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Channel: 暁庵の茶事クロスロード
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8月1日のこと・・・旧小坂家住宅とスタバ二子玉川公園店

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             世田谷区の花、鷺草・・・旧小坂家住宅にて

8月1日(火) のち

「香合と香炉」展を見に、静嘉堂文庫美術館へ歩いている途中のことです。
どこかで「暁庵さん・・・」と呼んでいるような声がしてキョロキョロ・・・。
すると、わざわざタクシーから降りた女性が手を振っています。京都のSさんでした! 
静嘉堂文庫から次の美術展へ向かう途中で私を見つけ、声を掛けてくださったのでした・・・嬉しい束の間のSさんとの再会です。
ツレが二子玉川に勤めていたので、週1回通ったというとんかつ屋さんでランチにしようと。
生憎、店がお休みだったので他店を探していたところで、何というピンポイントの偶然なのでしょうか、今日は好い事がありそうな気がします・・・。

           
               鷺草展が開催中です

昼食後、静嘉堂文庫へ行く途中、「旧小坂家住宅」(世田谷区瀬田四丁目41番21号)を初めて見学しました。
多摩川の河岸段丘である国分寺崖線添いには明治から昭和にかけて、財閥、政治家などの別邸がたくさん建てられていました。
世田谷区の管理のもと、「旧小坂家住宅」がかろうじて元のまま残っています。
「旧小坂家住宅」は、実業家であり政治家でもあった小坂順造氏の別邸として昭和12年(1937年)に建てられ、渋谷区にあった本邸が戦災で焼失すると、以後は本邸として使用されました。現在は世田谷区により管理・公開されています。

           
           こちらが玄関です・・・高い天井の太い梁と土間に持ち主のこだわりが・・・

           
           書院のある広間・・・昭和の建築なので備え付けの空調完備です

           
           広間の奥にある六畳の茶室・・・とても好い雰囲気でした

           
           床は珍しい織部床・・・壁上部に板が一枚貼られていて、軸を掛けます

           
           茶室の近くにある洋室、暖炉の上にある洞床が気になります

           
            昔の洋室のセピア色の写真をパチリ

           
           仏教美術がお好きだったらしく仏像が安置されていたのですね
           (ここでカメラの電池がなくなりました・・・

それから静嘉堂文庫の「香炉と香合」展を見て、帰りは雨が降り出したのでバスで二子玉川駅へ出ました。
雨がひどくなりつつある中を、国分寺崖線添いの別荘群の1つで、二子玉川公園に移築されたという旧清水家住宅・貴真園(きしんえん、旧小坂家住宅で教えて頂きました)を訪ねたのですが、運悪くお休みでした。

貴真園以外建物もなく、人気もなく殺風景な公園の頂上にガラスの城のような「スタバ」がポツンと聳え立っていました。
雨が急にひどくなり、先ほどから気になっていた「スタバ」で雨宿りすることに。

何かこの世ではないような隔絶された雰囲気を感じながら
「この雨だし、きっとガラガラよね」と階段を登って行きました。

なんと・・・満席に近く、これにもびっくり。
パソコンを拡げている人、子供連れのママさんたち、若いカップル、受験勉強(?)中の学生など・・・。
入店前に受けた印象とは違い、ごく普通の人たちがそれぞれの憩いの時を過ごしています。
雨はますますひどくなり、ガラス窓を激しく叩いて唸っているのですが、こちら側は天国でした。
私たち老夫婦もアイス珈琲とアイスココアをすすりながら、不条理&アンバランスな空間と時間を愉しみました。

この世ではないあの世のような雰囲気(激雨のせいもあってネ・・・)のスタバ二子玉川公園店が気に入り、貴真園と共にまた訪れたいと思っています。   



葉月の茶事支度の悩み

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暑さに立ち向かっていく気持ちで茶事に取り組むことにしました。
(止せばいいのに・・・どうせ、年寄りの冷や水だろうから・・・と言う声が聞こえてきます)

  「年寄りの冷や水」
   年寄りが、強がって冷たい水を浴びたり飲んだりして、無理をする言動をいう。
   自分の年齢も考えずに無茶をすることは健康に良くないことから、それを自虐的に言ったり
   周りがたしなめたりするときに使う。「冷や水」は「冷水」とも書く。「江戸いろはかるた」の一つ。

しっかし、茶事をしたいという自分の気持ちに素直に応じて「茶事をしよう!」と思います。
「年寄りの冷や水」と言われようと、茶事をしている方が不思議と元気です。
5月頃までは「体調が悪くなるといけないから・・・」と、いろいろな事を無理して自粛していた気がしますが、今は「なにかあったらその時に対処しましょう」に変わってきました。

            
              今年は葛の花が早く咲いたような・・・7月下旬撮影

今、8月16日に迫っている「大文字 夕去りの茶事」の茶事支度を進めています。
この度の茶事は、恩師N先生から背中を押された気がしています。
「もう夜咄の茶事はしないので、茶事が好きな貴女さまに有効に使って頂ければ・・・」と灯火道具一式を有難くもお譲りくださったのです。

先ずは灯火道具の点検から始まりました。
雀瓦の古い油をゴシゴシ洗って取り除き、灯芯を確認します。
電池仕様の灯火もあり、乾電池を取り換えます。
夜18時45分~19時頃の中立に合わせてスケジュールを組み立て、その時間の庭の暗さ、灯籠や足元行燈の明るさを確認したり、生い茂る庭木の剪定が気になったり、蚊取り線香の数など・・・。

            
             水不足で、心配していた「日の丸」が咲きました

でも、一番気になるのは茶道具の取り合わせです。
風炉なので点前座の位置を含め、お客様の目線になってああしたり、こうしたり試行錯誤しています・・・・ 
ところで、道具の取り合わせの約束事・・・どなたさまがどのような根拠で決めたのでしょうか?
備前、信楽、丹波などの土物(無釉薬)の水指には棚を使わない、
地板のない泡清棚、猿肱棚などなら運びで使える、
棚には陶器の蓋置を用い、棚でも水指が畳付きの場合は竹の蓋置になる・・・などなど。

「う・・・ん、この水指とこの棚を使いたいけれど、あちら立てればこちら立たず、どうしよう??」と3日ほど我欲に捉われて(?)悩んでいます。
棚を使うかどうかで、炭手前も違ってきます。初座で棚に香合を荘りたいし・・・。
もうちょっと悩んでみて、自分なりの結論を出すことにしましょう。
いろいろな雑念が気持ちよく洗い流せたら好いのだけれど・・・。

「茶事とは全身全霊の出会いである」
・・・・尊敬する堀内宗心先生の凄い!お言葉です。
暁庵としては今茶事ができることを無上の喜びとして、楽しみながら頑張ろうっと。 
私の茶事にお出まし下さるステキなお客さまと共に・・・。

吾亦紅(われもこう)

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       「吾も亦(また)
            紅(くれない)なりと
                 ひそやかに」    高浜虚子


「大文字 夕去りの茶事」を無事終えて、気がゆるんだのでしょうか?
夏風邪をひいてしまい、いまだに咽喉の痛みと咳が治りません・・・。
治ったかしら? と思い、23日に暁庵の茶道教室の「茶箱まつりと暑気払い」を敢行したら、翌々日に風邪がぶり返して声がでなくなりました。

一日も早く、夏風邪を治したい!と思うのですが、暑かったり、冷房では冷えすぎるし、難しいです。
ちょっとのんびりして、9月2日の「白露の朝茶事」へ備えようと、今は静かにしています。

21日の夜10時過ぎのことです。
夜の公園の様子を見たくなり(なぜか時々見たくなります・・・)、外へ出ると玄関の脇に吾亦紅の花束がありました。
「吾亦紅(われもこうなり)}という名前の通り地味な花ですが、あふれるばかり大瓶に生けると、とても華やかな秋色になり、大好きな花です。

すぐにN氏が八ヶ岳の山荘から届けてくださった・・・とわかりましたが、夜更けにひそやかに届けられた花束にもうもう感激しました。
アリガトウゴザイマス! 

早速、23日の「茶箱まつりと暑気払い」に使わせてもらいました。
ススキを添えたいと思いツレに頼んだのですが、すぐ近くにあったススキが全部刈られていたとかで、なかなか帰ってきませんでした・・・。

        
                吾亦紅とススキ

追伸・・・今年の夏風邪は性質(たち)が悪いです。どうぞご用心ください!


大文字 夕去りの茶事を終えて-1

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                (茶事の写真がありませんで・・・
                 実際には杼の釣り舟に白百合と烏瓜を生けました)

長月に入ったというのにいまだ夏風邪が治りきらず、頭脳明晰ではありませんが、ボツボツと書き始めます。
よろしかったらお付き合いください。

8月16日(水)、暁庵の茶道教室が夏休み中のこと、「大文字・夕去りの茶事」に茶友5名様をお招きしました。
お客さまは、日頃ご一緒に茶道に親しみ励んでいる、とても気心が知れた方々です。
お正客はYさま、膝を悪くされているOさまが次客、三客Rさま、四客Oさま、詰は初めてご来庵のSさまにお願いしました。

席は横浜なれど、同日同刻に京都で行われる京都・五山送り火を思いながら、暁庵にて粗茶一服さしあげたく・・・とご案内の手紙をさしあげました。

京都・五山送り火とは、東山・如意ケ嶽の「大文字」、金閣寺附近の大北山(大文字山)の「左大文字」、松ケ崎西山(万灯籠山)と東山(大黒天山)の「妙法」、西賀茂船山の「船形」および上嵯峨仙翁寺山(万灯籠山・曼荼羅山)の「鳥居形」をさします。
如意ケ嶽「大文字」の夜8時点火をはじめとし、次々と点火されていきます。
ふたたび冥府にかえるお精霊(しょろ)さまを送る盆の送り火なので、京都の人は手を合わせて静かに見送ります・・・。

              
                   (2014年8月16日 京都にて撮影

難しいテーマですが、あまり深刻にならぬようサラッとその意味を伝え、何かを感じて頂ければ・・・と思いました。
「大文字」「左大文字」「妙法」「舟形」「鳥居形」を茶事の何処かに散りばめて、最後に回答して頂くことにしました。
すぐにわかるのもつまらないと思い、難しくしすぎたかしら?・・・。
このクイズ?のおかげでお客様同士、五山送り火のお話があれこれと続いたそうで、それを伺って安堵しました・・・。

念願のテーマでしたのでとてもやりがいを感じ、準備段階から亭主として大いに楽しませていただきました。
・・・が、久しぶりの一人亭主で体力に今一つ自信がありません。 
「一人では懐石に時間がかかり、お客さまにご迷惑をお掛けしてしまう」
とツレを口説き落として懐石の助太刀を頼みました(実際には他にもいろいろ・・・)。
懐石は盆の送り火なのでお精進に初挑戦してみました。
材料を重複しないように心がけましたが、お精進の方が難しかった・・・です。

              


「大文字 夕去りの茶事」の懐石献立 (平成29年8月16日)
  汲み出し  冷梅ジュース
  
  向付    胡麻豆腐  山葵
  汁     赤味噌仕立て  絹ごし  ジュンサイ  茗荷  
  煮物椀   飛竜頭  椎茸  オクラ  生姜
  焼物    米茄子の田楽  木の芽  芥子の実
  炊合せ   里芋  揚げ茄子煮 ぜんまい 青菜
  小吸    スダチ 
  八寸    昆布煮  しし唐天麩羅  
  湯香    こがし湯   大根  胡瓜糠漬  柴漬

  酒     上善如水 (白瀧酒造)
  主菓子   西湖(せいこ) (紫野和久傳)


        大文字 夕去りの茶事を終えて-2 へ続く

 

大文字 夕去りの茶事を終えて-2

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         「妙」の送り火のまわりでお精霊さまが踊っているような・・・
               (2014年8月16日 京都にて撮影)

(つづき)
その日(2017年8月16日)横浜は雨でしたが、京都は晴れていたようでヨカッタ!です。
昼頃には腰掛待合と露地の蹲踞を使うのを断念して、玄関に簡易の蹲踞を設けました。
席入は16時、一人亭主なので懐石に時間が掛かることをお詫びして、30分席入を早めて頂きました。
・・・しっとりと降る雨の中の夕去りの茶事、お正客Yさまはじめステキなお客様と過ごしたひと時は一生忘れる事のない想い出になることでしょう。

「大文字 夕去りの茶事」のあれこれを書きたいところですが、来年も(?)できましたら大文字の茶事をしたい・・・と思っております。
それで会記と、Rさまからの後礼の手紙を掲載し、「大文字 夕去りの茶事」の記念とさせていただきました。

待合  
床    般若心経  
煙草盆  竹張香座間透 
火入   青磁香炉

本席(初座)
床    掛物   「去々来々来々去々」   足立泰道老師筆
     花    高砂百合と烏瓜    
     花入   杼(ひ)の釣り舟
風炉   唐銅道安      
釜    波文尻張釜    畠春斎造

初炭   
炭斗   樺細工箱炭斗
羽根   フクロウ
火箸   岡山城大手門古釘
灰器   琉球焼         
灰匙   真鍮のスッカラ
水次   樺細工水次
香合   独楽 銘「ヒマラヤ」         

本席(後座) 
床    懸け仏     三具足
水指   備前         
茶入   ガラス茶器 銘「暁」  西中千人造      
     大津袋 
茶碗   白楽 銘「小鷺」  染谷英明造
茶杓   銘「寧」(ねい)    染谷英明作
棗    几帳棗   
茶碗(薄茶) 青磁    
        信楽    
蓋置   竹        
建水   京焼    

濃茶は「延年之昔」(星野園)、薄茶は「舞之白」(星野園)です。

          

  Rさまよりステキな後礼のお手紙が届きました。ありがとうございます!

大文字~急な雷雨~雨宿り~そして出逢い
・・・という流れは芝居で何度か観たことがあります
天候の急変が多い今年です
気圧の変化でお疲れは出ていらっしゃいませんか
私は雨宿りでの出逢いこそ無かったのですが、この大文字茶事に出会えた事がこの夏一番の想い出になりました。

暁庵様のお茶事ではいつも迎え付けの会話からワクワクいたします
今回も諸荘りは後座への布石とか、五山送り火探しのたのしみとか、お話を進めて頂いて、そこからトレジャーハンターに変身いたしました
お懐石の美味しかったこと・・・
ご主人様のお心尽くしのお味噌の田楽もお煮物も嬉しくって茄子を買って帰りました

短檠の明かりの中、緑の床の間に浮かんでいる懸け仏様のお姿はそのまま戻って行ってしまう親しい者の姿に見えて、改めて送り火の意味を教えて頂いたようで胸に迫るものがありました。
その反面、韓国や南仏そして北欧の旅で連れ帰ってきてくださったお道具達は初使いの物を含めて我々がこれから出会うであろう新しい楽しみ事にも思え・・・
去々来々来々去々
の最初の軸にこうして繋がるのだと嬉しい想いでございました

温か味のある形の備前水指に斬新なガラス茶器の取り合わせ、小鷺茶碗でのお濃茶が美味しかったです

   美味しい物を頂いた幸せ
   巡り会えたご縁への感謝
   そして送りし者への惜別

・・・とが混ざり合い、静かな雨音の中、色々な想いに浸っていたい夜でした
なので五山の発見はただ二つだけ・・・う~む残念でございました

お招きいただいて心より感謝しております
暁庵様のおかげで母が好きだったお茶とはこう言うものだったと改めて教えていただいております
ありがとうございました
どうぞお疲れが出ませんように御身お労りくださいませ
                   ごきげんよう

   平成二十九年 初来月十九日         Rより 


         
              最後はいつも物悲しく見送ります・・・・迷わず帰って行けたかしら?

  暁庵より
巻紙に書かれた長文のお手紙、茶事中の皆様との会話を思い出したり、時には共に亡き人の面影を追いかけたり、涙ながらに拝読しました。
また、掲載できませんでしたが、皆さまから心温まる後礼のお手紙を頂戴し、感謝感激しております。
こちらこそ、頂戴したお手紙に大いに癒され、励まされ、茶事の喜びと茶事を続ける勇気を頂戴しました。
いつもありがとうございます! 


       大文字 夕去りの茶事を終えて-1へ戻る 
       

葉月の教室だより・・・茶箱まつりと暑気払い

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              螺鈿と銀箔(黒くなっている部分)の草花文が素晴らしい茶箱・・・N氏愛蔵

久しぶりの教室だよりです。
8月の前半は夏休みだったので、8月23日が葉月最初の稽古日でした。
この日は茶箱まつり、「暑さを吹き飛ばそう!」と、茶箱点(ちゃばこだて)の集中稽古をしました。
茶箱点は裏千家流固有の点前で、全部で6種類あります。

裏千家十一代玄々斎が利休形(好み)の茶箱を用いて雪(冬)・月(秋)・花(春)そして卯の花点(夏)の四季を表わす点前を考案しました。
このほか、十三代圓能斎と十四代無限斎(淡々斎)が御所籠を用いた色紙点を完成させ、さらに、無限斎は和敬点を考案しました。

茶箱に茶碗、薄器、茶杓、茶筅の入った茶筅筒、茶巾の入った茶巾筒、振出しを入れ、盆または掛け合いと呼ばれる中蓋を使ったり、茶碗、薄器、茶杓に仕覆を着せるか否か・・・など、お支度も点前も複雑かつ微妙に違います。
お支度がさらさらと出来れば、その茶箱点はできたも同然・・・とよく言われています。


          
               暁庵の茶箱 (銘「からくれない」、色紙蒔絵があります)

最初はKさんの「卯の花」・・茶箱点の基本になる点前で、茶箱の平点前と言われています。盆を使いますが、盆の上に諸道具を並べ、茶は茶箱の蓋上で点てます。
次にUさんの「花」・・・茶碗、薄器、茶杓は仕覆扱いです。盆を使い、盆の上で茶を点てます。
KさんとUさんは7月に続き茶箱点は2回目です。

          
                雪点前のお支度(右にあるのは掛子です)

3番目はN氏の「雪」・・・茶碗、薄器、茶杓は仕覆扱いです。盆は使わず、掛子(かけご)を使い、茶は掛子の上で点てます。
雪点前は四国遍路の献茶で用いたので、暁庵にとって特別の想い出のある点前です。
N氏の侘びた味わいのある雪点前を拝見しながら「なぜ雪なのかしら? どのように雪を感じさせたらよいのかしら?」いろいろ瞑想しました。

最後はFさんの「月」・・・器据(きずえ)という板(桐の木地板四枚を紫の打紐で綴り合わせた)を使い、器据に諸道具を並べ、この上で茶を点てます。
最初に香を焚くのもステキな味わいがあり、香道で使うウグイス(針)を茶筅立てに応用しています。
茶箱点前中で最も美しい点前とされる月点前、Fさんお持ち出しの春慶塗茶箱が華やかさと温か味を添えていました。

点てた茶を出すときは必ず古帛紗を使います。
道具の拝見を乞われると、茶器、茶杓、それから、茶筅筒、茶巾筒、仕覆が入った茶箱を拝見に出します。

        
            高麗茶碗「狂言袴」、茶器(山田宗偏由来)と象牙茶杓・・・N氏愛蔵

        
            網袋、古染の茶巾筒、漢詩の彫られた茶筌筒・・・N氏愛蔵

「茶箱まつり」なのでN氏とFさんがMy茶箱をお持ち出しくださいました。
骨董好きのN氏の茶箱は光悦の作風を思わせる優品です。
皆の目が輝き、茶箱に納められたお道具をつ一つを手に取って拝見させて頂きました。
説明するN氏もお道具たちも嬉しそう・・・。


        
         ミートボールを食べながら皆でスウェーデンの茶友に想いを・・・
          (写真はIKEA提供です)

稽古後、待合のテーブルで暑気払いの食事会となりました。
北欧の旅で賞味したスウェーデン料理を食べて頂きました。
・・・が、実はIKEA港北店で調達した食品(ミートボール、サーモン、ジャガイモパンケーキなど)を温めたり、煮たり、サラダにしたり、サーモンおにぎりをにぎったり・・・したものです。
飲み物はビール、白ワイン、ウメッシュ、麦茶。
簡単な料理ばかりですが、ワイワイガヤガヤ・・・楽しく賑やかにいろいろなお話が飛び交って宴はつづきます・・・こんなパーティもたまにはいいですね!
                 

夏風邪を退散させた・・・と思っていたら、2日後にぶりかえし声が出なくなりました。 


        暁庵の裏千家茶道教室    前へ    次へ    トップへ


白露の朝茶事を終えて・・・1

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                 ススキの穂が顔を出し、いよいよ秋の到来です

「9月2日の白露の朝茶事へいらっしゃいませんか?」
というお誘いをブログへ掲載したのは暑い暑い8月3日のことでした。
年2回(風炉と炉の時期に)お茶サロンを心掛けていますが、思い立って番外編のお声掛けをしました。
とても楽しみにしていたのに夏風邪がなかなか治らず、3日前まで開催を迷っていました・・・

9月2日(土)の「白露の朝茶事」は8時半の席入り、あいにく朝から雨が降っていました。
8時過ぎ、お客様が到着したようです。
待合の掛物は「静寂」と書かれた扇子、棋士の趙治勲筆です。

待合から板木を打つ音が高らかに聞こえてきました・・・・1、2、3、4、5。
「さぁ~おもてなしをしっかりね!」と自分に気合を入れ、茶事のスタートです。
汲み出しは手付ガラスカップ、冷えた梅ジュースをお出ししました。

          
                  雨の音にいっそうの静寂が・・・・

亭主も心ひそかに楽しみにしていた、庭の草木の白露を愛でながらの席入りはできなかったのですが、
「雨にも負けず・・」参席してくださったお客様お一人お一人と、「出会い」の素晴らしさを感じながらご挨拶を交わしました。

正客はWさま(川崎市麻生区)、第4回お茶サロン「春は名のみの正午の茶事」、第5回お茶サロン「野の花を愛でる茶会」に続いて参加してくださいました。今、お茶事が楽しく、お茶事に燃えているご様子がうかがえ頼もしいです。
初めての正客と一時心配そうでしたが、誠に堂々と見事な正客ぶりで、お願いして大正解でした。

次客Yさま(横浜市旭区)と三客Kさま(東京都港区)は小堀遠州流をお習いで、佐藤愛真さまの料理教室の生徒さんでもあります。
小堀遠州流(当代は宗圓宗匠)は遠州の弟・小堀正行の末になるそうですが、他流の方のお話や席中の所作はとても新鮮で、いろいろな刺激を頂戴しました。
特に風炉の灰形や炭手前は裏千家流とだいぶ違うようですが、小堀遠州流のお点前にも興味津々なのでいつか是非お招きを・・・。

          
                  スウェーデン・ストックホルムの公園にて

四客Nさま(川崎市中原区)は裏千家流に入門して7か月、当ブログ「スウェーデンお茶の旅」を読んで応募してくださったそうです。
ご主人はスウェーデン人、将来的に日本とスウェーデンの両方の文化を取り入れて、おもてなしができたら・・・と思い、着付けを習い、お茶を習い始めたそうです。
その志が嬉しく、入門7か月で暁庵の茶事へ参加してくださった勇気に感動したのでした。
きちんと朝茶事のことを勉強されて茶事に臨んで頂き、これもまた嬉しいことです。

詰は暁庵社中のFさまです。Fさまにとって特別の日だったのでお招きしたいと思いました。
あとで、サプライズが・・・・?? 

          

床の御軸は「洗心」、藤田寛道和尚筆です。

点前座には唐銅道安の風炉、糸目桐文車軸釜を掛けました。
釜は和づく釜で長野新造・・・松風が美しく心地良く、いつまでも聞いていたくなるお気に入りです。


          白露の朝茶事を終えて・・・2へつづく

白露の朝茶事を終えて・・・2

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(つづき)
「お炭を置かせていただきます」
スウェーデンの旅で購入した樺細工箱炭斗を持ち出しました。

              
                  樺細工箱炭斗にマリメッコのナプキンを敷きました

朝茶事の炭手前は初炭とほぼ同じですが、風炉中拝見があり、水次で釜へ水を差し、濡れ茶巾で釜を浄めます。
あとで小堀遠州流のYさまとKさまから月形のことを尋ねられました。
「あれは何ですか?」
裏千家流の茶会は経験されていますが炭手前は初めてだそうで、その質問が新鮮でした。

「この灰形はお正客さまをお迎えするために心をこめて調えました・・・」
言葉ではなく「月形を切る」ことでそのような亭主の心意気を示しているのです・・・と。
灰形は二文字押切でしたが、小堀遠州流の灰形は全く違うようなのです。
拝見したことが無いので想像できません・・・が、いろいろ興味深いお話が満載でした。

樺細工水次はスウェーデンみやげの見立てです。
しっかりした口蓋が付いており、中に実験用ガラスフラスコが入っているのが気に入ってます。
香合は独楽香合。
ブータンの旅ではご縁がなかった塗りものでしたが、南仏・エクス・アン・プロヴァンスで出合うことが出来ました。

              
                  独楽香合 銘「ヒマラヤ」(購入したエクスの店の名前から)

炭手前が終わり、待合のテーブル席へ動座して頂き、懐石となりました。
今回の懐石は準備不足もあり、今一つ自信がありません・・・。
それに一人亭主のせいで時間ばかり掛かってしまったようで、反省ばかりです(シュン!)。
懐石後に主菓子「森の朝露」をお出ししました。

              
                  下げてきた懐石膳、小堀遠州流のお終い方が珍しくパチリ
                  (右上の下は小吸い物椀、上に杯、その上に小吸い物椀の蓋を伏せて)
            
              
                 「森の朝露」(寿々木製)・・・実際には染付大皿に笹葉を敷いて

中立の頃に雨が止んで陽が差してきたので、後入りの合図は銅鑼です。
7点(大・・・小・・大・・小・・中・中・・大)打ちました。
腰掛待合が使えないので、玄関先の簡易蹲踞を使って後入りしていただきました。

朝茶事の懐石
向付     胡麻豆腐  山葵
汁      赤味噌仕立て  絹豆腐  ジュンサイ  茗荷  辛子
煮物椀    鰻入り蓮根餅  椎茸   三つ葉   生姜  
盛り合わせ  里芋  茄子揚げ煮  オクラ  楓麩  パンプキン麩の田楽
小吸物    青柚子   
八寸     昆布煮    枝豆の松葉刺し
香の物    沢庵  胡瓜糠漬  茄子浅漬  柴漬  奈良漬 
酒      上善如水(白瀧酒造)

            
       白露の朝茶事を終えて・・・3へつづく    1へ戻る


白露の朝茶事を終えて・・・3

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(つづき)
後座の床には白い芙蓉を桂籠に入れ、露を打ちました。
点前座を茶道口前の丸畳に移し、木地釣瓶の水指、茶入を大津袋に入れて荘リ付けました。

後入りの座が静まると襖を開け、茶碗を持ち出し、いよいよ濃茶のはじまりです。
「御茶一服差し上げたく・・・」
茶事の真意は濃茶にあり・・・と、いつも緊張感を持って臨みます。
四方捌き、茶入、茶杓、茶碗の清めは亭主にとっても心身が浄められ研ぎ澄まされていく瞬間でもあります。
白楽茶碗に濃茶を掬いだすと、ぷぅ~んと佳い香りが漂い、美味しい濃茶が練れそう・・・な気がしてきました。

              
                           「小鷺」    染谷英明造

5人分ですが深くたっぷりした茶碗なので安心して、しっかり練ってお出ししました。
「お服加減はいかがでしょうか?」
「香りもお練り加減も素晴らしく、美味しく頂戴しています・・・」
(ほっ! ヨカッタ・・・)
濃茶は「延年の昔」、詰は福岡県八女の星野園です。

濃茶の時、裏千家流では楽茶碗には古帛紗を添えませんが(楽以外の茶碗には添える)、
小堀遠州流のお二人にはお流儀の仕方で喫んでいただきました。
出し袱紗をお使いになり、たたみ方も初めて拝見しました。
白楽茶碗は銘「小鷺」、昨秋の韓国旅行で知り合った陶芸家・染谷英明造です。
今一番のお気に入りかも・・・・白露の朝茶事にこの茶碗以外は考えられませんでした。

              
                         
内輪話ですが、本当は名水点のつもりでした。
お正客Wさまは秦野市へお稽古へ通っていると伺って、名水の里・秦野の湧水を汲んで名水点を・・・と考えたのですが、諸事情で断念しました。
Wさまにはまたの機会に是非・・・と思っております。

続いて薄茶を差上げました。
主茶碗は久しぶりに登場の大好きな「うずまき」茶碗です。
神奈川焼の井上良斎が十五世・市村羽左衛門(橘屋)を偲んで造った茶碗で、「うずまき」は橘屋の替え紋だとか。
入手先の古美術「ささき」が小堀遠州流とご縁があることを知り、小堀遠州流のお二人に「うずまき」茶碗で薄茶をのんで頂きたい・・・と思ったのです。

              
                            「うずまき」   井上良斎造

替え茶碗は銘「淡路」(琴浦窯の桐山造)、暁庵の数少ないボーイフレンドT氏から京都を去る折に頂戴した想い出の茶碗です。
茶入と大津袋を拝見に出し、4服目から詰のFさまにお点前を代わって頂き、お客様とゆっくりお話しさせていただきました。

茶入は銘「暁」、世界を股にかけて活躍中の西中千人(ゆきと)造です。
ガラス茶入ですが、呼び継ぎの手法を取り入れ、繊細かつ大胆な味わいがあり、作者共々魅力的です。
釜師・長野新&珠己夫妻の初釜で知り合い、茶事にもお出まし頂き、このステキな茶入「暁」にご縁が繋がり嬉しいかぎりです。
仕覆が間に合わず大津袋に入れたのですが・・・・思いがけず好評でした。

茶杓は銘「寧(ねい)」、白楽茶碗の作者・染谷英明氏に削っていただきました。

お話は尽きませんが、お客様といろいろお話しできる薄茶タイムは楽しく貴重なひと時でした。


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白露の朝茶事を終えて・・・4 (最終)

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                          薄器の化粧壷
(つづき)
薄器は化粧壷、小林芙佐子先生に仕覆を依頼した折古美術「伯楽」から連れ帰ったもので、大名の化粧道具の離れと伺っています。

小堀遠州流のKさまからメールが届き、薄器と大津袋について興味深い感想を寄せてくださいました。メールを掲載させていただきます。

  Kさまより
「白露の朝茶事」では、ありがとうございました。
折に触れ、心の中で反芻しては、またいろいろな思いが湧いてくるのを感じております。
皆さまとご縁が繋がりましたこと、
何よりも暁庵さまの真摯なお志を一会の客としていただけたことを、有り難く存じております。
私も先人の跡を辿り、お茶を通して共に喜び、共に感動できる時間を持ちたいと願っております。

・・・後礼のお手紙では申し上げなかったのですが、一つお道具の中で、
極しぼ縮緬の紫根の大津袋が、大名道具の化粧壺を見立てたお茶器になんと合うものか、と印象深く感じました。
なるほど古裂でなく、柔らかな縮緬が素敵だなぁと。被布衿を着た姫君のようでした。
拙い感想で申し訳ありません。

また機会がございましたら、お声掛けいただければ幸甚に存じます。
暁庵さまにはまだ万全ではないご様子ですが、どうぞ御身お大切にお過ごしくださいませ。
皆さまも、またのお目もじを楽しみに致しております。    Kより

            
                        紫縮緬の大津袋
Kさまへ  
大津袋は裏千家流独特のお点前と思いますので、以下を書き添えます。

利休の時代には棗が濃茶に使われることがよくあり(もちろん現代でも・・・)、その時の扱いとして包袱紗と大津袋があります。
大津袋は主に紫縮緬でできていて、利休の妻・宗恩が、大津から京都に米を運ぶ米袋にヒントを得て考案されたと言われています。
・・・ここからがちと問題あり・・・なのです。
包袱紗や大津袋の場合、必ず黒無地の棗が約束で、それも時代のあるものを・・・とお習いしています。
今回大津袋を使ったのは仕覆が間に合わなかったせいですが、呼び継ぎの鮮やかなガラス茶入に無地紫の大津袋がお似合いだったという声も聞かれました。
また、Kさまのご提案のように化粧壷に着せてあげたら、どんなにかお似合いでしょう。
茶事では亭主が責任を持って趣向の1つとして考えればよろしいのではないかと思っております・・・。

              

茶事後に頂戴する後礼の手紙は亭主にとって何物にも代えがたいほど嬉しいものです。
裏千家入門7か月のNさまから分厚い手紙が届きました。
その分厚さにびっくり!し、胸ふくらませて巻紙に墨で書かれた手紙を拝読しました。
Nさまから頂いた手紙を掲載させていただきます。

  Nさまより

一筆御礼を申し上げます

この度は本当に素晴らしい朝のお茶事にお招き頂き 誠にありがとうございました
お蔭様で初心者ながら心地よくお茶事を楽しませていただきました

朝はあいにくの雨 午後には晴天となりましたが 
まるで 何処かへ旅に出て一日を過ごし 旅の二日目の様な帰路でございました

あまりにも濃いひと時 しばし頭が空になりましたが
徐々にお茶のご縁のあたたかさを感じました

お席中のお話の数々 お道具にも思い出が沢山
全ては人との縁の物語で 暁庵さまのお人柄そのままのお茶事に只々感動いたしました

暁庵さまにはさぞかしお疲れになられたことと思います
どうぞ重ねてご自愛下さいませ
それでは感謝の言葉は尽きませんが 又の御目文字がかないますよう
右 取り急ぎ御礼申し上げます   かしこ

追伸
この度は寛大にもお受入れ下さり またお疲れにも関らず様々にお教えいただき 
本当に感謝しております
スウェーデン移住の折にはお茶室を作れたら 
また お茶会やお茶事でおもてなしができたらと 夢が膨らむばかりです
毎年スウェーデンに帰っておりますが 
次回はこの度のご縁を胸に 瑞暉亭を訪れたいと存じます       Nより

             
             
                  スウェーデン・ストックホルムの瑞暉亭 (民族博物館)

  暁庵より
Nさま、後礼のお手紙を頂戴し、嬉しく拝読いたしました。
是非、瑞暉亭を訪れてみてください。
瑞暉亭でご活躍の皆さまも遥か日本からの訪問者を喜んで迎えてくださることでしょう。
そして、きっとNさまの未来の茶の湯生活にもいろいろアドバイスしてくれると思います。
Nさまの夢をスウェーデンで実現されることを、暁庵も夢見ていますね。

掲載できませんでしたが、皆さまからそれぞれ個性あふれるお手紙を頂戴し、感激しています。
ありがとうございました!


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許状式・・・獅子吼(ししく)を聞く

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夜ごとの虫の音がすさまじく、小さな虫たちの生命のエネルギーに圧倒されます。

9月13日(水)に許状式をしました。
許状を頂いて初めて、許状に書かれた点前をお習いすることができ、許状式は入学式でもあります。
昨年11月に入門されたTさんが初級(入門、小習(こならい)、茶箱点(ちゃばこだて))、Kさんが中級(茶通箱(さつうばこ)、唐物(からもの)、台天目(だいてんもく)、盆点(ぼんだて)、和巾点(わきんだて))の許状をめでたく拝受しました。
誠におめでとうございます!

3回目の許状式ですが、私にとっても喜びであり、坐忘斎御家元に代わって許状をお渡しするので緊張感を持って臨みます。
・・・ですから、許状式に臨むKさんとTさんはさぞや楽しみと共に緊張なさっていたことでしょう。

利休居士の画と鵬雲斎大宗匠の賛のある御軸を床に掛けました。
花入、香炉、燭台の三具足をかざり、菓子を盛った皿、撒き茶を入れた天目茶碗をお供えしました。
白い芙蓉を選び、花入にいけました。

               
                         白い清楚な花はKさんとTさんかしら?

小さな暁庵の茶道教室ですが、なるべく社中の方にも参席して頂いて、皆で許状式をお祝いしたいと思いました。
10時になると立会人のFさんとUさんも駆けつけてくださって、許状式が始まりました。

席入り後、ご挨拶し、床の御軸についてお話ししました。
利休居士の画像は裏千家・今日庵所蔵の土佐光孚(とさみつたか)による画の写し、とても穏やかな好い顔をされています。
鵬雲斎大宗匠賛が素晴らしく、誠に許状式にふさわしく、この賛に出会うのが楽しみでもあります

    今日親聞獅子吼  
   他時定作鳳凰兒        宗室(花押)

   読み下しは、今日親シク獅子吼(ししく)ヲ聞ク
           他時定メテ鳳凰ノ兒(ほうおうのこ)ト作(な)ル

   今日、利休居士に繋がる茶道の門を敲き、その教えを聞くご縁ができたことを嬉しく思います
   いつの日か、茶道の修練を重ね茶道の真髄を体得できることを願っています
   (・・・そのようにお話ししました)

許状を1枚ずつ読み上げてお渡ししましたが、読めない字があり、あわてて添付されている読み下し文を頼りました(大汗・・・)。
茶の道を歩んでいると、時に人生の荒波にもまれたり、時に健康をそこねたり・・・許状を頂いても思うように稽古が出来ないことがあると思うのですが、そんな困難な時に遭遇したらけっして無理をせずに、それでも自分なりにしっかりとした意志を持って、一歩一歩ゆっくりと進んでほしいと願っています。
頂いた許状が、道に迷ったり、回り道をしても、いつでもそこへ戻ってお茶を続けることが出来る「道しるべ」になってくれたら・・・とも思います。

              

許状より「唐物」を選び、不肖・暁庵が点前をし伝授しました。
「唐物」は、唐物茶入を使用する点茶法で、四ヶ伝の1つです。
四ヶ伝から上級の点前は教科書がなく、師匠からの口伝です。
KさんもTさんも初めての「唐物」をきっと目を丸くしてしっかり見ていたことでしょう。
主菓子は「庭の桔梗」(寿々木製)、濃茶は松花の昔(小山園)です。

席を移しKさんとTさんをお祝いして、皆でささやかなランチ(寿司と土瓶蒸し)を頂きました。
午後から稽古があるため一献はお預けですが、ランチタイムで緊張が解け、愉しくおしゃべりが弾みます。

その後、Uさんの初炭手前、Kさんの貴人清次薄茶、UさんとKさんの唐物と稽古が続き、とても充実した一日でした・・・・。


         暁庵の裏千家茶道教室   前へ    次へ    トップへ

能「楊貴妃」を観て・・・

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                   (写真が無いので、写真は京都・智積院にて)

平成29年9月18日(月・祭)、横浜能楽堂で能「楊貴妃」を観ました。

筝曲山田流の祖・山田検校(宝暦7年・1757年~文化14年・1817年)の没後200年を記念した公演です。
「芸の縁 山田流と宝生流」
  新作・筝曲「小町」      萩岡松韻  舞:宝生和英
     筝曲「長恨歌曲」    (山田流) 山勢松韻
     能 「楊貴妃 玉簾」  (宝生流) 武田孝史


筝曲などめったに聞く機会を持たぬ門外漢ですが、能を観るのは好きでして時々ノコノコ出かけていきます。
・・・そして能を観ていると、なぜかしきりにお茶やお茶事のことが思われます

橋がかりから舞台へ出てくるときの足の運び、足裏が鏡板に吸い付くような白足袋の動きに魅せられ・・・頭の片隅で茶の点前での足運びを思います。
抑制された動き、90度身体を動かすだけなのに気が遠くなるほど時間を掛ける所作、
さらに言えば、能における高度な演技表現は動かぬことである・・・らしいのです。

無駄な所作を省いたシンプルな点前、シンプルゆえに動きでごまかさず如何に美しくあるべきか・・などと、ついお茶の妄想が・・・。
能とお茶、能は私にとって普段気づかぬことを気づかせてくれ、眠っていた感性を揺さぶり起してくれる、そんな存在になりつつあります。

               

能は「楊貴妃 玉簾」(金春禅竹作)、はじめて観る演目でした。
最初に布で覆われた作り物(小宮・蓬莱宮)がゆっくりと運び出され、舞台中央に置かれます。
・・・もちろん、中に楊貴妃(シテ)が潜んでいるのですが、この演出に先ずドキドキしました。
いつ、どのように楊貴妃が登場するのでしょうか。
楊貴妃と言えば絶世の美女、その瞬間を待ち遠しい思いにて、ひたすら待つのみです。

能「楊貴妃 玉簾」の概要をパンフより記します。

玄宗皇帝に仕える方士は、勅命で今は亡き楊貴妃の魂のありかを探しに。常世の国の蓬莱宮へ赴く。
現れた楊貴妃に、方士は玄宗皇帝の悲嘆する様子を伝え、会った証として形見の品を請う。
楊貴妃が釵(かんざし)を取り出すと、方士は二人にしか分からない契りの言葉が聞きたいと頼む。
楊貴妃は、かつて七夕の夜に玄宗皇帝と二人で
「天にあっては比翼の鳥のように、地にあっては連理の枝のようにありましょう」と誓い合った言葉を方士に伝え、思い出の「霓裳羽衣の曲」(げいしょうはごろも)を舞う。
やがて方士は都へ戻り、楊貴妃は涙ながらに蓬莱宮にとどまるのでした。

(比翼の鳥・・・雌雄がおのおの一つの目と一つの翼をもち、常に雌雄一体となって飛ぶという、伝説の鳥。
 連理の枝・・・一本の木の枝が他の木の枝と連なり、木目が通じ合っているという枝。)

              

待ちに待った楊貴妃が姿を現す場面になりました。

楊貴妃の魂を探し求めて、方士が常世の国の蓬莱宮に行ってみると、中から女性の声がします。
「昔はあの方と一緒に見た、春の花。しかし世の中は移り変わるもの。今では一人で、秋の月を眺めるばかり…。」
方士が玄宗の使者であることを述べると、玉の簾が上がり、一人の貴婦人が姿を見せます。声の主は、捜し求めていた楊貴妃その人でした。

ロビーに張り出されたシテの面は「節木増(ふしきぞう)」。
面の名前も初めてでしたが、憂いに満ちた楊貴妃の魅力を表わすのに相応しく、面の力は偉大です。
なんせ、作り物を覆っていた布が取り外されても、蔓帯が垂らされた蓬莱宮の奥深くに静かに(動かず)座っている楊貴妃、なかなか御姿が見えない(見えにくい)のもにくい演出でした。

玄宗皇帝との誓いの言葉を会った証として、去ろうとする方士を呼び止める楊貴妃。
華やかな宮廷生活を思い出し、かつて玄宗皇帝の前で舞った「霓裳羽衣の曲」を方士の前で舞うのですが、優雅に舞う楊貴妃が次第に・・・鬼界島に一人取り残される「俊寛」に見えてきたのでした。

              

低いけれどはっきりと聞こえる地唄が、楊貴妃の深い闇を照らしだして能は終わります。

   君にハこの世逢い見ん事も逢が島つ鳥 浮世なれども戀しや昔 
   はかなや別れの蓬莱の臺(うてな)に 伏し沈みてぞ 留まりける 

おみやげに名菓「鏡板」(諸江屋製)を買いました。 

長月の五葉会 in 2017

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9月8日(金)は新年度3回目の五葉会でした(アップが遅くなりましたが・・・)。
五葉会は七事式を研鑽するために6人のメンバーで結成され、3年目に入りました。
炉の終わりの4月末で新年度に切り替わり、今年5月から宗智さんが新加入してくださいました。
5人は継続ですが、宗智さんのお蔭でフレッシュな気持ちで真剣にそして楽しく取り組んでいます。
科目は3つ、中身が濃く暁庵には付いていくのが大変なのですが、準備は阿吽の呼吸で手分けし、記録を交代でお願いしています。

その日は、仙遊之式、壷荘付花月、一二三之式の順で修練しました。
一二三之式は唐物、亭主は宗真さんでした。
最後に十種香札を選び点をつけますが、客全員が花の一を選び、一同の心が1つであることに感嘆の声が上がりました・・・

3科目の記録を記します。

     仙遊之式

   秋海棠 白千日紅      三   宗悦

   花虎ノ尾 女郎花 水引   一   宗厚 三

   薄 秋海棠 白千日紅    四   宗里 一

   水引 女郎花          二   宗曉

   えのころ草 ペンタス      東  宗真 二

   薄 紫式部 白千日紅     半東 宗智 四 


         

     壺荘付花月

      月     宗里 三
        三   宗悦
        一   宗曉 四
             宗真 二
             宗智 一
       二四主 宗厚

         


     一二三之式 (唐物)

      花一  宗曉
      花一  宗厚
      花一  宗智
      花一  宗悦
      花一  宗里
       主  宗真


いつも記録をどなたかにお願いしていますが、こちらに書いてみると新鮮でした。
フォントのせいでしょうか? 少しずれてしまいますがご容赦ください。
来月(10月)の科目は唱和之式、員茶之式、雪月花之式です。 


「旅の思い出」茶会・・・・その1 話尽山雲海月情

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明日(10月4日)は中秋の名月です。
9月29日(金)、Fさま(暁庵社中&五葉会メンバー)から「旅の思い出」茶会へお招きがあり、五葉会の皆さまといそいそと出掛けました。

実は南仏プロヴァンス&スウェーデンの旅から帰ってまもない7月9日のこと、第1回目の茶会に社中の皆さまと共に招かれたのですが、このたび五葉会のメンバーということで2回目のお相伴にあずかりました。

たびたび当ブログで書いていますが、「茶事の真髄は家庭茶事にあり」・・・と家庭茶事にはまっています。
茶事に不向きな家の間取りや動線、家人の協力、生活臭など乗り越えなければならない課題が山積みですが、それらをどのように創意工夫しまたは折り合って、その方らしいおもてなしをなさるのか、さらに伺うたびに茶事の内容や環境が変化(進化?)する楽しみも味わえ、互いを思いやり切磋琢磨できる家庭茶事を推奨しています。
・・・そんな訳で、今回のFさまの「旅の思い出」茶会、2回目なのでその変化も楽しみでした。

             
                   玄関の客迎え・・・大津絵が掛かれた瓢

11時30分の席入のご案内でした。
横浜駅で正客Hさま、次客Yさま、四客Wさま、詰Kさまと待ち合わせ、Fさま宅へ向かいました。
Fさま宅は狭い階段を上った高台の途中にあり、門をめぐる芝垣に茶人の家らしい趣きを感じます。
待合は茶室前の広い廊下、ご主人が蒐集されたという骨董品(薬箪笥、衝立、古伊万里など)があちらこちらに飾られていて目を惹き、煙草盆も骨董品でしょうか。

             

「清坐一味茶」(前大徳・明道和尚筆)の短冊が掛けられ、
「お忙しくお過ごしの皆様に忙中閑あり
 ・・・というひとときを感じて頂けますよう 
 私もいつものせっかちな気持ちを払拭して 
 粗茶一服 差し上げたく思います・・・」
というご亭主の気持ちを表しているようでした。

汲み出しが運ばれ、腰掛待合へのご案内がありました。
その日は蒸し暑く坂道の階段を上って来たので、ミントの入った白湯の美味しかったこと!

腰掛待合は玄関前の狭いスペースを上手に利用して作られ、南仏プロヴァンスの旅で買った籠の煙草盆とビーズ編みの煙草入、青釉火入が人待ち顔で待っていました。

             
                   「旅の思い出」の煙草盆

腰掛待合の横に大きな実を実らせた南国系植物(・・・あとで御主人が丹精している浜木綿とわかりました)があり、
「この大きな実はなんの花かしら??」と話し合っていると、ご亭主の向い付けです。
無言の挨拶を交わし、筧の水音も涼しげな蹲踞で心身を浄め、席入りしました。

              
                      浜木綿(はまゆう)の花

話尽山雲海月情

前大徳・泰道和尚筆のお軸が床に掛けられています。
読み下しは、話(かたり)尽くす山雲(さんうん)海月(かいげつ)の情。(碧厳録)

「山にかかる雲、海にかかる月、即ち一切のこころと言うのが山雲海月の情で、
この場合、親しきもの同士が胸中の心情、境地、心境のありったけを語り尽すさまを表しています。お互いすべてをさらけ出し、包み隠すことなく、打ち解けあい、あらいざらいに心情を語り合う」・・・という意味だそうです。
ご亭主と大いに山雲海月の情を語り尽したいし、「旅の思い出」を心ゆくまで語ってもらいたいと思いました。(つづく)


          「旅の思い出」茶会・・・その2へ続く

「旅の思い出」茶会に招かれて・・・・その2 白楽茶碗 「白夜」 

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                 (点前座の設え・・・茶事後に撮らせて頂きました)
                     
(つづき
初炭で炭が置かれ、熾る音を聞きながら、松花堂弁当と煮物椀を美味しく頂きました。
まもなく燗鍋と杯台が運び出され、正客Hさまから順に朱杯を下から取っていくのですが、その朱杯には干支が書かれていて、ご亭主が推理した干支が当たっているかどうかを巡り、座がざわめきました。
違っている場合は自己申告して、自分の干支の朱杯に変えてもらい、結局全員の年齢がばれてしまって大笑い・・・こんなご趣向も楽しいですね。

主菓子は銘「秋のたより」、オレンジとクリーム色の練きりの中に栗餡がしっとりと絶品でした。
薄(せんべい)と芋名月の干菓子と共に打出庵大黒屋(横浜市中区日ノ出町2-121 )製です。

                      
               浜木綿(はまゆう)の実 (季節の花300)

先ほどの南国系植物が実る腰掛待合へ中立しました。
後入りの銅鑼が5点打たれ、静かに心に染み入る音色にご亭主の精進ぶりを嬉しく思いました。

    席入りや 銅鑼の響きに魅せられて
            浜木綿みのる腰かけを立つ     暁庵  
        
後座の床には、秋野に咲き乱れる花が鷹餌籠(たかえかご・尚古斎造)に入れられています。
矢筈薄(鷹の羽ススキとも?)、白萩、竜胆、杜鵑、紫式部・・・壁にたっぷり露が打たれて・・・。

           
            

いよいよ濃茶です。
白楽茶碗が運び出され、客一同、息を詰めるようにご亭主の点前を見詰めます。
若草色の袱紗が捌かれ、サラサラと流れるように茶入、茶杓、茶碗が浄められ、一同点前に吸い込まれていきました。
・・・・その時、玄関のチャイムがピンポーンと鳴りました。
宅配便が届き、ご主人が受け取りに出ましたが、まさしく家庭茶事たるところであり、これを含めて亭主、客の心の在り様を試される時でもあります。
まぁ~・・・家庭茶事に限らず、茶事中にハプニングは付き物で、それらをいかに切り抜けるかが、ご亭主の腕の見せ所(?)でもあります。

頼もしきご亭主は少しも動ぜず、緊張感を保ったまま点前を続けています。

やがて馥郁とした香りが漂い、茶碗が出されました。
手取りも軽く、深くたっぷりとした白楽茶碗に濃茶の翠が美しく映えています。
濃さも程よく、よく練られた濃茶を美味しく頂戴しました。
濃茶は「瑞世の昔」、宇治・碧翠園詰です。

正客Hさまから茶碗についてお尋ねがあり、きっとご亭主はこの瞬間を待っていたことでしょう。
茶碗はスウェーデンお茶の旅でご縁のあった(お宅まで押しかけた?)陶芸家・藤井エミさんの作品でした。
形も好くたっぷりとした白楽茶碗です。
白い釉薬に黒釉の景色が好い具合に映え、同行した暁庵には藤井宅の白壁に描かれていた水墨画の風景のように思えました。
ご亭主は藤井エミさんとの不思議な出逢い、白楽茶碗との出合いを愉しそうに語っています。
銘「白夜」と名付けたそうで、「白夜」の国・スウェーデンでのステキな「旅の思い出」にぴったり!です。

続き薄茶になり、樺細工(ストックホルム)の煙草盆にガラス銀彩阿古陀形の火入(南仏プロヴァンス)、中国製漆器らしき煙草入(ストックホルム?)など次々と「旅の思い出」グッズが登場します。


                       

ご亭主の点てる薄茶がとても美味しく、皆さまで交わすお話が盛り上がり、茶碗をかえて2服も頂戴しました。
茶碗は、韓国の旅で出合った「魚屋(ととや)」(山清窯のミン・ヨンギ造)と三島茶碗(京焼)でした。
随所に散りばめられた「旅の思い出」の茶道具に話題沸騰・・・皆様からあれこれ尋ねられ、きっとご亭主は嬉しい悲鳴だったことでしょう。

最後に、茶器と茶杓について記します。
正倉院裂の写しでしょうか、エキゾチックな模様の仕覆が脱がされると、ワイン色の花模様が浮ぶガラス茶器が現われました。
エミール・ガレの作で、伸びやかな花模様はアンコリー(西洋オダマキ)だそうです。
ふむふむ、この茶器に合わせて若草色の袱紗にしたのかしら・・・ご亭主の心入れが嬉しく伝わってきました。

味わい深い茶杓は銘「一如」、紫野・剛山和尚作です。
いつも一から・・・基本から・・・初心を忘れずに・・・いろいろなことを考えさせられる茶杓で、ガラス茶器と共にまたのお茶事でお目にかかりたいものです。


             


茶事後に縁の下の力持ち・ご主人さまが淹れてくださった紅茶で乾杯(?)し、Fさま宅を後にしました。
Fさまとご主人さまの心温まるおもてなしに厚く感謝いたします・・・。

五葉会の皆さま、愉しくお相伴させて頂き、ありがとうございました!


           「旅の思い出」茶会に招かれて・・・その1へ戻る


神無月の教室たより・・・炭所望

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神無月(10月)の或る日、N氏とFさんがお稽古にいらっしゃいました。

Fさんの盆香合の予定でしたが、近々茶事を控えているN氏の炭所望から始まりました。
茶事では葦棚(よしだな)を使うそうなので、瓢棚を左右反対にして設え、棚に羽箒と香合を荘りつけます。
炭所望なので亭主は紙釜敷を懐に入れて炭斗を運び出し、釜を下ろし、初掃きをしてから羽箒を炭斗へ置いて下がります。
灰器を持ち出し、踏込畳へ灰器と帛紗を畳んで置き、茶道口へ戻り
「どうぞ お申し合わせの上 お炭をお願い致します」

             

Fさんがお受けして、帛紗を付け、灰器を持って風炉前へ座り、羽箒を炭斗前斜めに下ろしてから炭を置きました。
中掃きをし、灰器を取り、月形を切り、灰器を戻してから後掃き、灰器を持って踏込畳まで戻り、元のように灰器と帛紗を置き、席へ戻りました。

「ありがとうございました」
N氏がFさんへ挨拶があり、N氏が風炉前へ進み、風炉中を拝見します。
「どうぞお直しの上お香を・・・」とFさん。
「結構に置いて頂きましてありがとうございます」とN氏。
香が焚かれ、香合の拝見が掛かりました。
「どうぞお香合の拝見を」とFさん。
香合を拝見に出し、釜を下ろした場所まで引き鐶が置かれました。
「どうぞ風炉中の拝見をお願い致します」と私。

初炭では風炉中拝見はありませんが、炭所望では風炉中拝見ができるので、灰形、月形、炭の置き具合を拝見できる炭所望は茶事でどんどん取り入れてほしい・・・と先日お話したばかりでした。


           
                台子の炭手前の時の写真ですが・・・

風炉中拝見をし、正客は帰りに香合を引いて席へ戻ります。
やがてN氏が腰黒薬缶を持ち出し、釜を浄め(この風情が大好き!です)、薬缶を持ち帰りました。
釜が掛けられ、炭斗を引き、亭主は水屋へ戻ります(小間なら座掃きをします)。
茶事の時、落ち着いて香合を拝見して頂きたいので、風炉の時期でも私は襖を閉めます・・・亭主の働きでどちらでも・・・と指導しています。

香合拝見が終わり、香合が返され、亭主が取りに出ます。
風炉正面に座り、土風炉なら胴拭きをしますが唐銅なので、袱紗を捌き、釜蓋を浄め、蓋を切って、袱紗を腰に付けます。
茶事の時、香合は初座を印象付けるお道具の1つだと思いますので、香合拝見と主客の問答は「こころするように・・・」と話しています。
その日は「初雁香合」(春斎作)でしたが、茶事にお招きされているのでN氏の本番が楽しみです・・・。


            
                 盆香合・・・香合はFさんのお持ち出し

N氏の続き薄茶に続いて、Fさんの盆香合と薄茶(瓢棚)とお稽古は続きます。
その日の主菓子は「栗蒸羊羹」(和作製)、ボリュームが凄いのですが甘みが押さえられているので、栗の風味が引き立ち、好評でした。(お口に合ってヨカッタ!)


        暁庵の裏千家茶道教室    前へ    次へ   トップへ

八ヶ岳山荘の茶事へ招かれて・・・その1

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         富士山を望んで・・・八ヶ岳山荘近くの展望台にて(10月10日撮影)

ヤッタァ~!  ついにその日が参りました。
10月9日、N氏からお招きがあり、「八ヶ岳山荘の茶事」へ皆で繰り出しました。

1年ほど前の事です。
「八ヶ岳にある山荘の一室に躙り口をつくることにしました。
 いつの日か、先生と社中の皆さまをお招きしたいと思いまして、少しずつ整備中です・・・」
秘かに胸をときめかしてその日が来るのを待っていたのでした。

その日は気温が30℃近くまで上がるとか、急遽、袷の着物を単衣の付け下げに変更し、
横浜駅7時51分始発の特急「はまかいじ」へ颯爽と乗り込みました。
同行はFさん、Uさん、Kさん、皆で遠足へ出かけるような気分です。

賑やかにボックス席で茶事談義(おしゃべり?)していると、急に車窓の景色が目に飛び込んできました。
雲一つない青空のもと、山々や丘や葡萄畑がパノラマのように広がって、早や勝沼を過ぎようとしていました。
甲斐や信州の山々が近づいたり遠のいたり、富士山に追いついたり、追い越したりしながら八ヶ岳の麓の小淵沢駅に10時30分頃に到着。
特急「はまかいじ」は小淵沢終点と思い込んでいたら松本行きだそうで、大慌てで電車を降り、タクシーでN氏の山荘へ向かいました。

             

                          

山荘に着くと待ちかねたようにN氏が出迎えてくださり、栗が沢山落ちているアプローチを上り、待合のリビングへ通されました。
ソファの前のテーブルには根来塗風の四方煙草盆が置かれ、菱灰が美しく調えられ、火入はN氏コレクションの古染付です。
昆布茶の入った汲み出しが運ばれ、汗ばんだ喉を潤しました。
印象深い汲み出しは益子焼、女性の陶芸家で(お名前が・・?)、毎年益子へ出かけ応援していらっしゃるとか。

             

額に入った色紙が掛けてあり、草枕より汀風書とあります。

    智に働けば 角が立つ
    情に棹させば 流される
    意地を通せば 窮屈だ
    とかくに人の世は 住みにくい


席入り後にお尋ねすると、
30代仕事が思うように行かず、人生の先行きに不安を覚えていた時に出会った詩でした。
ふっと吹っ切れるものを感じ、父上(汀風氏)に書いてもらったそうです。

・・・仕事に悩みながらもそれを乗り越えて前進して行った若き日のN氏の姿が髣髴され、父上もきっと心中で激励されていたことでしょう。
そんなお話が心に響き、普段とは一味違う、おおらかに解き放たれ、まっすぐに茶事へ向かうご亭主の心意気を感じたのでした。

             
                  気持ちの良いベランダの腰掛待合

腰掛待合はベランダ。
カラマツの緑の森林浴、鳥のさえずり・・・
木々を渡ってくる風を心地好く感じながら、一同迎え付けを待ちました。(つづく)


         八ヶ岳山荘の茶事へ招かれて・・・その2へつづく

八ヶ岳山荘の茶事へ招かれて・・・その2

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      雲の下、小さく北岳(南アルプス)が見えました(10月10日撮影)

(つづき)
ログハウスの壁の一角ににじり口があり、自然石の蹲踞も備え付けられています。
蹲踞をあらため心身を浄めたご亭主の迎え付けを、一同無言で有難くお受けしました。

席入りすると、茶室は四畳半、奥に長さ1間半の板の間があり、その一部が板床になっています。
床の掛物は

            
          

     山静如太古

山しずかにして太古の如くなり・・・と読むのでしょうか。
静けさを感じる清々しい御筆は三重・玉瀧寺の明道和尚です。

「山は静かにしていつも太古から在ったように変わらない・・・山荘に来るとホッとします」とご亭主N氏。
暁庵もお軸を拝見していると、雄大な山に抱かれるような心地がし、ベランダの腰掛待合と同様、清々しい風がここにも吹いているのを感じたのでした。

点前座には葦(よし)棚が設えられ、羽箒と香合が荘られています。
風炉は志野焼、釜は筒糸目釜で辰敏造(?)だったような・・・。

やがてご亭主が席へ入られ、お一人お一人と挨拶が交わされました。
暁庵はご亭主が無事に今日の日を迎えられたこと、そして社中の皆さまと念願の山荘の茶事へお招き頂いたことを感謝し、感無量でした・・・ 

ご都合で初炭が先になり、炭所望です。
お受けした次客Fさんが灰器を持って点前座に進み、炭を置き、月形を切って席へ戻ります。
「どうぞお直しの上、お香を・・・」とFさん。
香が焚かれ、先ほどから楽しみにしていた香合の拝見をお願いしました。

            


香合は桐木地に金箔の銀杏が彫られていて、今日庵にご縁のあるもののようです。
N氏が30代の頃、今日庵の青年部夏期講習会へ参加した時の思い出の香合でした。
先ほどの待合の色紙の時もそうでしたが、ここでも夏の暑い熱い今日庵で一生懸命修練している若き日のN氏が目の前に現われてきました。

「この年になると、しきりに昔のことが思い出されまして・・・」
「きっと楽しく刺激的で、いつまでも忘れられない講習会だったのでしょうね・・・」

初炭が終わり、灰器が引かれる時
「遠くから拝見していますと、色も美しく、珍しい形の灰器でございますね。
 よろしかったら後ほど灰器と灰匙を拝見したく存じます」
「承知いたしました。それでは後ほど・・・。
 昼食を用意しましたので、待合のリビングへお戻りください」

           
           (里帰りした古伊万里の置物・・・ワインのデカンタとか)

リビングの一画の食堂でN氏手料理の昼食を御馳走になりました。
献立は、手打ち蕎麦とつけ汁、蒟蒻の和え物、香の物です。
シンプルですが、香の物以外はN氏の手作りでどれも美味しく(特に蕎麦とつけ汁が絶品)、「男の茶事」らしくって素敵だなぁ~と思いました。
かわいらしい(?)エプロン姿のN氏のかいがいしい働きぶりがカッコよく、惚れ直した感じです。

一人亭主でご準備から蕎麦の手打ちまで本当に大変だったと思うのですが、客4人は贅沢なおもてなしを心地好く楽しませて頂き、御馳走さま!  (つづく)
                   


        八ヶ岳山荘の茶事へ招かれて・・・その3へ続く   その1へ戻る


八ヶ岳山荘の茶事へ招かれて・・・・その3 (終章)

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         我が庵は・・・・富士の高嶺を軒端にぞ見る (10月10日 展望台にて撮影)
 
(つづき)
・・・後座の床の佇まいが忘れられません。
ススキ、照葉、竜胆が露に打たれ、まるで秋野のまっただ中に居るようでした。
しばしこのままでいたい・・・・。

また花入がステキで・・・・どっしりとした落ち着きの中にも幽玄さを漂わせ、秋野に咲く花を一段と引き立てています。
あとで伺うと、この花入は遠く朝鮮・新羅時代の壷だそうで、底の欠け部分を補うために特製の黒檀の台が作られていました。
N氏も数十年前に購入以来はじめて使ったそうですが、形と言い、濡れた胴肌の変幻の妙と言い、拝見していると古壺の中に吸い寄せられるような魅力(魔力?)を感じました。

          

主菓子が二段重ねの陶器に入れられて運ばれてきました。
菓子銘は「小佐女菊(こさめぎく)」・・・小雨に濡れた菊の花の意匠だそうで、御殿場・虎屋製です。
丁寧に作られた菊の花びらが美しく、大好きな天才陶芸家・鈴木五郎造の織部の器にぴったりお似合いです。

          

濃茶点前が始まりました。
荘られていた濃茶器の仕覆が脱がされ、茶入、茶杓、茶碗と浄められていくご亭主の動きを一同心静かに見守ります。
やがて茶香が漂い、濃茶が古帛紗を添えて出されました。

美味しい濃茶でした・・・。
口の中に「小佐女菊」の甘みが仄かに残っていて、しっかり練ってくださった濃茶のなんとまろやかで豊潤なこと!
一段と腕を上げられたご亭主の精進ぶりを嬉しく思いながら頂戴しました。
濃茶は「嘉辰の昔」(上林詰)です。

茶碗は十文字の割り高台が印象的な萩焼茶碗(清玩造)、古帛紗は雲龍文金襴でした。

茶入は小ぶりの古染付、呉須で山水画と漢詩が描かれ、風流な詩の世界へ誘います。

    夜半瀟声
    至客舟

古染付の茶入と飴色の象牙蓋を拝見して、この茶入を慈しみ使っていた数寄者たちに想いを馳せました。
どのような方が遠く中国へこれを注文し、どのような茶事に使われたのでしょうか?
仕覆は茶地さや形華文緞子です。

          

最後に茶杓について書いておきます。
煤竹の茶杓は銘「軒端(のきば)」、淡々斎自作(鵬雲斎箱書)です。
すっきりした端整な作りで、露が見慣れた淡々斎形ではなく丸形なのも興味深く拝見しました。

銘「軒端」は歌銘で、
    我が庵は 松原つづき海近く
       富士の高嶺を 軒端にぞ見る     太田道灌

その歌をもじり、ご亭主は
    我が庵は カラマツつづき山近く
       富士の高嶺を 軒端にぞ見る

・・・・冬になると木々の葉が落ちて、ベランダから富士山が見えるそうです。
八ヶ岳山荘の茶事に寄り添うような茶杓「軒端」に大いに感じ入り、いつの日かここで再会したいもの・・・と秘かに願ったのでした。

続き薄茶となり、薄茶と干菓子を頂きながら夢のような時を過ごし、16時過ぎに山荘を辞しました。

今夜はペンションに泊まり、夕食をN氏もご一緒して茶談義(おしゃべり?)がまだまだ続きます・・・皆さまの感想を聞きながらワイン(ジュース?)を傾け、部屋でFさんの漫談(?)を聞くのも楽しく貴重な時間でした。

翌日、編笠山中腹の展望台、「夢宇谷(むうだに)」という摩訶不思議なギャラリー、「八ヶ岳倶楽部」などに連れて行っていただき、充実した2日間でした。

          
                 宿泊したペンションです

ご亭主N氏のステキなおもてなしに心から感謝しつつ筆を置きます。
Fさん、Uさん、Kさん、2日間大変お世話になりました。 
皆さま、ありがとうございました。  

     
      八ヶ岳山荘の茶事へ招かれて・・・・その2へ戻る    その1へ戻る

お祝いの茶事支度に勤しんで・・・

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                  名残の花がいっぱいです


近々、茶友Kさんのお祝いの茶事を行うので、茶事支度に勤しんでいます。

どのように茶事でお祝いのおもてなしをしたらよいか・・・
どうしたらお客さまに楽しんで頂けるか・・・
ちょうど良い機会なので茶事の原点に戻り、いろいろ考えてみました。

すると、分野の違う方の話やなかなか読み切れない本からヒントを頂くことができました。
つきつめてみれば、何も「茶事」(茶の湯)に狭く限定することではなく、究極はどの分野でも同じということかもしれませんね。

         
                  新幹線「浜松」駅にて

先日、テレビで橋幸夫さんが映っており、デビューまでのいきさつ、ヒット曲が生まれた背景など、歌手・橋幸夫を育てた恩人の作曲家や先輩歌手との出会いや交流を収録した内容でした。
すぐにチャンネルを切り替えるつもりが、何か心に感じるものがあり、そのまま見続けていました。
すると、作曲家の先生や歌手の先輩から橋幸夫に発せられた「言葉」が心に響き、急いでメモしました。
忘れないように書き留めておきます。

○ 歌に魂をこめろ
 ・・・・上手にやることではない。その人なりの魂が感じられること。

○ 作曲のポイントについて
  イントロに作曲のすべてのイメージを込める。

○ 歌はいつか”詠み人知らず”になる。

○ 自分流の表現をみつけなさい
 ・・・・その時の客に応じた奇想天外の表現で客を喜ばすこと。(美空ひばり)

○ 事を成すには気を集中し、そのこと以外の事を排除して臨むべし。(幸田露伴)

まだまだ続きそうですが、茶事前なのでこのへんにて・・・。
短い言葉ですが、含蓄があり、すべて茶事の真髄に繋がるように暁庵には思われました。

最後の言葉にあるように、茶事前の1週間はなるべく用事を入れず、茶事に没頭したいと思います。
それも忙しく立ち働くばかりではなく、ゆったりした取り組みの中にポロッとひらめいたり、自分の考えを確認したり、それによって内容が大幅に変化したり、もとに戻ったり、もういろいろですが、茶事に一番必要な充実した充電時間です。

          
            一面、黄金の田圃が続いていました・・・「直虎」のふるさと、井伊谷にて

              
茶事は主客共にともに愉しくあれ・・・と思っています。

「お出ましを心からお待ち申しております・・・」  

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