄せでは私の無作法を寛大なお心でお許しいただき感謝申し上げます。
自由な気持ちで楽しく花が入れられて楽しかったです。
床の間の花入れは生まれた国も様々で表情豊か。

見立てられた花入れは用の美を感じましたし爵は真の花入れの品格がありました。
胡銅の花入れの源流は青銅器にあるのでしょうから当然と言えば当然ですね。
根津美術館の二階に青銅器の部屋がありますが、あそこは不思議な空間です。
夜 誰もいなくなったあの部屋で手をスッと上にあげたら宇宙にワープ出来ちゃいそうな・・・
行く度にそんなことを想像してしまう私です。
何年か前のことですけれども山村御流の展覧会を拝見した時
副家元(?)が爵をお使いでした。春蘭一種入れられた凛とした姿が強く印象に残っています。

野にあるように花を入れることは難しく遠い道のりですが花と向き合う時間は自分の中での充実を感じます。

暁庵さまがお道具を語られる笑顔。出会いのきっかけや手に入れるまでのいきさつ
ひとつひとつにドラマがあり、お話を聞いているうちに客もその物語の中に引き込まれ
共感できる楽しさを味わいました。
当日初めて会った連客の皆様とも一体感を持って一座建立できるのが茶事の素晴らしいところですね。
皆様との素敵なご縁をいただだきましたことにも心より感謝申し上げます。      Rより

                 
                      鉢植えの「岡虎ノ尾」が咲いています

 Wさまより
この度は野の花を愛でるお席にお招きいただきまして 誠にありがとうございました
趣向をこらしたお花入れに 沢山の花から選ぶ楽しさに 皆様の心がひとつになっていくように感じました。
百人一首 お仕服とお客様方への細やかなお心配りに深く感銘いたしました
お道具それぞれとの出会いの物語も楽しく伺いました
銅鑼の余韻も強く印象に残っています 心に響く味わい深い音色で心にしみわたりました
初めて知る感動でした

隠し包丁の技が随所にひかるお料理 土鍋での湯漬け どれもおいしく食べやすく
お客様を思って下さるお心が伝わってまいりました
半東F様の薄茶席でのお話も楽しく座が和みました
お伺いする度に心あたためることができ幸せな限りでございます

又 至らぬ私が詰の大役をさせていただきましたことは大変有難くお勉強させていただきました
重ねてお礼申し上げます
なにとぞお疲れがでられませぬよう お祈り申し上げます        Wより


                  
                        道端に咲く七変化 (しちへんげ)

 暁庵より  
皆さま お心こもるお便りを頂戴し 誠に有難うございます!
毎回これにてお茶サロンを終了しようかしら・・・と思ったりしますが
精一杯茶会をやり遂げ、嬉しいお便りを拝見すると元気が湧いてきて、「今度はここをこうしたら・・・」と反省したり、
また、皆さまにお会いしたくなります・・・(これぞ○○バカの真髄かな?)。
先のことはわかりませんが、どうぞ宜しくお願い申し上げます。          暁庵

 
       「野の花を愛でる」茶会・・・(1)へ戻る   (2)へ   (3)へ

「染谷英明-茶盌展-」・・・屋敷森の「寧」にて

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           「染谷英明-茶盌展-」 6月10日(土)~21日(日)
             ギャラリー&カフェ「寧(ねい)」への木洩れ日のアプローチ


             「寧(ねい)」のエントランスの表札
 
昨秋の韓国旅行で知り合った染谷英明氏から
「染谷英明-茶盌展-」(主に井戸茶盌を展示いたします)という案内の葉書が届きました。
6月16日(金)にFさんとギャラリー&カフェ「寧(ねい)」(埼玉県伊奈町大針635-4)へ出かけました。
大宮駅でニューシャトルに乗り換え、伊奈中央駅で下車、迷って炎天下をうろうろしたあげく、染谷氏に車で迎えに来て頂きました・・・。

ギャラリー&カフェ「寧」は宮崎駿監督のアニメ「トトロ」に登場するような屋敷森に囲まれた場所にありました。
その入口に立った時から個性的な表札や道案内の猫たち、緑あふれるアプローチや古木に心が躍り、
「なんて素敵な場所なのだろう! ここで個展をするなんて、どんな茶盌と出会えるのかしら?」と。
それまでは、「どうして大宮ではなくこんな辺鄙なところで個展をするのかしら?」
と道に迷い汗だくになりながら思っていたのですが・・・。


            100年椿のパワーを感じる、見事なコブの造形


              母屋のギャラリー

母屋がギャラリー、所々に花が飾られ、その花入も染谷英明作でした。
染谷さんは高校時代から絵を画いていましたが、定年退職後に作陶を始められたそうです。
根津美術館で開かれた特別展で織田有楽斎所有と伝わる大井戸茶碗「有楽」に感動し、
後に心の中で細かく再現できるほど見つめ尽したそうですが、
これを機に全く経験のなかった焼き物に取り組み始めました。




                     染谷英明氏の作品

「井戸茶盌のマチエール(肌合い)に魅せられて」
苦節12年間、ひたすら井戸茶盌を極めたい!と向き合ってきたそうです。
ギャラリーには今年の春に釜焚きした作品が並べられ、釜焚きの2回目(1回目は全滅?)にやっと自分で腑に落ちる井戸茶盌ができた気がしているとか。
展示品を観る間に、染谷氏から作陶への熱い思いを伺ったり、作品の感想を述べたり、抹茶とお菓子を御馳走になったり・・・とても充実した時間でした。


            染谷英明氏 (井戸茶盌や半泥子作品の話が尽きません)


            ピンボケですが、暁庵お気に入りの井戸茶盌

井戸茶盌の他にも楽茶碗、水指、ぐい飲みや汲み出しなども展示されていました。
渾身の井戸茶盌は一つ一つ個性が違い魅力的でしたが、白楽茶碗が1個だけあり、一目見た時から気になりました。
本阿弥光悦の「不二山」長次郎の赤楽「白鷺」を連想する雰囲気のある茶碗です。
白釉に黒っぽい灰釉がかかり、素朴かつモダンな味わいに惹かれ、この茶碗で濃茶を点てて喫んでみたくなりました。


             カフェ「寧」への道案内



その後に「寧」のカフェの方で頂いた野菜料理のランチ、デザート(オレンジチーズケーキ)、珈琲も美味しかったです。
6月21日まで「寧」(埼玉県伊奈町大針635-4 TEL:048-723-7371)にて開催中です。
よろしかったら是非ご高覧くださいまし。

染谷さん! 来年も「寧」で個展を開催してくださいね。楽しみにしています。

老倒疎慵無事日・・・

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    「100年椿」と呼ばれる大木・・・屋敷森の「寧」にて


6月某日の午後、恩師N先生をお訪ねしました。
ちょうどお稽古日で4人の先輩方がいらしています。
皆さまの笑顔に迎えられ、懐かしく再会の挨拶を交わしました。
先輩方にお会いするのは5年半ぶりでしょうか? 

先輩が台天目をされるというので、正客に入らせていただきました。
N先生はじめ80代70代と歳を重ねているのですが、その稽古ぶりは目を見張るものがありました。

台天目といえば、11月の炉開き&口切の時に必ずS先輩の台天目の点前があり、
唐物の天目茶碗で濃茶を喫んだことが鮮明に思い出され、その話で盛り上がりました。
早速、N先生と先輩並びに社中の方を11月の口切の茶事へお招きしたい旨をお伝えしました。



              屋敷森の「寧」にて

それにしても、N先生と先輩方のお稽古の様子を拝見して
こんな風にお茶に励み、仲良く一緒に年を重ねて行くのは、なんて素敵なことだろう!

「この茶室が建ってから30年、その前からで50年近いお付き合いです」とN先生。
「その間、皆で先生と頑張ってきましたが、茶会・茶事で大変な時もありました・・・」と口を揃えて皆さま。
「お茶をしていると、ぼけている暇なんてありません・・・」と最長老・米寿(?)のS先輩。
「皆さんが頑張っているから私も何とかやってます。主人も亡くなりお茶が生き甲斐です」とK先輩。

老倒疎慵無事日  閑眠高臥対青山
(ろうとうそようぶじのひ かんみんこうがしてせいざんにたいす)

七事式・員茶の偈頌を思い出し、胸の中がほのぼのと温かく、思うところが沢山ありました・・・。




               屋敷森の「寧」にて



追伸)いつも当ブログをお読みくださいまして ありがとうございます!
   所用のため、しばらくブログをお休みいたします。
   また、どうぞお立ち寄りください。     

南仏プロヴァンスとスウェーデンの旅・・・リュベロンの村へ

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              南仏プロヴァンスのゴルド村遠景 
        宮崎駿監督のアニメ「天空の城ラピュタ」をイメージした場所の一つとか、
        「天空の城ラピュタ」のファンとしては嬉しい訪問でした


早目の夏休みをとり、ブログをお休みしていましたが、
南仏プロヴァンスとスウェーデンを巡る10日間の旅を終え、無事日本へ帰ってまいりました。

彼の地では時差ボケを感じなかったのですが、今、深夜3時半、眠られずPCに向かっています。
長時間のフライトと時差ボケが嫌で、10年前に欧米旅行は卒業と思っていましたが、今度の旅行で体力と対応力について少し自信が取り戻せたような・・・。
そしてお茶の縁によるステキな出会いが未知の国への関心と意欲を再び掻き立ててくれました。
暁庵社中のFさんが旅行計画を練り上げ、同行してくださったのも心強く助かりました(お世話になりました・・・)。

南仏プロヴァンスは3泊4日の短い滞在です。
勝手ながら当てにしていたプロヴァンス在住のSさんが超多忙のため、仏語が全くわからない2人の珍道中(?)で果敢に観光を楽しんできました・・・これも良き想い出です。

プロヴァンス観光1日目、マルセイユ空港で旅行ガイド会社の林さんの出迎えを受けました。
林さんはSさんが不慣れな(何もわかっていない)私たちのために紹介してくださった方で、初日に林さんに会い、いろいろな情報を得た事が後々のスムーズな旅行に繋がり、Sさんに深く感謝です。
記念にプロヴァンスの旅の足跡をメモと写真で留めておきます。お付き合いくださると嬉しいです。

1日目・・・成田~パリ・シャルルドゴール空港(12時間30分のフライト)  空港近くのホテル泊
2日目・・・パリ~マルセイユ空港  
      リュベロン村巡り(日本人ガイド林さんの車で)
      主な訪問先:セナンク修道院、ゴルド村、ルション村、
      昼食はゴルド村のパン屋で買ったチョコ入りクロワッサンとケーキを車中で食べる。
      骨董市(ただし日曜日)で有名なリル・シュル・ラ・ソルグの町を散策し、お茶に使えるアンティークを探すつもりでしたが、お休みの店が多く残念でした。それでもFさんは数点ゲット、旅の後に茶会を予定しているので暁庵とは気迫が違います・・・。
      この日はアヴィニョン泊(ホテルはたしかダニエラ)、
      ホテルのラウンジ(飲み物フリー)でサンドイッチと珈琲にて夕食をすます。


            セナンク修道院とラベンダー畑
         ラベンダーが咲いている時に訪れてヨカッタ!
                  

            セナンク修道院
         今も修道士が厳しい戒律の下、修行しています
         礼拝堂は簡素にして厳か、禅宗の寺の佇まいを思い起こし、しばし瞑想

     
    ゴルド村・・・陽射しがきついので、観光客以外歩いていません
 
    
    ゴルド村を散策・・・クラクラするくらい暑かった(35℃)のでアイスを食べながら

           
              ルション村
           黄色顔料・オークルを使って造られた古い家並みが独特の佇まいを醸し出す

           
             ルション村の黄色顔料・オークルの採取場跡
          Fさんが土を手に取ると、褐色の顔料がこびりつき取れにくかった

        
         リル・シュル・ラ・ソルグ(ソルグ川の島)という名前の通り、街中を清流が流れています

        
         リル・シュル・ラ・ソルグの街中にある水車

        
         骨董店の奥にある水辺・・・面白いオブジェがいっぱい

        
         骨董店の奥にある水辺・・・清々しくも不思議な空間

        
    南仏プロヴァンスとスウェーデンの旅・・・アヴィニョンとエクス・アン・プロヴァンスへ続く

                            

南仏プロバンスとスウェーデンの旅・・・アヴィニョン観光とフレンチ

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           ゴシック様式の城塞のような法王庁宮殿

(つづき)
3日目・・・
アヴィニョンは全長4.3kmの城壁に囲まれ、東西南北2km位、どこへでも歩いて回れる広さだが、歴史を伝える建物、教会、礼拝堂、美術館などが目白押しで、曲がりくねった迷路のような石畳の路地を歩いていると、なぜか京都を思い出す・・・。
朝7時、ホテル・ダニエラの簡単な朝食を済ませ、先ずはサントル駅近くの長距離バスターミナルへ向かう。
エクス・アン・プロヴァンス行のバス時刻表と乗り場を確認し、暑くならないうちに・・・と町歩きを楽しむ。
小さな町なので迷子になってもたかが知れているが、聳え立つ教会が道しるべになり、普段は疎遠な厳かな礼拝堂へおじゃましたり、カフェでシトロエンネードを注文したり・・・。

    


     早朝の町歩きを楽しんでいたら、ちょうど9時開館の法王庁宮殿へ辿り着いた    

先ずはユネスコ世界遺産の法王庁宮殿へ。
シニア割引があり、前日のガイド林さんお勧めの日本語のテレホンガイドを借りる。
解説内容が素晴らしく、なぜ法王庁がローマからアヴィニョンへ移り、中世の約100年間にこの地に権力と富と文化が集積され花開いたのか、ローマ教会やフランスの歴史を知らない私でもわかり易く、興味深く見学できました。
宮殿内は、当時の栄華をしのばせる大広間や礼拝堂、内庭回廊、何やら秘密の匂いがする裏階段のある法王の私室、そこに飾られたフレスコ画など目を見張るものがいっぱい、あっという間の2時間でした。

          
                   内庭回廊

          

          


ホテルへ急ぎ戻り、チェックアウトしてから重く大きなトランクを預かってもらい、童謡で有名なアヴィニョン橋(サン・ベネゼ橋)へ。

          

          

世界遺産に登録されているこの橋は12世紀に架けられました。
その後、何度もローヌ河の洪水に遭い、17世紀を最後に修復されなくなりました。
ローヌ河の中ほどで途切れている橋は、かっての栄光を失った城塞都市アヴィニョンの象徴ようにも思えましたが、真夏の空の下に私たちを明るく迎えてくれました。

         
           プティ・パレ美術館 (35℃、日陰一つない広場をトボトボと・・・)

           
              聖母子像だけでもすごい数の展示に圧倒される       (クリックして)

素っ気ないような佇まいのプティ・パレ美術館へ寄ると、外観とは違い収蔵品の充実ぶりにびっくり!
13世紀末から16世紀初めのイタリア絵画とプロヴァンス絵画300点と、ロマネスク様式とゴシック様式の彫刻コレクションを展示しています。

         
           
         

プティ・パレ美術館を出ると12時をとっくに過ぎ、林さんお勧めのレストラン「レッサンシェル」(地球の歩き方にも掲載)を探しだし、2種類のランチを注文。

          
                前菜 A
          
                前菜 B
          
                主菜 A
          
                デザート A

運ばれてくるフレンチのランチに感激し、2種類の前菜、主菜、デザートを「デリシャス!」と叫びながらシェアし、堪能しました(二人で90€)。
もう少しゆっくりお茶していたかったけれど、ホテルでトランクを受け取り、バスセンターへ急ぐ。
何とか間に合い14時30分発のバスでエクス・アン・プロヴァンスへ(バス代17.40€)。
エクス・アン・プロヴァンスにて2泊。


    南仏プロヴァンスとスウェーデンの旅・・・エクス・アン・プロヴァンスへ続く   前へ

南仏プロヴァンスとスウェーデンの旅・・・エクス・アン・プロヴァンス

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       ド・ゴール広場近くにあるメリーゴーランド


       魔法使いみたいなシャボン玉売り

(つづき)
4日目・・・
エクス・アン・プロヴァンス(エクス)は小さな町ですが、紀元前からの歴史があります。
当時から湧水の多かったエクスには泉や個性的な噴水が今も残っていて、ローマの将軍セクスチウスがこの地を治め「セクスチウスの水=アクアエ・セクスチアエ」と呼ばれたことが町の名前の由来だとか。

エクスで生まれ、生涯を過ごした画家・ポール・セザンヌの足跡をたどりながら町歩きを楽しみました。
旧市街の路地は迷路のようなので、通りの名前と噴水で地図の現在地を確認しながら・・・。

  
  ド・ゴール広場近くにたつ、画材を背負ったセザンヌ像       セザンヌ足跡の道しるべ


         文具店ミッシェル(セザンヌの父の帽子店)で絵葉書を物色中のFさん


         文具店ミッシェルにて・・・絵葉書と絵筆(灰形用)を買いました

土曜日だったので町のあちらこちらにマルシェ(市)が立ち賑わっています。
早速、ピンクに黄色の水玉模様の陶器の鉢(茶碗?)、替え茶器に使えそうな小物入れなどを発見。
帰りに買おうと思っていたら、マルシェは12時までらしい・・・帰りには跡形もなく、買いそびれ残念!

 
 
        サン・ソヴール大聖堂の厳かな洗礼堂

 
      Fさんご執心のサン・ソヴール大聖堂の回廊めぐり(その日は見学不可だったらしい)

その日の昼食は、「地球の歩き方」に掲載されていた「イレテ・ユンヌ・フォワ」で戴く。
12時過ぎに到着したのだが、なんと客が誰もいない・・・。
「私たちが最初の客?」と少々不安だったが、こちらの創作フレンチは期待通り美味しく、ボリュームもあり、値段もリーゾナブルで大満足、ここでも2種類ずつ注文しシェアしました(二人で60€)。
13時近くになると満席になり、地元でも人気店らしいことがわかった。


          前菜 A


          前菜 B 

昼食後にもう一度、サン・ソヴール大聖堂の回廊めぐりを目指したのですが・・・。
大聖堂隣りのタぺストリー美術館がお気に入りです。
歴代の大司教の邸宅だったそうですが、貸切状態なのでゆっくりできました(空調が無いのが・・・ね)。
17、18世紀の手の込んだタペストリーや当時の貴族の衣装が展示されています。
女性より男性の衣装の方が絢爛豪華、繊細な刺繍や色合いが洗練されていて素敵です。
なぜかアラン・ドロンの写真がありましたが、お召しになった方々(ベルサイユのばらのオスカルやアンドレ)を思わず想像していました。 
     

           圧巻の「ドン・キホーテ物語」の壮大なタペストリー


           貴族の衣装に見惚れて・・・タペストリー美術館にて

夕方、エクス在住のSさんから夕食のお招きを受け、Fさんとバスで出かけました。
Sさんがバス停まで輝くような笑顔で出迎えてくださり、8ヶ月ぶりの嬉しい再会です。
セキュリティのしっかりした大きなマンションは展望も抜群、まさにリゾート地の別荘のようでした。
初対面のSさんのご主人、ご友人3人と一緒にご馳走が並べられた大きなテーブルに着きました。
「私も出かけているためそんな大した事は出来ませんが、こちらのチーズやハムなどカルフールで買ってきます」
・・・とんでもございません。美味しい手料理をたくさん頂戴しました。
初めて食べる野兎のベーコン巻ステーキに舌鼓し、柔らかいヤギのチーズや珍しいチーズを満喫しました。
お心こもる御接待をありがとうございます!
明日はエクスを離れ、スウェーデン・ストックホルムへ出立するので、早目にお暇しました。


        ミラボー通りにある噴水の1つ (エクスに100以上あるらしい・・・)


        町を歩いていると、いろいろな噴水に出会って心が潤います・・・
     
5日目・・・
エクスの最終日の朝の散歩、小さな町なのですっかり馴染んでしまいました。
昨夜Sさんから伺った「喜多流の能舞台がエクスにあるの・・・」という話が気になっていました(もっとしっかり住所などを伺っておけば良かったのですが・・・)。

1994年、エクスの芸術学校構内に日本以外の国では唯一の総檜の能舞台が日本より移築され、エクス・アン・プロヴァンス国際音楽祭の一環として、この舞台で移築に尽力した喜多流・狩野丹秀氏一門の演能が行われている・・・ということでした。

どうせならその能舞台とやらを探してみようと、地図を片手にうろうろしていると、一人の男性が
「迷子になりましたか? どちらへ行くのですか?」
・・・フランス語はわからないけれど、たぶんそのようなことを話しかけられたと思う。
「この近くに能舞台(Japanese Noh theater)がありませんか?」と私たち。
結局見つからず、芸術学校らしき大きな建物があったのでこの中に能舞台があるのでは?・・・と心を残して引き上げました。

繁盛しているパン屋さんで朝食のキッシュとジュースを買い込み、ホテル・アルテアへ戻りました。

    
        「能舞台はここかしら?」と写真を1枚撮る

    
         次から次へとパンを買いに来るお客さんが・・・朝のエクスにて

順調に、エクス・アン・プロヴァンス~(バス)~マルセイユ空港~パリ・シャルル・ドゴール空港~ストックホルム・アーランダ空港~(バス)~ホテルへ到着し、先ずは一安心。
明日からは、ストックホルムでお茶事や茶会が待っています。 こちらも楽しみ!  


 南仏プロヴァンスとスウェーデンの旅・・・次へ      前(リュベロンの村)へ     前(アヴィニョン)へ



スウェーデンお茶の旅・・・北暉庵の茶事に招かれて (1)

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          ホテルの近くの公園にて

(つづき)

旅の続きですが、ここから名称変更し、「スウェーデンお茶の旅」といたします。

「北欧スウェーデンを訪ねてみたい!」
と思うようになったのは、昨年4月にスウェーデンから来日したOさんが暁庵の茶道教室の門をノックしてくださったご縁からです。
日本に留学中の娘さん一家をサポートするために約3ヶ月間滞在し、暁庵へお稽古に通ってくださいました。
その後、Oさんからスウェーデンのお茶事情についていろいろなことを教えて頂きました。
ストックホルムに瑞暉亭という本格的茶室があり、そこで茶の湯を広めるためにいろいろな方が活動していることを知り、いつか瑞暉亭を訪ねてみたい・・・と思うようになりました。
Oさんのお蔭でスウェーデンお茶の旅が実現し、欧米旅行をあきらめていた私にはまるで夢のようなことです(アリガトウ・・・)。

      
           ホテルの近くの公園で・・・いろいろな花が咲き乱れていました


6月26日、その日はストックホルム在住のFさんから茶事のお招きを受けていました。
FさんはOさんの先生で、Oさんが短期ですが暁庵の茶道教室へいらした折に、その旨を快く承諾くだされ、その上、暁庵、Fさん、Oさんの3人を茶事へお招きくださったのです。

席入は12時、ホテルまでOさんが迎えに来てくださり、持参の秋草模様の絽の着物を着て、徒歩10分足らずのFさん宅へ向かいました。
そこは大きな古い石造りのマンション、クラッシックな鉄格子のエレベーターが物珍しく、
「どんな方かしら? どのようなお茶の設えをなさっているのかしら?」と初めての御目文字に心が躍ります。

上品なブルーグレイの付け下げをお召しのFさんがにこやかに出迎えてくださいました。
広い居間の一画が待合になっています。
ソファでくつろいでいると、ガラスの汲み出しが運ばれてきました。
美味しい梅酒でしたが、不調法な暁庵は半分も飲めまず・・・残念!

        

        

「白雲自去来 (滝画)」の短冊が掛けられ、法谷文雅和尚筆です。

隣りの部屋(茶室らしい)へ続くドアの上に「北暉庵」という扁額が掛けられ、ドアのこちらに蹲踞が工夫して設えてありました。
迎え付けを受け、蹲踞をつかい、高床になっている茶室へ席入しました。
畳敷の四畳半の茶室にびっくり!・・・床は半間、炉も切られているとか。
床を拝見すると、
「○(円相) 露」と書かれたお軸、紫野大慈院・戸田実山和尚筆です。
このお軸の由来については後ほど詳しく書かせて頂きますね・・・。

        

        

ご挨拶を交わし、本格的な茶室「北暉庵」に驚いたことを申し上げると、
友人の建築家、スウェーデンの大工さん、いろいろな方の力添えで茶室が出来上がったいきさつを話してくださいました。
点前座は亰畳、点前座の向こうに明かり障子をはめ込むなど、随所にFさんのお茶に対する心入れが溢れている茶室です。

風炉は電熱なので炭手前は省略、待合の居間へ戻り、昼食を頂きました。
懐石にこだわると、なかなか一人亭主の茶事をしずらくなるので、
小林逸翁氏が提案した「どんぶり茶事」を取り入れられているとか。

小さなテーブルが3つ用意され、サーモンとアボガドの丼、向付は大根おろしと枝豆の甘酢仕立て、豆腐の味噌汁が乗った瓢型折敷が運び出されました。
どれも美味しく完食しましたが、サーモンとアボガドの絶妙な取り合わせ、向付の爽やかな味付けが忘れられません。

          
                 Fさん手づくりの「銀河」

続いて、主菓子「銀河」を賞味しました。
こちらには和菓子が売っていないのでFさんの手作りだと思うのですが、美しく美味しく・・・いつも手軽に買って済ませている吾が身が恥ずかしい思いがします。

しばしソファへ中立し、いよいよ後座の席入です。

       
   スウェーデンお茶の旅・・・北暉庵の茶事に招かれて(2)へつづく

スウェーデンお茶の旅・・・北暉庵の茶事に招かれて (2)

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 ストックホルムへ出かけ、お茶事に招かれたなんて・・・う~ん! 夢かしら?  )


         
            「○(円相) 露」 紫野大慈院・戸田実山和尚筆
             世界を巡回中の御軸です
            (茶事中の写真がないので、瑞暉亭で写したものです)

(つづき)
「床にどんなお花がいけられているのかしら?」
花はクリーム色の夕菅(ユウスゲ)とかわいらしいピンクの花(名前が・・・?)が生けられ、御軸「○ 露」と諸飾りでした。
点前座は長板二ツ置、黒真塗長板に風炉と義山の大水指。
後座の席入をすると、水指前にエキゾチックな仕覆を着た茶入が荘られています。

         
              夕菅(ユウスゲ)   (季節の花300)

後座の濃茶はまるで昨日のことのように脳裏に鮮明です。

閑かに座して待っていると、
ご亭主Fさんが茶碗を運び出し、茶入と置き合せ、柄杓を蓋置に引いて総礼。
いつもの濃茶点前ですが、自分が一緒にお点前をしているような緊張感を覚えました。
それは、Fさんの緊張感が私たちに素直に伝わって来たからで、その緊張感がとても心地よく何よりのご馳走に思いました。

日頃の修練の様子が垣間みられる美しいお点前、練ってくださった濃茶の香りが空間を満たしていく幸せな時間・・・。
白楽茶碗に美しく映える翠の濃茶を美味しく頂戴しました。
濃茶は京極の昔、一保堂です。

クラッシックな義山水指の塗蓋が開けられ、柄杓で水を汲まれる様子を拝見してハッとしました。
掬うと水面が優雅にゆらめき、カットガラスに反射して・・・麗しくも、今まで見たことのない一瞬でした。
黒真塗の長板、水指のカットガラス、光の加減、水指の水面が見られる席など、条件が揃わないと見れない光景です。
・・・Fさまが水を掬われるのが待ち遠しく愉しみでした。 
垂涎の義山水指はパートナーの家にあったもので、代々大事に使われてきた器を義母上から譲り受けたそうです。

お道具組も素敵でした。
姉上のお茶の先生が所持していたというアンティークの大海茶入、深海に沈んでいくような青味がかった色合に魅せられます。
”素”を感じる白楽茶碗はストックホルム在住の女性陶芸家・藤井エミさん造、
銘「千代の友」という幼名由来の茶杓、輪島塗の薄器「飛花」など・・・。
Fさんが生きて来られた軌跡を感じながら、茶道具とのご縁のお話が愉しゅうございました。

         

くつろいで薄茶をいただいた後に、先ほどの床の御軸
「○(円相) 露」 紫野大慈院・戸田実山和尚筆のことを改めてお話し下さいました。
この御軸を掛けて茶会をする「軸リレー」が世界を巡回中で、ドイツでの茶会を経てスウェーデン・北暉庵へ巡って来たのでした。
偶然ですがそんな折に茶事へお招き頂いたのも素敵なお茶のご縁と感激し、全員で記念写真を撮りました。
次の「軸リレー」ですが、
「明日、瑞暉亭で行われる茶会で是非この御軸を掛けてほしい」とFさんからOさんへ託され、こちらも楽しみです。

         
               明日、茶会が行われる「瑞暉亭」の扁額

Fさん、素晴らしいひと時といろいろなご縁を頂戴し、ありがとうございました!
日本へお帰りの時は、是非とも茶事にてお迎えしたく思っております。
また、お会いできる日を楽しみにお待ちしております・・・


   スウェーデンお茶の旅・・・ 瑞暉亭の茶会へつづく   
                    北暉庵の茶事に招かれて(1)へ戻る        トップへ

スウェーデンお茶の旅・・・あこがれの瑞暉亭へ

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             緑に囲まれた瑞暉亭の腰掛待合

         
                 茶会が行われた瑞暉亭

2017年6月27日は今回の旅の主目的である瑞暉亭(ずいきてい)の茶会の日です。
Oさんからのメールで瑞暉亭のことを知って以来、いつか瑞暉亭で御茶をいただきたい・・・と憧れていたのです。

その日のスケジュールは次のようでしたが、既に細かいところは朧です・・・。
9:00頃  Oさんがホテルへ来訪。着物に着替える。
       27日はOさんのサマーハウス泊なので、着替えをバッグに詰めトランクはホテルへ預ける(明日もう1泊する予定)
10:30  タクシーで瑞暉亭へ出発
11:00  瑞暉亭へ集合、準備、見学など
11:30  茶会
17:00  後片付けをすませ、タクシーでセントラル駅へ
18:00  電車に乗り、Oさん宅とサマーハウスへ
      (実際は駅でハプニングがあり、大変なことなことに・・・)    

先ずは瑞暉亭へご案内いたしましょう!
ストックホルム市内にある民族博物館の庭に茶室・瑞暉亭があります。

         
               ストックホルムの民族博物館

         
               夏休みなので子供たちがたくさん訪れています

茶室・瑞暉亭の入口に三カ国語で書かれた案内板があり、日本語で次のように書かれていました。(詳しくはブログをご一読ください

         

茶室「瑞暉亭」
この茶室は、日本の王子製紙、十條製紙、本州製紙、神崎製紙の四製紙会社とスウェーデンのガデリウスAB社によって建築され、1990年5月28日、スウェーデンに寄贈されたものです。

 1935年、日本の製紙王・藤原銀次郎翁は、日本文化の理解が深まることを願い、茶室「瑞暉亭」をスウェーデンに贈りました。1969年、残念ながら同茶室は焼失しました。

 新「瑞暉亭」の建築、寄贈は、藤原翁の精神を継ぎ、日本とスウェーデンの友好ならびに両国の文化交流の更なる発展の一助になって欲しい、という希望をこめて行われました。

 茶室は、吉兆及びスウェーデンの二つを意味ずる「瑞」と、輝き及び日出づる国、日本の二つを意味する「暉」から「瑞暉亭」と名付けられました。
名前の通り、日本とスウェーデン両国の友好親善を象徴しています。

 茶室の建物自体、芸術作品ですが、茶道文化の真髄は、茶室で催される茶会を通じてこそ心から味わい、正しく理解することができます。

         
              「そろそろ枝折戸を開けて中へ入りましょうか?}

         
          「千里同風を感じながら迎え付けを待つ・・・同行のFさんと」

         
              蹲踞 (エミーユ氏が浄める前にパチリ・・・)

         
              瑞暉亭の躙り口です

            
          刀掛け       塵穴

         
              瑞暉亭の広間です


1969年に火事によって焼失した初代瑞暉亭が建てられていた場所がそのまま残されています。
「・・・ここがイーダ・トロツィグが熱望し、スウェーデンに茶道の真髄を伝えたいと願った瑞暉亭跡なのね・・・」
初代瑞暉亭がスウェーデンに建設されることになった発端は、イーダ・トロツィグ(Ida Trotzig,1864-1943)というスウェーデン人女性の嘆願によるものでした。
イーダは約30年間日本の神戸に滞在し、茶道や華道を熱心に学んだそうです。

         
           「夏草や 熱きイーダの 瑞暉亭」 ・・・初代瑞暉亭跡にて涙の暁庵

         
               初代瑞暉亭の腰掛待合・・・唯一現存している建物

         
          藤原銀次郎翁が吟味し、日本から送ったという蹲踞などの石


     スウェーデンお茶の旅・・・瑞暉亭の茶会へ   前へ戻る    旅のトップへ戻る

スウェーデンお茶の旅・・・瑞暉亭の茶会 

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             瑞暉亭の茶会にて・・・・御軸「○(円相) 露」のもとに記念撮影
              (一番若手のさやかさんがカメラマンです)

(つづき)
その日はOさんのお声掛けで、瑞暉亭でお稽古や茶の湯のデモンストレーションをしているお仲間が集まってくださいました。
総勢7人、Oさん、マリアさん、ゆかさん、さやかさん、エミーユさん、Fさん(暁庵社中)、暁庵です。
暁庵とFさんがうろうろしている間に役割分担も手早く、茶会の支度が整っていきます。
エミーユさん(スウェーデン人男性)が蹲を浄め、露地にたっぷり水を撒いてくださったのには大感激・・・。
Fさんから託された世界をリレー中の御軸「○(円相)露」を広間の床の間に掛け、籠花入に持参の花が生けられました。

                

                   

                


広間(六畳)に坐してご挨拶を交わしました。
「皆さまのお蔭で、瑞暉亭で茶会をして頂きましてありがとうございます。
あこがれの瑞暉亭でお茶をいただきたい・・という念願が叶い、感無量でございます。
それに世界を巡回中の御軸「○(円相)露」」を掛けて、瑞暉亭で茶会をするというのも嬉しいお茶のご縁と思います」というような挨拶をしたような・・・。

円相はいろいろな解釈がありますが、「世の中が丸く平和に治まるよう、人々が手を繋いでほしい」、そして、露(堂々)ですが、「円(茶縁)のもとに出会う生きとし生ける者、人も植物も動物も全てが生き生きと輝いているように・・・」と勝手ながら解釈いたしました。

皆さまが用意された手づくりのお菓子が次々出されて、もうびっくり。
早速、Oさん手づくりの「青梅」のお菓子が運ばれ、茶会がはじまりました。

            


全員が薄茶を喫んで全員が薄茶を点てるという員茶(かずちゃ)之式に準じて茶会が始まりました。
最初の亭主はゆかさん、上座から順番に茶を頂き、茶を点てます。

茶歴も師も年齢も違う7人ですが、全員裏千家流ですのでお稽古のような雰囲気です。
みんな少し緊張しながらも心を込めて点ててくださった薄茶を美味しく頂きました。
薄茶は日本から持参した「松柏」(小山園)です。

            

一巡したので、休憩し軽いランチとなりました。
ランチの後に、瑞暉亭の活動の中心的な役割を果たしているマリアさんから「○(円相)」の解釈や日本訪問の話を少し伺うことができて、とても嬉しかったです。
だって、マリアさんは瑞暉亭と茶の湯を心から愛していらっしゃる、イーダ・トロツィグのような方だから・・・。

午後の茶会は、さやかさんとエミーユさんにお点前をお願いし、2服目の薄茶を頂きました。
お菓子は「水無月」(ゆかさん製)です。
さやかさんとエミーユさんは同門だそうですが、姿勢も歩き方も良く基本に忠実なお点前が素敵です。
スウェーデン人男性という先生のご指導の様子が髣髴され、こちらでもいろいろな方がそれぞれの茶の道を真摯に歩んでいるのだなぁ~と。
瑞暉亭でさやかさんとエミーユさんのお点前でお茶を頂いたのも良い思い出になりました。

   
    「瑞雲暉北空」の短冊・・・小間の床の間           


もう一つ、茶会で使われた水指や茶碗は藤井エミさん造で、前日のFさんの茶事で出会った白楽茶碗の作者さんです。
「滞在中に藤井エミさんと陶芸作品にお目にかかれないかしら?」
何かご縁を感じて口にしてみると、ゆかさんが藤井さんに連絡してくださり、なんと!明日なら家に来てください・・・ということになりました。
それで、明日の夕方、藤井さん宅で夕食をみんなで(?)ご一緒することになり、急展開な話ですがこれまた楽しみです。

茶会の後、着物を着換え、セントラル駅へ急ぎました。
この日は、ストックホルムから70キロ離れたところにあるOさんのサマーハウス泊です。


   スウェーデンお茶の旅・・・サマーハウスに泊まった!へつづく   前へ戻る    旅のトップへ戻る


スウェーデンお茶の旅・・・サマーハウスへ泊った!

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          久しぶりに日没を見ました・・・23時頃(?)サマーハウスにて

(つづき)
6月27日、瑞暉亭の茶会の後、ストックホルムから西方約70キロにあるOさん宅へ向かいました。
セントラル駅で思いがけない出来事に遭遇。
18時発の電車に乗り遅れ、18時30分発の電車をホームで待っていました。
30分をとっくに過ぎたのに電車が来るどころか、ホームに停車中の電車も動かず、様子が変です。
Fさんと2人だったら心細い限りですが、Oさんが一緒なのであまり心配しないで待っていると、
地下街で火事があり、1ヶ月前にテロがあったばかりなので警戒態勢がしかれ、足止めになっていたのでした。
そのまま電車は動かず2時間近く遅れて、地下鉄でNORSBORG駅まで行き、ご主人のホーカンさんに車で迎えに来てもらい、Oさん宅へ辿り着きました。

         
               日章旗と瑞典旗を掲げたOさん宅にて

Oさん宅に掲げられていてる日章旗と瑞典旗、Oさん夫妻の歓迎ぶりが嬉しく胸がキュンとしました。
どうしても見ておきたいものがありました・・・Oさんの茶室です。
2階の一室が茶室になっていて畳が三枚敷かれ、壁に御軸「一期一會」が掛かっていました。
ホーカンさん作の立派な風炉先屏風もあり、ここで友人たちとお稽古や茶会をしているのかしら?
まだ完成形ではなく水屋の位置や動線を工夫している最中だそうです。
畳の回りの板の間に椅子を置いて、正座が出来ない人でも気軽に参加できるようにしています。
この次は、こちらで茶会をお願いしたい・・・と密かに思いました。

         
               Oさんの茶室、風炉先屏風はホーカンさん作
  
         
           まるで桜のような谷空木の大木・・・広い庭には花がいっぱい咲いていました

さすがにお腹が空いて来て、車で約15分のサマーハウスへ向かいました。

         
                お出迎えのなぜか(?)巨大なカンガルー 

         
                母屋棟・・・こちらにも日章旗と瑞典旗がありました

小さな山小屋のような別荘を想像していたのですが、訪れてもうびっくり!
湖のプライベートビーチのある広大な敷地に母屋を中心に5個のコテッジのある、素晴らしいサマーハウスでした。
サマーハウスはホーカンさんの母上が建てられたそうで、今は兄弟で共有し管理や利用しています。
短い夏を楽しむために一族や家族が集まって、食事をしたり、サウナへ入ったり、ボートで遊んだりできるように、コテッジを含め20名以上が宿泊できるようになっているとか。
2つのサウナ棟や2段ベッドのあるコテッジへ案内してくださったのですが、大工仕事が好きなホーカンさんと弟さんでコツコツと造って増やしていったそうです。

 
    サウナ棟(こちらは薪で焚くサウナ)

湖に沈んでいく夕陽を見ながら、Oさん心づくしのスウェーデン料理を楽しみました。
スウェーデンではジャガイモが主食です。
茹でたジャガイモ、野菜とゆで卵に海老が乗ったサラダ、チーズパイ、グラバド・ラックス (Gravad Laxマリネ鮭)、鰊の酢漬けなど、テーブルいっぱいにご馳走が並んでいます。

チーズパイとグラバド・ラックス(マリネ鮭)がお気に入りです。
グラバド・ラックスは鮭を砂糖と塩で〆たものに独特のソースをかけたものだそうですが、レシピを頂いて作ってみたいほどでした。
茹でたジャガイモまたは薄く固いパンにズッキーニ、ピクルス、鰊の酢漬けを乗せて食べるのも美味しかった。 ご馳走さま!(食べるのに忙しく写真がありません・・・シュン

  

窓から見える、刻々変わる雄大な景色とホーカンさんとのお話も嬉しいご馳走でした。
スウェーデンのことを全く知らない暁庵とFさんに優しく、いろいろなことを日本語で教えてくださいます。
いつのまにか外が真っ暗になり、話は尽きませんでしたがあわててお開きにしました。 


   スウェーデンお茶の旅・・・ミートボール食事会へつづく   前へ戻る    旅のトップへ戻る


スウェーデンお茶の旅・・・サマーハウスの「ハタハタ」

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(つづき)
2017年6月28日、朝7時にアラームが鳴り、一瞬、ここはどこかしら?
母屋棟2階の湖が見えるかわいいベッドルームで目覚めました。

短夜がいつ明けたのでしょうか?
外を見ると、太陽がふりそそぎ、戸外へ誘っているようです。
パジャマのまま部屋の脇にあるベランダへ出ると、掲げられた大きな日章旗が目に入ってきました。
風が吹いていないので、ションボリとうなだれています。
あわてて部屋に戻り、着換えて朝の散歩へ出かけました。
20名は座れるかな? 木製の大テーブルの椅子に腰かけて、旗がたなびくのを気長に待つことにしました。

             

すると・・・・「ハタハタ・・・」という音がするほど旗が見事にたなびいて
「おはよう! さっきから貴女が起きるのを待っていました。ハタハタ・・・」と言っているようでした。
久しぶりに聴く「ハタハタ・・・」が心地好く、「うーん、以前にこの音をいつどこで聴いたかしら?」
どこかとても懐かしいサウンドスケープですが、思い出せません・・・。

朝陽に耀く湖水の景色を見ながらの朝食の時、旗のことをOさん夫妻に報告すると
「あらっ!ホーカンが喜ぶわ。でも、ハタハタ・・・のあの音で眠れない時があるの」とOさん。
旗が大好きなホーカンさん、たくさんある大小の日章旗は日本であっちこっち探し求めたとか・・・きっと一つずつ、ホーカンさんの思い出が詰まっていることでしょう。

             

朝食の後、「予定している観光はやめてサマーハウスに少しでも長くいたい!」とお願いし、
12時過ぎの汽車でストックホルムへ戻ることにし、のんびりさせてもらいました。
Fさんがホーカンさんと足漕ぎボートで出かけるのを見送り、岸辺のベンチに腰かけてぼんやり景色を眺めています。

             

             

河骨(コウホネ)が黄色い花をいっぱい咲かせています・・・雲も風もゆったりと流れていました。
昨日は忙しかったのでこんな時間も好いなぁ~と。
ふと「なんて野点にぴったりの場所なんだろう・・・茶箱を持って来て、このベンチでホーカンさんとOさんにお茶を差上げたかった」・・・茶箱を持ってこなかったのが悔やまれます。

             

そろそろ出かける時間らしく、身を乗り出してOさんが声を掛けてくれました。
素晴らしい時間はあっという間に過ぎてゆき、「またここに来れたら・・・」と思います。

             
                 「ヘイドー(さようなら) サマーハウス」

             
                  王宮と衛兵・・・ストックホルムにて

汽車に乗りストックホルム・セントラル駅へ戻り、藤井エミさんとの約束の時間まで買い物をしました。
なんせ帰ったら茶会を予定しているFさんの意気込みが凄い!のです。
明日、帰国するので残された時間が僅かしかありません。
スウェーデンらしい木製品や樺細工、スウェーデン料理に使えそうな食品など、自然食の専門店、スーパー、デパートなどを見て歩きました。
陶器も有名ブランドやデザイナーものなどそれなりに魅力的でしたが、高価でなかなか手がでません。
やっとお目当てのものを数点ゲットして、地下鉄に乗り、陶芸家・藤井エミさんのお宅へ向かいました。


      スウェーデンお茶の旅・・・次へつづく   前へ戻る    旅のトップへ戻る

スウェーデンお茶の旅・・・藤井エミさんとミートボール食事会

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(つづき)

藤井エミさんは約50年スウェーデンに在住、女性陶芸家として活躍し、スウェーデンや日本で数々の個展をなさっている方でした。
北暉庵の茶事の白楽茶碗や瑞暉亭の水指や茶碗など、エミさんの作品に出会ったのがご縁で、思いがけなくお宅へ押しかけ食事会をすることになりました。
快く食事会のために自宅を提供してくださったエミさん、どんな方かしら? どんな作品を作っていらっしゃるのかしら? 

 
    長期宿泊のお礼に中国人の方が白壁に描いたという水墨画 (エミさん宅からの風景) 
     
エミさん宅はとてもユニーク、芸術家にふさわしいステキなお住まいでした。
元は学校とか、その一画を自由に改造して良いということで、アトリエ兼住まいとして購入したそうです。
天井の高い広い空間をそのまま生かし、寝室と浴室&トイレの2部屋だけ仕切りを作っています。
白壁の大広間に台所、大テーブルセット、小テーブルセットなどがすっきりと置かれ、窓辺には時計草の大鉢が並び、隅っこの棚に自作の陶芸作品が積まれていました。

食事会が始まる前に陶芸作品を手に取ってゆっくり見せてもらいました。
「棚から自分で見たいものを持って来て、こちらでご覧ください」
Fさんは買う気満々なのでたくさん、私は数点選び出し、小テーブルに置きました。
Fさんは素晴らしい茶碗を1つ購入、心に叶った一碗は旅の想い出とともにFさんの茶事を暖かく力強く支えてくれることでしょう。
暁庵はお気に入りの平茶碗があったのですが、セラミック(熱くなる)ということで今回は見送ることにしました。


        時計草  (季節の花300)         (クリックして)

           
                ミートボールについて講義(?)中のゆかさん

スウェーデン料理といえばミートボールが有名ですが、まだこちらで食べていない旨を話すと、ミートボール食事会に決まり、必要な食料品はゆかさんがご主人のピエールさんと勤め帰りに買って来てくださいました。
エミさん、Oさん、ゆかさん、ピエールさん、Fさん、暁庵の総勢6人が御馳走が並ぶ大テーブルを囲みます。

一口にミートボールと言っても、豚、鳥、牛、ラム、鹿、熊(冬季?)などの食材で味わいが違うそうですが、ゆかさんお勧めブランド(たしかfor the people)のミートボール(豚、鳥、牛)にソースをかけて頬張りました。
このソースが決め手で、甘いジャムのようなものと辛いのと・・・・うーん名前が思い出せませんが、両方ともミートボールの味を一段と引き立ててくれます。
フランス料理もそうですが、スウェーデン料理に使われるソース、香草、香辛料の役割を改めて実感しました。
日本語とスウェーデン語が飛び交う食卓のなんと!楽しく美味しいこと。御馳走さまでした! 


            
              「暗く寒く長い冬は豊かさにも変わるのよ」

藤井エミさんは今、生涯最後の個展を企画中だそうです。
きらきらと目を輝かせながら、1年先になるか、2年先になるかわかりませんが、自分の手で有終の美を飾る個展をやり遂げたいと。
過去の個展の案内に書かれたエミさんの言葉が頭をよぎります。

「暗く寒く長い冬は豊かさにも変わるのよ」

「新しく白夜の朝焼けのような作品が生まれました・・・」

「もしできることなら生涯最後の個展の時にこちらへ来て、エミさんのすべてを感じる陶芸作品を見たい・・・」とそっと思いました。
その声が聞こえたのかしら? 帰り際に
「こちらへ来る事があれば、ゲストルームがあるのでそこにお泊まりなさい・・・」とエミさん。

エミさんに見送られ、途中でゆかさんとピエールさんと別れ、地下鉄でOさんと別れ、Fさんとホテルへ戻りました。
明日は、ストックホルム・ブロンマ空港からヘルシンキを経て、日本へ帰国します。

「ヘイドー(さようなら)  Oさん、ゆかさん、ピエールさん、エミさん、そしてお会いした皆さん!!」     


      スウェーデンお茶の旅・・・最終章へつづく   前へ戻る    旅のトップへ戻る

スウェーデンお茶の旅・・・最終章 「イーダの部屋」

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                      ヘルシンキ大聖堂

            
               マーケット広場にて昼食、搾りたてのオレンジジュースに感激!

最終日6月29日にホテルからタクシーでブロンマ空港へ。
フィンエアー0982便に乗り、一端ヘルシンキ空港へ降り、約6時間後にJAL0414便で成田へ。
ヘルシンキで6時間も待ち時間があったので、電車に乗り、ヘルシンキ中央駅近辺をうろつきました。
最後に樺細工の箱と「マリメッコ」のティポットを買って、やっとやっと買い物終了です。
6月30日の朝、無事に成田空港へ到着、夢のような旅を終えて暑い日本へ戻りました。 

            
                  「イーダの部屋」・・・ストックホルムの民族博物館

1つだけ、書いておきたい事があります。
「イーダの部屋」のことです。
「スウェーデンに本格的茶室・瑞暉亭を建て、茶の湯を広めたい・・・」と嘆願したイーダ・トロツィグを顕彰して民族博物館2階に「イーダの部屋」が作られていました。
その部屋で初めてイーダの写真を見ました。
お孫さんのゲイビーが本「瑞暉亭」に書いた一文の通り、なかなか意志が強そうな女性です。

            

「私達の祖母イーダ・トロツィグ」
(Gavy Stenberg Koch、Ume Stenberg Radbuch著  訳者 オーネル敏子)より抜粋
ちょっといたずらっぽい目は優しく聡明なブルーカラー、はっきりしたあごのラインは頑固さを語る様でした。顔は大きな笑い声と同時に明るくほころび、髪は後ろで結ばれていました。 
力強い手はお菓子を焼いたりパンを焼いたりする様な、典型的なおばあさんの手ではありませんでしたが、私達を抱擁する優しい手でした。
もちろんお茶の葉を急須にいれたり、日本の生け花の為に花をアレンジする祖母でした。
祖母と母のイーネズ(Inez)は盆石(石と砂で造る芸術)を浅鉢で造り、私達はそれを見る事がありました。


            

            
                 瑞暉亭の茶会の合間に「イーダの部屋」でくつろぐ二人

イーダが持って来た、当時の日本の写真がたくさん飾られています。
明治時代でしょうか、私が見ても古い古い昔の日本の風俗写真ですが、きっと見る人が見れば民族学的な価値があることでしょう。
もし瑞暉亭を訪れることがあったら、「イーダの部屋」で是非イーダに会ってください。
それから民族博物館の日本を紹介する展示コーナーに素晴らしい茶道具、釜、炭手前道具などがあり、こちらもお勧めです。
ただ、どういう経緯でこちらに来たのか、肝心なことがわからないままになっているのが残念!
素晴らしい能面もたくさん展示されていましたが、こちらも詳しいことがわかりません・・・。

             

             

これにてスウェーデンお茶の旅は終了ですが、お茶の持つ力と不思議なご縁を噛みしめる旅でした。
スウェーデンに根を下ろし、お茶と真摯に向き合い、暮らしや自然を楽しみ、それぞれの場で活躍している現代のイーダ達に逢えたことが嬉しい旅でした。
みなさま、タック ソー ミュンケ(ありがとうございました)!
日本でご来庵を楽しみにお待ちしています。


     スウェーデンお茶の旅・・・ 前へ戻る    旅のトップへ戻る

PS)
うんうん唸りながらPCに向かっていた時に、京都のTYさんからメールが届き、元気を頂きました。
このメールのお蔭で最後まで書き終えた気がしています。ありがとうございます!

 京都のTYさんから
京都は祇園祭も終わり夏本番となってきました。お変わりございませんか?
6月にブログのお休みが告げられた時は、ご病気か海外旅行かどちらだろうと案じていましたので、まだ続く旅行記に再会できて、毎日愉しみに拝読しております🤗

日々の巡り合わせを大切にされてこられたからこその、出会いが一杯つまったご旅行だと、感銘しております🎀
旅行記も終わりに近づいてきたでしょうか?
書き終わられ一安心されて、旅の疲れと夏の暑さが一度に押し寄せない様に、お身体をご自愛下さい。
またお目にかかれる日まで・・。

自分がまるで旅行に同行している様に感じて、急いで書いた文章で言葉足らずで申し訳ありません。       TYより         

茶杓「寧」のこと

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                   カフェ&ギャラリー「寧」の表札

皆さま お暑いですね・・・


  暑中お見舞い申し上げます    
            
                   暁庵


海外旅行から帰った次の日の朝9時のことです。
時差と疲れもあって泥のように眠り込んでいました。
「姫路のKさんから電話! 留守中にも電話があったので早く出なさい・・・」とツレ。

深い深い海の底の眠りから引きずり出されるように電話に出ると、

「Kです。お帰りなさい。お疲れでしょうから手短にしますね。
 ブログの「「染谷英明-茶盌展-」・・・屋敷森の「寧」にて」を読んでびっくりしました。
 カフェ「寧」と我が家の設計士さんが同じだったご縁で、昔、行ったことがあるのです。
 エントランスにあった「寧(ねい)」の字、丁寧の寧という字。
 実はあの字に惹かれて、暁庵さんが茶会にいらした時に掛けた軸「洗心」は「寧」の筆者さんに特別に書いてもらったものなのです」
・・・と一気にKさんは興奮気味に話します。

            
            
                    屋敷森のカフェ「寧」にて

「洗心」・・・もちろん覚えていますが、
確か筆者は障害のある方ということだったけれど、その字はなんの穢れも慾もなく、心が洗われるようだった・・・と、半分眠っている頭の中でかろうじて思い出しました)

「驚くやら嬉しいやら・・・暁庵さんとはやっぱりご縁があるのですねぇ・・・。
 このことをどうしてもお伝えしたくて・・・お疲れのところごめんなさい」
こうしてKさんからの電話が終わり、再び深い眠りに落ちていきました。 

           
                なぜか? 屋敷森の「寧」には猫の道しるべがあちこちに        

数日後、カフェ&ギャラリー「寧」で個展をされた染谷英明氏へ電話しました。
「スウェーデンから帰りましたので、そろそろ茶碗を送ってくださいませ。
それから・・・と、Kさんからの電話のことをお話しし、
カフェ&ギャラリー「寧」とKさん、見知らぬ「寧」の筆者さんとのご縁を感じて、「中心人物たる染谷氏に「寧」という銘の茶杓を削って欲しい」とお願いしました。
個展の時に染谷氏自作の茶杓を見せて頂いて、いつか是非お願い出来たら・・・と思っていたので。
染谷氏が私の勝手な依頼に快く応じてくださって、もう感謝感激!です。

7月の半ば、不思議なご縁に導かれるように茶碗と茶杓「寧」が我が家へやって来ました。
筒に「寧」と書かれ、素敵な布にくるまれています。
煤竹の華奢な作りの茶杓は一目で気に入り、茶碗とぴったりお似合いです。 

              
                    8月16日の五山送り火 「大文字」         

急に茶事がしたくなり、8月16日に「大文字 夕去りの茶事」をすることを決意しました。
スウェーデンから帰国後、もう、だらだらと「ネブタ(?)」のように過ごしておりまして、猛反省もあり、かねて念願の茶事に取り組むことにしたのです。
(8月の茶事は暑さを理由に避けていました・・・2014年8月の秋待つ撫子の茶事以来かも?)
はじめてのテーマですが、遠く京都の五山送り火に思いを馳せながら、縁のあった亡き人達をしのびたいと思っております。
私の消夏法とダイエット(?)にお付き合いくださいますお客さまへ、もうなんとお礼を申し上げたらよいやら・・・感謝の一言でございます。 

今は暑さと相談しながらゆっくり茶事支度を楽しんでいます・・・茶杓「寧」に見守られながら。 


白露の朝茶事にいらっしゃいませんか?

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文月のS先生の東京教室のお稽古で
「昔の茶会記を読むと、朝茶事が多く、冬でもすることが多かった・・・」
というようなお話を伺いました。
(えっ!冬でも朝茶事? 皆さん、お忙しかったのかしら? そういえば、夏の朝茶事すらしていない・・・)という反省もあり、朝茶事をがんばります。

初風が吹く頃に「白露の朝茶事」にて御茶一服差し上げたく、下記の如くご案内申し上げます。
朝茶事・・・といっても大分遅い時間のご案内ですが、どうそいらしてくださいませ。

南仏&スウェーデン旅行
で求めた茶道具(??)も登場するかもしれません・・・。
心からご参席をお待ち申しております。        暁庵


「白露の朝茶事」
1.日時  平成29年9月2日(土)
      8時30分席入(15分前までにご参集ください)

2.席  拙宅・暁庵  横浜市旭区今宿
     相鉄線二俣川駅下車(2台駐車可能、参加の方にアクセスなど別途お知らせします)
     電車の方は二俣川駅8時集合で如何でしょうか?)
     
3.会費 1万円 (当日お持ちください)

4.お客様  4~5名様

5.概要(予定):8時半席入~炭~別室(椅子席)にて朝食~菓子~中立~濃茶~つづき薄茶~12時半解散予定

6.参加資格:初めての方もリピーターの方も他流の方も大歓迎でございます 

7.応募方法:メールにてお申込みください(氏名、住所、連絡先電話、簡単な茶歴(流派)など)
 メールアドレス:akatuki-ane@grace.ocn.ne.jp

8.応募期間:8月3日(木)~8月13日(日)まで(定員になり次第、応募を終了いたします)

その他:満席になりましたら、この欄の追伸にてお知らせいたします。 


         
                横浜・三溪園にて
         朝茶事と言えば・・・「蓮見の朝茶事」を懐かしく思い出します(涙)  


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