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Channel: 暁庵の茶事クロスロード
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ツワブキ咲く跡見の茶会・・・その1

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11月4日、京都在住の折、共に自主稽古に励んだ茶友Sさまの茶会にお招き頂きました。
(だいぶ時が経ってしまい記憶が朧ですが、書き留めたく・・・がんばります )

「急なことですが、薄茶一服またはランチを御一緒にいかがですか?」
とメールを差し上げたところ快諾してくださって、京都在住のKMさんとTYさんをお誘いして伺わせて頂きました。
KMさんは大学時代の同級生の奥様、京都滞在の折にはしばしばこちらにお世話になっています。
TYさんは京都住まいの折、京都で初めてお友達になってくださった方です。

Sさまのメールによると1週間前に茶事を催すので、その跡見風で濃茶薄茶をさしあげたいとのことでした。
跡見の茶事は茶事七式の一つですが、未だ経験した事がありません。
どのようなご趣向の茶会かしら?・・・とても楽しみでした。



12時頃に玄関を開けると、侘びた大籠に生けられたススキが秋の野を思わせます。
我が家の威勢の良いススキに比べると、秋風になびく風情が京風のはんなりでした。
垂涎の李朝箪笥(バンダチ)が置かれた玄関の間で身支度を整え、懐かしい奥の待合へ。
京都を離れるとき、送別の茶会を催してくださったSさま、はや4年近くの歳月が過ぎてしまいました・・・。

待合の床に御軸があり、水面に映っている月の画のようです。
波が描かれているので海なのか湖なのか・・・月のさやけさを感じながら拝見しました。
それに、やんごとなき方々は空ではなく水面に映る月を愛でたとか・・・そんなお話も思い出します。
待合でご挨拶をして白湯を頂き、かわいらしい瓢弁当と吸い物をご亭主と一緒に頂戴しました。
私たちはのんびり味わって頂いたのですが、ご亭主の食べるのが早いこと・・・きっとお支度が気になっていたのでしょうね。
「お食事が済みましたら、どうぞ腰掛待合の方でお待ちください」



ここからが本格的な茶会となります。
待合の広間から庭へ出ると、腰掛待合があり、そこから外露地、枝折戸の向こうに蹲踞と内露地があり、その向こうに三畳上げ台目のステキな茶室があります。

腰掛待合で3人が待っていると、伽藍石のある露地の苔が露に濡れて青々と目に入ります。
折しもツワブキが満開でした。
腰掛待合に置かれた行李蓋の煙草盆、古伊万里の火入の灰形を拝見していると、ご亭主が現われ蹲踞の水を改めています。
枝折戸が開けられ、無言の挨拶を交わしました。

蹲踞で心身を清め、席入りしました。
床を拝見すると、淡々斎の穏やかな御筆で
「秋風一声雁」

床柱に籠花入が掛けられ、時候の花が・・う~ん?・・・思い出したら書きますね。
あとで籠花入は李朝の民具と伺いましたが、とてもステキでご亭主の李朝好みが窺えます。
炭手前がないので、「冠」香合(鵬雲斎お好み)が荘られていました。
(う~ん・・・水面に映る月、冠・・・光源氏または源氏物語のテーマかしら? それともお能のなにか?)



点前座には陶器の風炉に筒釜が掛けられていました。
陶器の風炉に見覚えが・・・韓国の陶芸家・全日根(故人)造の白磁の大ぶりな鉢です。
2014年葵祭の日、「川口美術」の片庇(かたひさし)の茶席で薄茶を点ててくださったご亭主を懐かしく思い出し、実はあの時から心惹かれる全日根さんの大鉢でした。

筋筒釜は大西浄林作とか。
大西浄林は大西家(江戸時代初期から京都・三条釜座において釜作を続ける釜師の家系、千家十職の一家)の初代です。
筋の入った筒釜はたっぷりとして力強く、古釜の魅力と存在感が溢れていました。
その横にこれまた個性的な四方水指、あとでゆっくり伺うことにしましょう。(つづく)


      ツワブキ咲く跡見の茶会・・・その2へつづく

ツワブキ咲く跡見の茶会・・・その2

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(つづき)
菓子が運ばれ、濃茶点前が始まりました。
菓子器は金継をした白磁、こちらも李朝のもので祭器とか。
主菓子は「愛信堂」の「栗きんとん」・・・超!絶品でした。
(忘れないように住所も調べました。京都市上京区元誓願寺通り堀川西入ル南門前町426)必ずまたご縁がありますように・・・。

薄暗い茶室ですが、風炉先窓からの明かりがご亭主をほんのりと照らしだしていました。
茜色の無地の着物がとてもお似合いで、自主稽古を思い出しながらしっとりとしたお点前を嬉しく見詰めます。

席入の時から気になっていた茶入の仕覆が脱がされ、染付の茶入が現われました。
帛紗を捌き、茶入、続いて茶杓が清められ、美味しい菓子の後なので濃茶への期待が高まります。
茶碗に濃茶が掬いだされるとすぐに馥郁とした香りが満ちてきました。
一口含むと思わず感激して
「なんて香り佳くまろやかな味の濃茶なのでしょう! お茶銘は?」
「「天授」といい、丸久小山園の詰でございます。お口に合ったようで嬉しいです」
(何でも全国茶品評会で受賞を重ねている抹茶で、3倍以上のお値段らしい・・・)
相客のKMさんとTYさんも濃茶「天授」の滋味を堪能したようでヨカッタ!です。



侘びた趣き深い茶碗は高麗三島、ご亭主が三島が大好きとのことで粉青沙器(ふんせいさき)やお会いしたことはありませんがタライ(盥?)ラマさまのお話が伺えて楽しゅうございました。
添えられた古帛紗は、青の織地に格子縞のグラーデーションが繊細かつモダンで、高麗三島茶碗にぴったりです。(志村ふくみさんのお弟子さんの作とか、お名前が・・・)

つづき薄茶になりました。
優雅な蒔絵のある三段引出の干菓子器が出され、一段ずつ違うお菓子が入っていて開けるたびにワクワクしました。

ご亭主好みの茶碗が3つ出され、暁庵は二徳三島(利休所持、三井記念美術館蔵)を思わせる三島茶碗で薄茶を頂きました。
あとの2つは、歪みのある筒形の古染付と、噴出口(こぶ)が2つあるので「吹上」と命名された茶碗です。どちらも個性的で心惹かれる茶碗でした。
最近、歪み、こぶ、虫食い、金継などの綻びのある茶碗がいとおしい・・・と思うようになりました。

拝見に出された茶入、茶杓、仕覆、薄茶器について書いておきたいと思います。
茶入は、小さな湯呑を転用したようなかわいらしい古染付、象牙蓋がついています。
仕覆は、赤い花が染められた印度更紗、新しく作られたそうで、古い仕覆も見せてくださいました。萌黄色の地色に段々模様があり、こちらも上品でステキです。


  脇山さとみさんの作品だと思う・・・玄関の間にて

薄茶器を手に取って、やっとやっと跡見の茶会テーマに確信が持てました。(陰の声・・・遅いぞ!) 
薄茶器は汐汲棗(圓能斎好み)で宗悦作、黒塗の金輪寺で胴に波文があり、蓋に「枩風(まつかぜ)」の文字がありました。
能「松風」が茶会のテーマだったのです。
時雨を思わせる茶杓は、表千家12代・惺斎作で銘「村雨」でした。
この茶杓に出会って、茶能「松風」がご亭主の中で完成したそうです。



最後にあの黄茶色の四方水指を拝見に出してくださいました。
良寛さまのような像が蓋の摘みになっていて穴が開いているではありませんか。。
穴が開いているので「風通し」と名づけられ、作者はご贔屓の女性陶芸家・脇山さとみさんでした。
底を見ると、緑の松と握手しているような雲が描かれていて、能「松風」に登場する海辺の松でしょうか。

Sさまらしい能「松風」に因む愉しい茶会で御茶を頂き、感無量でございます。 
お誘いしたKMさんとTYさんもきっといろいろな刺激を受け、楽しまれたことでしょう。
ありがとうございました!

ご亭主のご趣向を理解するのが遅い正客でしたが、奇しくもこの日の暁庵は大好きな「業平さま」が描かれている帯を締めていました・・・。
松風・村雨の悲恋の相手の「行平さま」ではありませんが、弟の「業平さま」が一緒にSさまの茶会を愉しんだと思い、どうぞご勘弁くださいまし。
近々またの御目文字がありますように心から願っております。 


       ツワブキ咲く跡見の茶会・・・その1へ戻る

2018年「炉開きの会」・・第1部

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 公園の欅がだいぶ色づき、葉を落し始めました


2018年11月7日は暁庵の茶道教室の「炉開きの会」でした。

毎年教室の炉開きの内容は変わりますが、10月28日のN氏主催「八ヶ岳山荘の茶事」の後でもあり、第2部にサプライズ!(?)が控えていることもあって、今年は全員稽古で炉開きをお祝いすることにしました。
急用などで残念ながらお二人が欠席されましたが、折しもスウェーデンから帰国中のオーネルさん山本由香さんが特別参加してくださり、賑やかな「炉開きの会」となりました。

12時40分集合、皆さま、素敵な着物姿でいらしてくださり、「炉開きの会」らしいお目出度い雰囲気が漂います。
(暁庵は勇気を出して白梅色(薄ピンク)の無地紋付に緑の森の帯を締めました・・・)



床には
「紅葉(画)舞秋風」(こうよう しゅうふうにまう)
かつて口切の所作などを御指導頂いたN先生から贈られた御軸を掛けました。
すがれた紫蘭、南天、ツワブキを天平古瓦(写し)花入に入れ、上座に茶壺を網袋に入れて荘りました。

詰役のUさんが打つ板木の音で、最初の亭主役のKさんが白湯をお出ししました。
今回は蹲踞は使わず、茶道口から八畳の広間へ席入りして頂きました。



「炉開きの会」のご挨拶をし、すぐに「壺荘」担当のKさんに亭主交代です。
正客Fさんから茶壺の拝見が掛かり、Kさんが床前に進みます。
茶壺を持ち、定座で網袋をはずし、拝見に出しました。
茶壺は丹波焼茶壺です。
小ぶりですが引き締まった形、黒釉薬のなだれが微妙な景色を作りだし見ごたえがあります。市野信水造、口覆いは笹蔓金襴、裏地は紫の塩瀬です。
「形だけでなく茶壺の拝見を心から楽しんでくださったかしら? 来年はKさんにぜひ口切までしてもらいたい」と思いながら・・・Kさんの落ち着いた所作を見詰めました。



初炭手前はFさん、正客はN氏です。
炉縁は黒輪島塗、大きな炉釜は霰唐松真形、和田美之助造です。
炭斗は瓢(ふくべ)、茶友Wさまがユウガオから育てたという手づくりの贈り物で、私の宝物です。
風炉から炉に変わって一番感じる炭の大きいこと! 灰器(備前焼、伊部(いんべ)焼とも)にたっぷり盛られた湿し灰が目を惹きます。
他にも羽根、火箸、香合、香(練香)、灰匙などが炉用に変わります。

炉開きの初炭手前はいつも新鮮に感じ、皆で炉を囲む一体感がなんとも言えません。
香合はFさんのお持ち出しの「織部の弾き」、香は坐忘斎家元好みの「松涛」です。
(・・・これでふくべ、いんべ、おりべの三べが揃いましたが、炉開きに三べを揃えることの根拠はないそうです)
茶事のように拝見の道具を取りに出たときに、炉の前に座り、帛紗を捌いて黒真塗の炉縁をカギに清め、もう一度帛紗を捌いて釜の蓋を清めてから切ってもらいました。

初炭が終わり、濃茶の前に小休止。
待合の椅子席へ戻って頂き、餅入りのぜんざいをお出ししました。




次は「炉開き」恒例の台天目です。
四畳半の設えとし、亭主Uさん、客はKTさん(正客)、Fさん、Kさんです。
四畳半の周りに椅子席を設け、見学の方はそちらで見て頂きました。
火相、湯相よく、Uさんが天目茶碗で3人分の美味しい濃茶を練ってくださいました。
皆さま、濃茶を練るのが上手になって・・・とても嬉しいです。
濃茶は「松花の昔」(小山園詰)です。
茶入は瀬戸「河名草」(写)、仕覆は大黒屋金襴、茶杓は象牙(利休形)です。



次いで濃茶、Tさんが長緒点前で5人分の濃茶を点てる予定でしたが急用が入り、急遽KTさんに濃茶平点前をお願いしました。
客はオーネルさん(正客)、山本由香さん、Uさん、暁庵、N氏の5名、茶碗は大ぶりの李朝・井戸茶碗です。
暁庵も4客に入り、香り佳くまろやかな濃茶を堪能しました。
添えられた素敵な古帛紗が・・・う~ん!思い出せず残念です。
茶入は織部肩衝、仕覆は十二段花兎緞子、茶杓は「紅葉狩」(紫野・寛道)です。

最後は員茶之式、全員で薄茶を点てて全員で薄茶を頂きます。
員茶之式では十種香札を使います。
十種香札は初めてというオーネルさんと山本由香さんに香札(客と一)8種を選んで準備してもらいました。


  干菓子の「栗ひろい」と「砧」(長久堂)

亭主N氏、札元KTさん、目付Fさん、客はUさん(正客)、Kさん、山本由香さん、オーネルさん(詰)、暁庵でした。
京都土産の干菓子(「砧」(長久堂)と「栗ひろい」)を用意したので、三役(亭主、札元、目付)にも賞味して頂きました。
全員が茶を点てるので緊張感もあり、全員が干菓子を食べ薄茶を賞味し、員茶之式ならではの和やかで楽しい時間が過ぎていきました。

第2部は、サプライズ!の○○○ーです。(つづく)


      2018年「炉開きの会」・・・第2部へつづく

2018年「炉開きの会」・・第2部

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  不思議なお茶のご縁に導かれて・・・

(つづき)
第2部は、スウェーデン家庭料理のディナーパーティです。

サプライズ・・・ということで、直前まで内緒にしてましたが、オーネルさんが前日から我が家に泊まり込み、腕まくりで料理を作ってくださいました。
「何か社中の皆様にお礼をしたい・・・」と、来日前からメールで相談し合い、スウェーデンの食材を持参してくださったのです。
10月半ば頃、スウェーデンから次のようなメールが料理の写真付きで届きました。

 オーネルさんのメール

暁庵先生
過ごしやすい季節になりましたね。お変わりありませんか。
私の日本への出発も近くなりました。「炉開きの会」の料理を考えているのですが 
1.グブロ-ラ (Bubbröra)  
ニシンの酢漬けを細かく切って ゆで卵、ネギ、デル サワ-クリ-ム混ぜたものを 薄い黒パンの上にのせる。



2.生か燻製の鮭の薄切りとクリ-ムチ-ズを薄いパンに巻いて、巻きずしみたいにカット



3.クルスタデス (croustades)
すでに出来たミニフォ-ムに 生クリ-ムで味を付けキノコをのせる。 
スエ-デンで取れる黄色いカンタレルというキノコを・・・と思っていますが出来るかどうか。だめだったら日本のキノコで作ります。



4.スエ-デンのチ-ズを持って行きます。 
出来たらこれを使ったパイをと思っていますが、先生の所オ-ブンありますか。 
なかったらそのままでもおいしいと思います。たとえば果物とチ-ズを同じ大きさにカットして爪楊枝でとめてお出しします。

・・・こんな料理を考えていますが、いかがでしょうか。
黒パン、薄いパン、クルスタデス、チ-ズ、ニシンの缶詰を持って行きます。
他にも考えてみますが今の所、こんなものです。 
お菓子も一応持って行きますが 皆さんのお口に合うかどうか。。。。

  

  サプライズのお料理がたくさん並びました


もう、みんなでおしゃべりもしないでパクつきました。美味しかった・・・。
どれも初めて頂くスウェーデン料理で、見た目も盛付もお味も和食とは違い新鮮でした。
オーネルさま、ご馳走さま!




 暁庵のメール
オーネルさんへ      
無事にスウェーデンへお帰りになったのですね。
寒そうな写真も届いていますのでブログに掲載します。


(その日はマイナス15℃だったとか・・・夏のサマーハウスを懐かしく思い出します)

この度はお疲れ様でした・・・でも、きっと素晴らしい1ヶ月だったことでしょう。
いろいろなことを思い出しながら、どうぞゆっくりお疲れを癒してください。

「炉開きの会」ではたくさんのお料理を作ってくださって、本当にありがとうございました。
きっと皆さまにもオーネルさまの御気持は伝わっていることでしょう。
ワイワイガヤガヤ・・・第1部のお稽古も第2部のディナーパーティも楽しい思い出になりますね。
Tさんが欠席だったのは残念ですが、山本由香さんが参加してくださってヨカッタ!です。

思えばオーネルさんとは不思議なお茶のご縁ですね。
オーネルさんのお知り合いで、日本で短期間でもお稽古をしてほしいという方がいらしたら、遠慮なくご紹介ください。
どちら様でも喜んでお迎えさせて頂きます。
・・・というのも、きっとお茶の神様がご縁を導いてくださっていると思いますので。

今度はご主人ホーカンさんと一緒にいらしてください。いつでも大歓迎です。


     2018年「炉開きの会」・・・第1部へ戻る


    暁庵の裏千家茶道教室   前へ    次へ    トップへ

2018年口切の茶事を終えて・・・1

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2018年11月24日(土)に口切の茶事をしました。
昨年は思わぬ右膝の故障のため口切の茶事を中止したので、2年ぶりでした。
・・・それで、何はともあれ無事に終わることができ、感無量です。

お客さまは6名さま、S先生の東京教室で共に研鑽を重ねている方々で、
お正客Aさま、Yさま、Nさま、Hさま、Tさま、詰は暁庵社中のKTさまにお願いしました。
口切の茶事が初めての方もいらして、皆さま、楽しみにきてくださいました。

10時半頃に詰KTさまの打つ板木の音が聞こえ、半東Fさんが白湯をお出し、腰掛待合へご案内しました。
待合の掛物は「秋耕」(野沢蓼洲画)、煙草盆は春慶塗、火入は冠手の染付です。
その日は天気も良く風もなかったので、腰掛待合でしばしご歓談いただきました。
待合の煙草盆は春慶塗、火入は冠手の染付です。



水桶を持って迎え付けに出ました。
蹲踞を清め、水桶から流れででる「ザァッ~!」という水の音と共にもろもろの雑念が洗い流され、茶事へ集中する気持ちが高まります。
「お正客Aさま、ご連客の皆さま、口切の茶事へようこそお出まし下さりました。ありがとうございます」
・・・そんな気持ちを込めて無言の挨拶を交わしました。

席入りの衣擦れを心地好く襖の外で聞きながら、頃合いを見て襖を開けると、
「どうぞお入りください」の声が掛かりました。

皆さまのお召し物がステキ!でした。
いつもS先生のお稽古場でうっとりと見ているのですが、その日は口切の茶事ということで、気合の入った(?)お召し物でいらしてくださり、ありがとうございます。
お一人お一人とご挨拶をしながら見惚れてしまいました。
(忘備録・・・暁庵は菊の地紋のある紫の無地紋付に、水色地に金銀の羽根(?)模様が刺繍された帯を締めました)


「遠山無限碧層々」(紫野 太玄和尚筆)を床に掛けました。
(えんざん かぎりなし へきそうそう)

遠く果てしなく続く碧の山々・・・それは一山登れば、その先にまた新たな山があり、ゴールのないお茶の道のように思われました。
以前は、その山道を高みを目指して一人登っていましたが、周りを見ると同じ志を持つ方々が沢山いらして、今は一緒に登っている喜びを感じます・・・そんなお話をしたような・・・。

お正客Aさまから「何卒、御壷の拝見を・・・」と御声が掛かり、いよいよ口切です。
小習いの壺荘に従って、口を切る前に茶壺を拝見して頂きました。



茶壺は仁清作の色絵吉野山図茶壺の写しです。
仁清作の色絵吉野山図茶壺は2つが現存し、静嘉堂文庫美術館と福岡市美術館に収蔵されていて、いずれも重要文化財です。
静嘉堂文庫美術館のを見たことがありますが、一部、黒釉薬が掛かり夜桜のような趣きなので暁庵のものとは明らかに違います。
実物を見ていないので断定できませんが、福岡市美術館の茶壺の写しではないかしら?

  ”みよしの”の 山をいろどる花の雲
        今やにしきの時雨ふるらし   暁庵

仁清写の茶壺を銘「みよしの」と名づけて愛でています。
吉野山の桜の景が描かれていますが、よく見ると次のように見えてきました。

朝陽が雲の中から顔を出し、吉野の山を薄紅色に照らし出します。
徐々に山々に陽がふりそそぎ、華やかな桜満開の山々が重なります。
夕方になり残照を残して陽は山の向こうへ沈んでいきました
・・・吉野山の一日の景でもあり、人の一生のようにも思えます。

それで、全員にお正客と同じに上座から下座へ向けて壺をゆっくり回して賞玩して頂きました。


       2018年口切の茶事を終えて・・・2へつづく

2018年口切の茶事を終えて・・・2

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(つづき)
御茶入日記を持って、拝見が終わった茶壺を取りに行き、次いで葉茶上合一式を持ち出します。
お客さまが息を詰めるように見つめる中、小刀でゆっくりと合口を確かめながら切っていくと、蓋が開きました。開けるとすぐに茶の香りがぷぅ~んと鼻をくすぐります。

「いずれのお茶を差上げましょうか?」
「ご亭主におまかせいたします」とお正客Aさま。
「それでは”無上(むじょう)”を差し上げたいと思います。
 京都・柳桜園が炉開きの時季のみに特別販売しているお茶ですが、天王寺屋会記に口切に”無上”を使った・・・との記述があり、これから茶銘が付けられたのかもしれません」

(陰の声・・・お招き頂いたYさまの炉開きの茶事で、はじめて”無上”(柳桜園詰)を頂戴し、その美味しさに感激しました。急ぎ、京都から取り寄せました)

詰茶を葉茶上合に少し取ってから、”無上”と書かれた半袋を取り出し、曳家へ入れます。
詰茶を詰と書かれた挽家に入れ、残りを茶壺に戻し、封をし印を押しました。
茶壺が封印され、諸道具を水屋へ戻し、壷を網袋へ入れて水屋へ持って下がります。
最後に御茶入日記を下げ、茶道口で総礼して口切が終わりました。
(次いで初炭ですが、省略させていただきます・・・)

名客様のおかげで、10時半の席入りから口切、そして初炭までスムースに運び、懐石の時間まで少し余裕がありましたので、小さな石臼を持ち出して、お客さまに「お茶を挽く」体験をして頂きました。
みんなで臼を挽きながら和やかにお話が弾み、これも口切の好い思い出になりました・・・。


折敷をお出しする前に水屋でパチリ・・・なかなか写真が撮れないので

再び待合へ動座して頂き、懐石はテーブル席でお出ししました。
膝や腰の故障を抱えている亭主の苦肉の作ですが、長時間の正座から懐石の間だけでも解放されるので、テーブル席は好評のようです。

懐石料理人・佐藤愛真さんが作ってくださった懐石をお出ししました。
口切の茶事らしくお目出度い季節の食材を使い、柿と栗を取り入れた献立をご覧ください。
皆さま、美味しい!と食べてくださって、亭主も嬉しい懐石タイムでした。


  えぼ鯛の幽庵焼  器(俎盤)は魯山人造


 飛竜頭、菊菜、紅葉麩の炊き合わせを雲錦鉢に盛って

 懐石献立
   向付  鯛の昆布〆め 水前寺海苔 防風 山葵加減酢
   汁   菊団子 しめじ 白味噌 辛子 
   つぼつぼ  柿なます
   煮物椀 銀杏のすり流し 車海老 蕪  軸連草 黄柚子
   焼物  えぼ鯛幽庵焼
   預鉢  飛竜頭 菊菜 紅葉麩の炊き合わせ 針柚子
   箸洗  ほんだわら(神馬草とも・・・)  梅香仕立
   八寸  光琳菊唐墨  炙り栗の甘露煮
   湯桶
   香の物 沢庵 小茄子 赤蕪


  純米吟醸・生酒「女城主」(岩村醸造)


 岩村城下町(恵那市)の岩村醸造(幅が狭く奥が深~~いお店でした)

日本酒は、11月11日~12日の大学同期会旅行で訪れた、岐阜県恵那市岩村町の岩村城下町で購入した「女城主」(岩村醸造)をお出ししました。
「女城主」といえば、昨年の大河ドラマ「おんな城主・直虎」が有名ですが、直虎と同時代、戦国の世に翻弄されながら必死に生きた岩村城の「女城主おつや」の逸話に因む「純米吟醸」です。
燗をすると甘口、そのままだと辛口でさわやかフルーティな香り、違う味わいが2回楽しめたようです。


    金団「手向け山」(石井製)

蓋付漆器に入った金団(きんとん)「手向け山」(石井製)をお出しし、腰掛待合へ中立をお願いしました。(つづく)


   2018年口切の茶事を終えて・・・3へつづく   1へ戻る 
 

2018年口切の茶事を終えて・・・3

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(つづき)
銅鑼を7点打って、後入りの合図としました。
  大・・・小・・・大・・・小・・中・中・・・大
銅鑼は何かい打っても難しいです。心を静めて平常心で打つように心懸けていますが・・・。

後座の床に紐飾りをした茶壺をかざり、照葉と白い椿を竹花入にいけました。



半東Fさんが温めてくださった茶碗を膝前に置き、席が静まるのを待って襖を開けます。
ふらつかないように気を付けながらゆっくり点前座へ進みました。
し~んと静まる中で帛紗を捌き、茶入、茶杓、茶碗と清めながら気を調えていく時間はなんとも言えない緊張感と充実感を感じます。

黒楽茶碗に「無上」(柳桜園詰)を茶杓で掬いだすと、茶香が美味しそうに薫り立ってきました。
湯相も好く、熱い湯を汲み入れ、心を込めて練り上げ一碗目をお出しします。
正客Aさまへ「どうぞ3名様で・・・」

続いて二碗目をお出しすると、中正客のHさまが取りに来られました。
一口召し上がったところで
「お服加減は如何でしょうか」
「大変結構でございます」
一碗目も二碗目も一生懸命練ったつもりですが、このお言葉で安堵しました。

黒楽茶碗は楽4代一入作の銘「不老門」、毎年口切の茶事に使うことにしています。
二碗目はいろいろ変えて楽しんでいますが、今年はお気に入りの白楽茶碗「小鷺」染谷英明作を選びました。
茶入は、初使いの瀬戸肩衝、加藤日出造、仕覆の裂地は「二人静金襴」です。
茶杓は、紫野 藤井誠堂作、銘「丹頂」でした。


 お気に入りの白楽茶碗「小鷺」、染谷英明作

後炭となり、釜を上げると、胴炭が半分黒々と残っていました。
(あらっ!細めの胴炭にしたのに割れるかしら?)
初炭と同じで、初掃きでお客さまが炉縁へ寄って炉中を拝見します。
「胴炭が割れると良いのですが・・・・」
と言いながら、火箸を黒い部分を上にして突き刺すと、どうやら割れたのでヨカッタ!

なるべく枝炭の風情を残しながら炉中を調えると、嘆声が上がりました。
「わぁ~~綺麗!」
炭の残り火が暗い炉中できらきら光り輝き、何とも言えぬ美しさです。
後炭でこの様な光景は初めてで、暁庵もうっとり眺めながら 
「真っ暗闇の街の中に、マッチ売りの少女がたくさんいて、一斉にマッチを擦ってくれたみたい・・・」
へんな感想なのですが、とっさにそんなメルヘンチックな想像が頭を横切りました。
数日後、社中の詰KTさんに口切の茶事の感想を伺ったところ、このシーンが一番心に残ったとのことで、とても嬉しいです・・・。




薄茶は、お客さまにお許しをいただいて半東Fさんに交代して頂きました。
大分良くなったとはいえ、膝と腰が限界に近づいていて無理は禁物です。
お客さまとゆっくりお話しする薄茶タイムにもなり、何よりFさんの点てる薄茶がとても美味しくお勧めなのです。
煙草盆と干菓子(イチョウ琥珀と初霜、佐藤愛真製)をお出し、Fさんの薄茶点前が始まりました。
茶碗は祥瑞の染付と黄瀬戸・銘「山柿」です。
黄瀬戸の茶碗は京都へ行く前に我が家へ来たのですが、この日が初登場かもしれません。

いつもS先生の東京教室で切磋琢磨しているお仲間なので、楽しく茶談義が弾みました。
名残は尽きませんが早やお別れの時になり、亭主、半東、佐藤愛真さんの3人でご挨拶させて頂きお開きとなりました。

これからも末永くお付き合いくださいますように。 


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畠山記念館・・・原三渓 -茶と美術へのまなざし-

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11月24日(土)の口切の茶事が終わり、クールダウンを兼ねて2つの美術館へ行きました。

根津美術館の「新・桃山の茶陶」(11月27日)と畠山美術館の「原三渓 -茶と美術へのまなざし-」(11月29日)です。
どちらも見ごたえがありましたが、11月29日(木)に訪れた畠山記念館は学芸員さんの解説付きだった上に、尊敬する横浜三溪園の創設者・原三渓翁がテーマだったので特に印象に残りました。


   都営浅草線「高輪台」駅への道


   途中で見た面白いオブジェ

高輪台駅から徒歩8分くらいでしょうか、小さな公園、面白いオブジェ、住宅の緑のテラスを眺めながら歩いて行くと、いかめしい門構えの畠山記念館の入り口が見えてきました。
大木が聳え立つ畠山記念館の庭園は薄暗く静まり返っているのですが、紅葉がちょうど見頃で華やかな景でした。


   畠山記念館・・・紅葉が真っ盛りでした

10時過ぎに入館し、10時30分から始まる列品解説の前に一通り展示を見ておくようにしています。
その方が解説がよりわかりやすく、解説の後ですと先入観が入り、初対面の感動や印象が薄れてしまう気がするからです。
30分あればお気に入りの展示品が見つけられる畠山記念館のスケール感が居心地好いです。

さて、お気に入りを3つ選んでみました。
1.絵瀬戸割高台筒茶碗 元鬢(げんびん)  江戸時代(17世紀)

御深井焼の指導者・陳元鬢に因んで原三溪が「元鬢(げんびん)」と命名しました。
内箱蓋裏に原三溪自筆の「元鬢」と書かれた張り紙があります。
陳元鬢(1587~1671)は明の亡命者で、尾張徳川家藩主・徳川義直に厚遇され、瀬戸焼、特に徳川家のお庭焼である御深井焼を指導しました。

大ぶりの筒型茶碗で、国宝「不二」を思わせる端整な形もさることながら、御深井釉の透明感のある釉薬がかかり、上品な味わいに一目で魅せられました。
見込に御深井釉がたまって水底のような青味を帯びているのも見どころの一つらしい。
それを水底に見立て、外側の胴まわりを泳ぐ魚や水草が鉄絵で素朴に描かれ、これも見どころであり、この茶碗を一層魅力的にしています。
この茶碗を愛し、「元鬢(げんびん)」と命名した三溪翁の確かなまなざしを感じます。



2.備前火襷水指 銘玉柏    桃山時代(16世紀)

根津美術館でも古備前の名器をたくさん賞玩する機会に恵まれましたが、一番心に残っているのは「三角花入」(備前焼、江戸時代17世紀、個人蔵)と、畠山記念館展示の「備前火襷水指 銘玉柏」です。

備前焼特有の緋襷(ひたすき)は、なにか作為が感じられて今一つ好きではなかったのですが、「玉柏」の佇まいに緋襷への偏見はうそのように消え、もう一目惚れでした。
すっきりとした端整な形も大きさも地肌の色もステキですが、緋襷の火色が織りなす模様が上品で、なんとも味わい深く、何度も去ってはまた戻って魅入りました。
こんな水指を使って茶事をしたい!・・・です。
三溪翁はこの水指をどのような道具と取り合わせ、どのようなお客さまをお迎えしたのかしら?



3.根来茶桶形茶器   江戸時代(17世紀)

地味な茶器ですが、きっと他の水指や茶碗などの邪魔をせず、己の領分を心得ているなぁ~と見ていたのですが・・・。
よく見ると、胴に何やら漢詩のようなものが書かれています。
解説によると、清巌宗渭の筆で
   天陰則不点   客多則不点
   非其人不点   龍宝  自笑(花押)

列品解説をしてくださった学芸員さんにお尋ねすると、
龍宝(龍宝山大徳寺のこと)の自笑(清巌宗渭は自笑子と号した)の「茶への思い」が書かれているそうで、その解釈についてお話が弾みました
(  )の中は暁庵の解釈なので自笑さまの思いと違っているかもしれません・・・。
   
「天陰則不点」(天が陰って世の中がおかしくなってしまったら茶は点てない)  
「客多則不点」(客が多い時は茶は点てない)
「非其人不点」(人となりが意に反する人であれば茶は点てない)
       または(自分が待ち望んでいた人でなければ茶は点てない)

自笑さまって、気骨のあるのか? それとも単なる我儘なのか? きっと自分に厳しい方なのでしょうね。
「茶の思い」はあれど道半ば・・・悟りの境地には程遠い暁庵ですが、自笑さまの「茶への思い」を心に深く受け止めましてございます。



出品作品はすべて畠山記念館の館蔵のものだそうで、50点ほど原三溪ゆかりの作品が展示されています。(12月16日(日)まで)
国宝「禅機図断簡」などすでに展示期間が終わっていて見れないものもあり残念!

原三溪翁が所持していた茶道具や美術品は散逸しているので、今回のようにまとめて展示されると、翁の好みやまなざしが感じられて素晴らしい企画だと思いました。
いつものように省庵で美味しい薄茶とお菓子を頂いてステキな一日でした。 



2018年 師走の教室だより

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師走に入り、銀杏並木や散歩道の落葉が美しく日々の暮らしを彩ってくれます。

12月12日(水)、KTさん、Uさん、Kさんがお稽古にいらっしゃいました。

暁庵では茶事を前提にお稽古をしているので、炭手前を毎回どなたかにして頂いてましたが、茶炭が高騰し手に入りにくくなって頭が痛いです。
今まで頼んでいたT商店へ注文すると
「すみません・・・お送りするのが最後の一箱です。この先は仕入れの見通しが立たず注文をお受けできません」
「えっ~!  」
T商店から良質の茶炭を良心的な値段で購入していたので(但し自分で切炭に切る)、炭代のことをあまり考えずにやって来れたのでした。

今まで通り炭手前の稽古をしてほしいし、水屋料は値上げしたくないし・・・それで、2つの対策を考えてみました。
1つは、なるべくお稽古の人数をまとめて炭手前を1回していただくこと。
もう1つは、炭手前をした時は別の方に炭手前の空稽古(炭は実際に置かないが後は同じ)をして頂く。
炭を置く練習にはなりませんが、空稽古でも順番、位置や所作は身に着くと思うのです(苦肉の策です・・・)。



床に「心清寿年長」(宗興筆)を掛けました。
クリスマスが近いので、ツリーをイメージして桑の三重棚を出してみました。
三重棚の下段に四君子の染付水指、水指の上の段につぼつぼ蒔絵の黒中棗、天板に花を荘りました。赤い実(名前?)と浜菊を高取焼・徳利にいけました。
(三重棚・・・元来は仕掛棚といって棚が五重の水屋用であったが、利休が桐木地で三重に好み直して席中に用いた。再好みとして、宗旦好みは一閑張、表千家7代如心斎好みは桑木地などがある・・・茶道大辞典より)

天板の下の棚に羽箒と香合を荘り付け、KTさんの初炭から始まりました。
香合はクリスマス仕様の見立で、天使の絵が描かれた陶器のオルゴールです。
曲は「白鳥の湖」、蓋を仰向けにするとオルゴールが鳴りだすという仕掛けです。
香は黒方(松栄堂)、とても好い薫りがしていたのですが、火に近すぎたようで煙が出はじめ、残念!・・・それ以外はとてもスムースでした。


    クリスマス仕様の香合

次はUさんの濃茶です。
1月9日の初釜で濃茶を担当して頂くので、稽古にも熱が入ります。
濃茶を3人分練って、中仕舞をしてから詰に入って自服してもらいました。
「美味しい・・・」と嬉しそうなUさん。
濃茶を練るのがみるみる上達しているので、初釜の濃茶が今から楽しみです。
濃茶は金輪(小山園)、菓子は初雪(石井製)でした。


   三重棚で濃茶点前の稽古中です

三重棚を使ってKさんの薄茶、KTさんの貴人清次薄茶と続きます。
貴人清次薄茶では、Uさんが貴人、Kさんがお供、客側にもいろいろ覚えてもらうことが多く、役を変えてまたお稽古して頂きたいと思いました。


   薄茶では煙草盆と干菓子をお出しします


   三重棚で貴人清次薄茶の稽古中です

三重棚を片づけて後炭手前(空手前)をUさんに、最後はKさんの台天目です。
炉に入り、今年度の重点科目は四ヶ伝としました。
11月~12月は四ヶ伝の唐物と台天目をしっかりお稽古してもらい、1月~4月に残りの盆点、茶通箱、和巾を予定しています。


     台天目の稽古中です

おまけ(?)に、今度の花ゆう会で「軸荘付花月」があるので、Uさんに初めて軸荘をやって頂きました。
いろいろ盛り沢山だったので、皆さま、お疲れ様でした・・・。  


    暁庵の裏千家茶道教室   前へ    次へ    トップへ

訃報に思う・・・

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  天瑞寺寿塔覆堂の天女が舞う扉・・・横浜三溪園

今日は冬至です。

11月頃から
「喪中にて年末年始のご挨拶はご遠慮申し上げます・・・」
という葉書が届きます。
茶友の高齢の母上様や父上様、同学年の知人、中には40代の娘さんを亡くされた友人もいらして、それぞれの方の永のお別れの心中を思い、しばし瞑目します。

12月半ばに一通の手紙がツレに届きました。
それはツレの元職場の先輩の方からの手紙で、次のように書かれていました。


 皆様お変わりなくお過ごしのことと存じます。
 私、○井○子は約7年強の癌との共生生活を過ごした後、2018年10月19日に八十歳にて永眠いたしました。
長年親しくお付き合い頂きましたことを心から感謝申し上げます。

 病院にいる時以外は癌との共生生活を感じたくございませんでしたので、皆様には共生生活中は一切触れずご不快な思いを抱かれたこともあろうかと、お詫び申し上げます。

 おかげ様にて独り身の私ながら淋しい思いをせずに癌との共生生活を終えることができ、本当に有難うございました。
皆様の益々のご活躍とご健康をお祈り申し上げます。

(私は独り身故、死後この書状を投函するよう頼みました。
世話をしてくれた身内の心の負担を少なくするため、誠に勝手ですがご返信はご無用にお願い申し上げます。)





ツレからこの手紙を見せられた時、暁庵もお会いした方だったので胸が塞がれる思いで読まさせて頂きました。
そして・・・なんて、見事な訃報なのだろうか!と。
優秀でやさしい人だったというツレの話しを聞きながら、○井さまの生き様と死に様が心を揺さぶるように迫ってきたのです。
私もできる事なら、このような訃報を自ら書けるよう、きちんと生を全うしたいし、恐れず死を受け入れたい・・・と思いました。

○井さまのご冥福をお祈りいたします。
 合掌! 

晩秋の横浜三溪園へ・・・茶会の下見と予告

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   銀杏がはらはらと降り積もる春草蘆 (2018年12月10日撮影)


12月10日(月)に横浜三溪園を訪れました。
来春4月13日(土)に茶会を予定しているので、N氏とFさんと下見へ出かけたのです。

来年6月にブログ「暁庵の茶事クロスロード」を始めて10周年になります。
ブログを応援してくださった方々をお招きして10周年記念の茶会が出来たら・・・と、先ずは横浜三溪園の茶室をお借りする事から始めました。
幸いにも4月13日(土、大安)に2つの茶室、春草蘆(しゅんそうろ、重要文化財)と蓮華院をお借りすることができ、茶会(小寄せの茶会です)へ向けてスタートを切りました。


   竹林の茶室、蓮華院 (2018年12月10日撮影)

なぜ茶会をしようと思ったのか・・・自問自答してみました。
1.ブログをいつまで続けるのか、続けられるのか不明ですが、10周年を記念する茶会をして、先ずは一区切りしたかったのかもしれません。

2.茶事は亭主一人ではできませんで、いつもお客さま、社中の方や懐石の方と一緒に作り上げていきます。今回の茶会も「一座建立」の心意気で、いろいろな交差点(クロスロード)になればと思います。
出会いのクロスロード、学びや経験(修練?)のクロスロード、そして何より思いやりや愉しさを感じるクロスロードになれば・・・と。 皆様のお力をお借りします。

3.今年は三溪園創始者・原三溪翁の生誕150年・没後80年だそうです。
原三溪翁ゆかりの茶室、春草蘆と蓮華院に坐し、心閑かに茶を喫することをお勧めします。
こちらの茶室でお茶でおもてなしし、豊かなひと時を過ごして頂けたら・・・嬉しいです。


   蓮華院・土間にそびえる柱 (宇治平等院翼廊の古材)

担当のK氏の案内で最初に蓮華院を見せてもらいました。
「クロスロード茶会(仮称)」で蓮華院は薄茶席の予定です。
一歩土間へ入ると、京都へ行く前に開催した「蓮華院・名残の茶会」が思い出され、胸キュンになり困りました・・・。

蓮華院は三溪翁が特別な思い入れで自ら建立した茶室です。
三溪翁自筆の扁額、宇治平等院の翼廊古材の柱が聳える土間、二畳中板の小間・一槌庵(いっついあん)、広間の琵琶床(三溪翁は東大寺三月堂の不空羂索観音が持っていた蓮華を飾ったという)など、見所やエピソードがいっぱいあります。

蓮華院がどのような薄茶席になるのか、担当のN氏とFさんがいろいろ知恵を絞ってくださることでしょう・・・暁庵までワクワクしてきます。


   蓮華院から春草蘆への道

蓮華院から落葉の降り積もった道を少し上がると春草蘆があります。
坂を登ったところに銀杏の大木があって、黄色い落葉がはらはらと降りそそいで、道も石棺も黄色に染め上げられて、一番好い時季に見学に来たみたい・・・。


周囲には石造物がいっぱい・・・石棺に落葉に埋もれて寝てみたい


春草蘆は大正7年(1918年)に京都宇治の三室戸寺・金蔵院から譲渡されています。
桃山時代の建築と推定され、織田信長の弟・織田有楽の作と言われていますが、確証はありません。
国宝・如庵(有楽作)と同様、春草廬も複雑な変遷の歴史があり、詳しくはこちらをご覧ください。

三畳台目の席ですが窓が九つあり、古くは九窓亭(くそうてい)とも呼ばれています。
2009年11月8日に春草蘆で茶会をしたことがあり、春草蘆の魅力は、刻々と移ろう光と影が織りなす茶席の妙だと思うのです。
濃茶を喫みながら九つの窓から入る光や風を肌で感じ、お楽しみいただければ・・・と思います。
春草蘆は濃茶席で、暁庵が担当させていただきます。  


   春草蘆の横にある腰掛待合


「クロスロード茶会(仮称)」の正式なご案内は1月半ば頃に手紙とブログでいたします。
ブログ愛読者の方々のご参加を心よりお待ち申しております。
(お問い合わせなどありましたら下記メールでお願いいたします)
 メール:akatuki-ane@grace.ocn.ne.jp

”忙中閑あり” 年の瀬の茶事-1

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師走もあと3日、台所の窓から見えるコナラの紅葉が淋しくなりました。

12月16日(日)に社中Fさんから年の瀬の茶事へお招き頂きました。

Fさんの炉の茶事は2回目のお招き(風炉をいれると4回目)でした。
訪れるたびに玄関周りや待合の様子が変わり、着々と進化を遂げているのがわかり、嬉しいです。
前回の風炉の茶事とは違う趣の設えやお道具が一層お茶事を盛り上げて、”忙中閑あり”のひと時を相客様と楽しみました。
お正客はRさま、次客Yさま、三客Kさま、四客暁庵、詰は佐藤愛真さま、どなた様も気心知れた素敵な方々です。

待合に色紙「話尽山雲海月情」(かたりつくす さんうんかいげつのじょう)(前大徳 紹尚)が掛けられ、ご亭主もお話の輪に入りたがっているようです。
その日は暖かく、腰掛待合で和やかにお話ししながら待っていると鳥のさえずりが聴こえてきました。
まもなく、ご亭主の迎え付けで無言の挨拶を交わし、蹲踞をつかって席入りとなりました。
ここでお正客Rさまから暁庵へお尋ねが・・・
「あのぅ~、正面に躙り口が見えるのですが、あちらから入るのでしょうか?」
「いいえ、躙り口からではなくご亭主の入られた方へ続いてください」と私。
(陰の声・・・そうですよね。素敵な小間(三畳台目)があるのに、そちらは使われなくて、いつも残念に思うのは暁庵だけではないと思います・・・)


    待合の色紙「話尽山雲海月情」

八畳の広間の茶室へ席入りすると、床に
「喫茶去」(きっさこ)
横物で、御筆は紫野 太玄和尚です。
「喫茶去」の「去(こ)」は「去る」ではなく、「行きなさい」という意味だそうです。

唐代の高僧・趙州(じょうしゅう)禅師の
「まあ、一服お茶でも飲んで行きなさい」
さりげない言葉で当たり前のように受け留めがちですが、なかなか奥が深い言葉のように思えます。
どんな時(場面)でも、どんな人にも、分け隔てなく「お茶をどうぞ」と心を開いて迎え入れた趙州禅師の故事が伝わっています。
さらに、「お茶を飲む」「お茶をどうぞ」という日常茶飯事の中にこそ、実はほんとうの真理はあるのだ・・・と説いているとも言われています。



点前座に廻ると、濡れた釜肌も美しく、釜が掛けられていました。
釜は万代屋、炉縁は繊細な沈金蒔絵作家の前志芸男作でした。
・・・そして、この日一番の御馳走の「風炉先屏風」が置かれていました。

ご亭主Fさんのために書を嗜むご主人様が丹精こめて画かれたという小色紙が屏風に散りばめられています。
小色紙には、百人一首から5首が選ばれ、和歌とその詠み人の姿が書かれていました。
和歌も素敵なのですが、細密な線で描かれた歌人たちの豊かな表情や姿にすっかり魅せられてしまいました。
5首のうちの3首を書き留めておきます。


  夜をこめて鳥の空声ははかるとも
       よに逢坂の関はゆるさじ    清少納言


  あまつ風雲のかよひ路ふきとぢよ
     乙女の姿しばしとどめむ     僧正遍昭  



  めぐり逢いて見しやそれともわかぬ間に
     雲がくれにし夜半の月かな     紫式部


屏風の歌人たちに見守られながら、初炭、懐石弁当と茶事は続きます。(つづく)


   ”忙中閑あり” 年の瀬の茶事-2へつづく

”忙中閑あり” 年の瀬の茶事-2

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         蝋梅と太郎庵椿

(つづき)
にわか雨もご亭主(自称・雨女?)のご趣向でしょうか?
陽だまりで鳥のさえずりに聞き惚れていたほど天気が良かったのに
昼食が終わり、主菓子を頂く頃に何やら雨の音が・・・・。
外腰掛でなく、待合に急遽作られた腰掛へ中立しました。

銅鑼の良き音色を聴き、心穏やかに後座へ席入りすると、
床には蝋梅と太郎庵椿がいけられ、鮮烈な美しさに息を呑みました。
壁に打たれた露も清々しく、朝鮮唐津の花入が見事に空間を引き締めています。



火相、湯相も好く、濃茶点前が始まりました。
主茶碗は黒楽、政所窯の後藤昭道造です。
抱え込みの形が手に丸く収まり、ぼってりと垂れた釉薬が胴を波打つように巡り、安定感のある景色を生み出していました。

2碗目の白い萩茶碗で芳しい御茶「無上」(柳桜園詰)をたっぷり頂戴しました。
濃さも練り加減も良く、香り高く、なんとまろやかで美味しかったこと!
白い萩茶碗はすっきりと白楽を思わせる趣きの茶碗で、緑の濃茶が映えて、黒も良いけれど白も好し・・・と思います。三輪休雪(寿雪)造でした
前席で頂いた主菓子は金団・銘「なんてん(南天)」(石井製)です。
「なんてん」には「難を良き方に転じる」という意味があり、年の瀬の茶事にぴったりと思いました。

後炭で、釜をあげた後の炉中の風情があたたかく、美しく、心を一つにして楽しみました。
意外と胴炭がしっかり残っていたので、割らずに炭を足し、丸管・割管・枝炭の3種をいっぺんに持って継いでくださいました。
点炭が継がれると、自分の席へ戻らなくてはならないのですが、皆さま、いつまでも炉を囲んでいたい・・・と思ったにちがいありません。





遠方から取り寄せて頂いた美味しい干菓子(2種、名前が?)を味わいながら、2つの茶碗(出雲焼の掛け分けと唐津焼くつわ)で楽しんだ薄茶タイム。
薄茶は金輪(小山園詰)、ふっくらと点ててくださって2服も頂戴しました。
お気に入りは中里重利造の唐津焼くつわ茶碗。
存在感、飲み心地の良さ、そして複雑なフォルムと釉薬の景色、渋い色合いの妙に魅せられました。
ご亭主さま、お正客のRさま、Yさま、Kさま、佐藤愛真さまと茶碗や茶道具の話し、流儀の違い、茶事・茶会の思い出話が弾んで、あっという間に「話尽山雲海月情」の時が過ぎていきました。


         屋久杉の煙草盆がステキです

始めて陽の目を見たというお道具が多かったそうですが、きっとお道具たちも喜んでいることでしょう。
萩焼のおおらかな肩衝茶入が広間に映えて、相良間道の着物(仕覆)がお似合いでした。
暁烏(あけがらす)の中棗が垂涎でした。
一見、黒棗のようですが、黒漆絵の暁烏が蓋表や胴に群れ、光線の具合で鮮やかに浮き出てきます。蓋裏には夜明けの景が画かれていました。
他の道具を邪魔せず、手に取るといろいろな物語があるようで、またお目に掛かりたいです。
茶杓「松籟」もさりげなくて年の瀬の茶事にぴったりと思いました。
最近、さりげない道具が好きになりましたので、虫明焼の水指もヨカッタ!です。
六歌仙ならぬ「五歌仙の風炉先屏風」にまた御目文字したいもの・・・と思いながら退席しました。


ご亭主さまにはさぞやお疲れのことと存じますが、茶事ならではの達成感、充実感を味わったのではないでしょうか。
今が旬と思いますので、これからも茶事を続けて精進してくださるよう願っております。
ありがとうございました!
お互い健康に留意して、お茶を精進し楽しみましょうね。

皆様、来年もどうぞ宜しくお願いいたします。


     ”忙中閑あり” 年の瀬の茶事-1へ戻る

茶道具こわい・・・茶碗「玉帚」

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  謹賀新年

いつも「暁庵の茶事クロスロード」をお読みいただき、ありがとうございます
今年もどうぞ宜しくお願いいたします



  初春の
   初子(はつね)の
    今日(けふ)の玉帚(たまははき)
  手にとるからに
    ゆらぐ玉乃緒
                  (大伴家持  万葉集 巻二十)

歌の意は、「初春の初子の今日、玉帚を手に取ると、玉が揺れて音をたてます」



昨年(2018年)12月初めのことです。
東京美術倶楽部の正札市へ出かけ、久しぶりに「茶道具こわい!」に遭遇してしまいました(汗)。
「見るだけでも勉強させて頂こう・・・」と、2階の展示室へ行った時のことでした。
その茶碗は、展示室のさらに奥の展示室にひっそりと置かれていました。
きっと気づかなかった人も多いのでは・・と思いますが、その茶碗(雲鶴青磁)が何故か気になってしまったのです。

茶道具との出会いは恋人と出逢うような運命的なもので、その機会を逃すとその後も面影を求めて探し続ける・・・そんな経験を茶道具で何度かしたので、思い切って購入を決めました。
小堀権十郎(江戸前期の茶人、徳川幕府の旗本で名は政尹、号は篷雪。小堀遠州の三男)の書付があり、蓋裏に和歌(冒頭の和歌と写真)が書かれています。外函に遠州流茶道12世・小堀宗慶の極めがありました。

残念ながら蓋裏の和歌が読めませんで、知人に解読をお願いしました。
この和歌を完全に読み解きたいと、暮れからいろいろ調べていると、
万葉集巻二十に収録されている大伴家持の歌であることがわかりました。


 コウヤボウキ(高野箒)の花   (季節の花300)

さらに「玉帚(たまははき、たまばはきとも)」は、コウヤボウキの枝を束ね、繭玉やガラス玉を飾り付けた箒で、古代の特別な儀式に使われていたそうです。
初子(はつね)の日(正月最初の子の日)に新年の言祝ぎを占う「目利箒(めどきほうき)」として、大切な朝廷の行事「初子の儀」に使われていました。

  儀式では、天皇が手辛鋤(てからすき)で田を耕す仕種をして、豊穣と祖先を祭り、
  皇后は「玉帚」を手にして左右に揺らせながら蚕室を掃き浄めて、蚕神を祭ります。
  「玉帚」を揺らした時に、枝先の玉と玉が触れ合って、カチカチと澄んだ音をたて、
  その音の響きによって新たなる年の養蚕の吉凶を占います。
                  (参照・・・万葉植物から伝統文化を学ぶ)

天平寶宇(西暦758年)1月3日に孝謙天皇が「玉帚」を東大寺から献納され、宴が催されました。冒頭の和歌は天皇の勅を受けて官人たちが詠んだ歌の一つで、大伴家持の歌でした。
その「玉帚」は正倉院御物「子日目利箒(ねのひのめどきほうき)」として伝承され、正倉院南倉に収蔵されています。「正倉院御物図録十四」によると、箒の先に小さなガラス玉が数個残っているとか。


「子日目利箒(ねのひのめどきほうき)」
(参照・・・万葉植物から伝統文化を学ぶ)


・・・購入した雲鶴青磁茶碗ですが、小堀権十郎の書付の和歌から「玉帚(たまははき)」と呼ぶことにしました。

雲鶴(手)は高麗茶碗の一種で、高麗時代後期に作られた古格のあるものを古雲鶴、朝鮮王朝(李朝)中期以降の注文茶碗を後(のち)雲鶴と呼び分けられているそうです。
雲鶴青磁ですが、高麗青磁の後期に見られる象嵌青磁です。

茶碗は椀形、高台まわりに黄土色の土が見えます。
雲鶴青磁のかもしだす高貴な気品、落ち着いた色合いや繊細な貫入に心惹かれています。
口縁外下周りに雲鶴が黒土と白土で象嵌されていて、飛翔したり、よちよち歩いていたり、ダンス(?)している鶴たちが愛らしく見ていて飽きません・・・。
昔の茶人たちがこの茶碗を愛玩した気持ちがわかるような気がします。
今年はこの茶碗を使うぞっ~! と楽しみ・・・ 

(参考)
 茶道具こわい    2010年12月29日
 茶道具こわい in Kyoto     2014年12月18日
 楽茶碗に恋して・・・茶道具こわい in Kyoto Ⅱ    2014年12月27日

有馬・雅中庵での初稽古 in 2019

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平成31年1月5日、S先生の初稽古(初釜)へ東京教室のOさまとYさまと参席しました。
毎年、初稽古は兵庫県有馬グランドホテル・雅中庵で行われています。

京都を離れて以来4年ぶり(?)でしたが、先生の初稽古の気合いがひしひしと感じられるお席でした。
それに、久しぶりの同窓会の様に懐かしい方々にお会いでき、嬉しいひと時でした。
なんか、病みつきになりそうですが、忘れないうちにブログに濃茶席の様子を書いておきます。


  「少女羽子揚げ図」 (森寛斎筆  一文字秋石筆)

待合の床には「少女羽子揚げ図」と枝垂レ柳が掛けられ、干支の模様が描かれた羽子板が飾られています。
下には垂涎の炭道具一式とたくさんの箱書、会記もあり、S先生の初稽古への気構えが伝わって参ります。
会記はのちほどゆっくりと拝見することにして、菓子席へ向かいました。


   菓子席の床  「大原女」(森寛斎筆)と蓬莱飾り

菓子席にも床があり、「大原女(柴の上に犬?)」の画が掛けられ、蓬莱飾りが見事です。
2つ(吉野絵と唐松文爪紅)の縁高(六代宗哲と万象造)が運ばれてきました。
袱紗ゴボウの味と歯触りが何とも美味で、垂れないけれど柔らかい味噌餡が入ったはなびら餅(末富製)をぱくつき、京風の味わいを堪能しました。

菓子席隣の書院付広間(16畳台目)が濃茶席になっていました。
広い床には、圧倒するような横物の御軸が掛けられています。
「何処へ座ったら良いかしら?」ウロウロしていると、奥様の鶴の一声がして、なんと!正客席へ座らせて頂きました。
久しぶりに東京から・・・ということで、ご指名してくださったようです(もう汗!!)。


新年を祝う飾り物「ヒカゲノカズラ」(古代の神事に使われていた)

まもなく、襖が静かに開けられ、S先生の濃茶点前がはじまりました。
その瞬間から総勢24名の客が一心同体になりました。
先生の一挙一動を息を凝らして見つめる中、袱紗が捌かれ、茶入、茶杓と清められていきます。
ゆったりとした自然体なのですが、指の先まで神経が行き届いているような所作は美しく、全員が魅入っていました。
そして、茶入から3杓掬いだされた後、サラサラさらさらと滝のように緑の抹茶が回し出され、一幅の絵を見るようでした。

茶筅が最初は静かに小さな輪を描くように、やがてリズミカルに音楽を奏でるように練られ、かなり離れた暁庵の席へも芳香が満ちてきました。
席を立って取りに出て、その時初めて先生と目が合いました。
先生は優しく茶碗を持ちあげて渡してくださって、「座らなくっても良いですよ」と言い、「5人さまで」とおっしゃいました。まだ、膝が完全に回復していないので、気遣って下さったのです・・・。


   天明さび釜 認得斎銘「古狸」、黒柿の炉縁

茶碗は嶋台の亀(12代慶入作)、5人分の濃茶がたっぷり入っています。
総礼して、口に含むと、
「少し伸ばし過ぎたようですが、いかがでしょうか」
「いいえ・・・とても美味しゅうございます」
丁度飲み易い濃さの濃茶をたっぷり頂戴しました。
服加減を聞くと、先生はすぐに2碗目の濃茶に取り掛かり、次々と4椀(24人分)の濃茶を練ってくださいました。
茶碗は、如心斎好嶋台(慶入造)と飴釉嶋台(九代長左衛門造)です。
濃茶は「延年の昔」(星野園詰)、香り佳く、まろやかな甘みを感じる濃茶でした。

4椀を練り上げてから客付に向かわれて
「皆さま、あけましておめでとうございます」とご挨拶があり、私たちも笑顔でご挨拶を交わしました。
正客でしたがこの時まで、この清々しくも緊張感のある雰囲気を壊したくないと、沈黙を守ってヨカッタ!です。



 
その後、先生から寄付、菓子席、本席の掛物や初釜にふさわしい正月飾りについていろいろお話しいただきました。
中でも2間近くある広い床に堂々と掛けられた横物の御軸が圧巻でした。

「別是一家風」
読み下しは、別(べつ)に是(これ)一家風(いっかふう)
雄渾な御筆は、大徳寺116世・万仭宗松禅師です。

「家風」とは「生き方」、この場合は「茶の道」かもしれません・・・。
今までとは違う「茶の道」を自分で見出し、それを発展させていこう・・・という意味でしょうか。
「茶の道」はそれぞれが自由に考え、自分で見出していくもの、それぞれの家風があって好し・・・という意味にも解釈できます。
新年の席にふさわしく、先生の決意表明のようであり、私たちを新しい境地へ導いてくださっているようでもありました。

床の花が素晴らしかったです。
松、衝羽根、水仙が唐銅立鼓(浄味造)の花入にいけられていました。
香合は、玄々斎好の富士絵蛤です。


  華やかな認得斎好手桶  又みょう斎在判  八代宗哲造

最後に、茶入と茶杓について書いておきます。
茶入は瀬戸破風窯の翁手で銘「玉津島」、落ち着きのある形、味わい深い茶入と嬉しい再会を果たしました。
小堀権十郎箱書があり、書かれている和歌を詠んでくださいました。
茶杓は竹、10代認得斎作で銘「杖(つえ)」でした。

   人問はば知れる翁の夜語りを
        昔にかえす和歌の浦波

先生のお話は面白く、興味深く、お道具も詳しく書き留めたいことばかり・・・ですが、既に夢の中です。
夢の中のような素敵な時間を皆様と過ごさせて頂き、初稽古へ参席できたことを喜んでいます。来年も元気で参加したい・・・と願っています。
その日はOさま、Yさまと有馬グランドホテルで一泊し、有馬の湯に浸かってきました。


暁庵の茶道教室の初釜 in 2019 ・・・(1)

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平成31年(2019年)1月9日(水)は暁庵の茶道教室の初釜でした。
諸事情で欠席された方、遠くスウェーデンにいるOさん、このブログで初釜を楽しんでくださると嬉しいです・・・。

今年は箱根湯本の旅館・玉庭(ぎょくてい)の茶席・仁庵をお借りしました。
仁庵は良く手入れされた御庭に囲まれ、本格的な露地、外腰掛そして蹲踞も整っていて、素晴らしい茶の湯空間になっています。
N氏のワゴン車に乗り合わせ、総勢6名で賑やかに(?)出かけました。     
その日は快晴で温かく、雪を抱いた霊峰富士が顔を出したり、隠れたり、絶好のドライブ日和でした。
10時頃に到着し、早速11時の席入りに合わせて、手分けして準備をしました。

 
                            (クリックしてね)

2019年初釜は茶事形式とし、初座の亭主はN氏、半東はUさん、正客はFさん、次客Kさん、三客暁庵、詰KTさんです。
待合(広間)の床には御軸とお目出度い福鈴が飾られていました。
御軸は、
「箱根越す 人もあるらし 今朝の雪」  
雪の箱根路を髣髴させる書は稲垣黄鶴筆とありました。
稲垣黄鶴は(いながき こうかく、1903〜2006)は長野県軽井沢出身、書道家で俳句や画も書いています。こちらは玉庭に逗留した時に書いたものかもしれませんね。


 こちらも箱根らしい莨盆・・・箱根神社の節分の升

半東Uさんが汲み出しを運び、外腰掛へご案内をしました。
汲み出しは京焼の青海波、金箔入りの梅こぶ茶(金沢箔一製)が目を惹き、今年は金運に恵まれるかしら?
大体の準備が済んだので、暁庵も外腰掛へ三客として合流し、亭主N氏の迎え付けを待ちました。
外腰掛に腰かけていると、何とも言えない箱根の山の冷気が清々しく、ほっこりと温かな日差しが4人を包み、鳥のさえずりが聴こえてきました・・・。


  温かな日差しを浴びて・・・腰掛待合にて



N氏が水桶で蹲踞の水を改めている音が聞こえ、まもなく迎え付けです。
正客Fさんに続いて全員がご亭主と無言の挨拶を交わしました。
露が打たれた露地を進み、躙り口から茶室へ席入りしました。
茶室は四畳半台目、床の御軸は扇面に寿とあり、井口海仙宗匠の御筆です。

台目席の点前座へにじって入り、炉中を拝見して「あっ!」・・・釜が掛かっていません。
濡れ釜を席入り直前に掛けるのを言い忘れていました。
・・・あわてて水屋へ入り、濡れ釜を掛け、もう一度見てもらいました。
でも、玉庭さんの灰の手入れや炉中の景色がそれは素晴らしかったので、皆で拝見出来たのは幸いなことでした。
ここで一人ずつご挨拶となりました。
「明けましておめでとうございます。
今年も初釜を社中の皆様と箱根・玉庭で祝うことができまして、大変嬉しく思っています。
昨年は膝や腰に故障があったり、社中にいろいろあったりしましたが、今年は体調に気を付けて、皆様、元気で!お茶を楽しみましょう」・・・とご挨拶したような・・・。


   4代仙叟好みの矢筈釜、大国藤兵衛造

「お炭を置かせて頂きます」 N氏の台目の初炭が始まりました。
釜は矢筈釜(4代仙叟好、仙叟が初代宮崎寒薙に造らせた)、作者は大国藤兵衛です。
茶事で矢筈釜に出合ったのは2回目ですが、切り立った崖のような口廻りの矢筈の形状、ゴツゴツと荒々しい地肌、水を出すために作られた穴(客付に向けるそうです)など、見所満載で作り手の気迫を感じる釜でした。
N氏お持ち出しの青藍の羽箒が目を惹き、振振(ぶりぶり)の優雅な香合(塗り物)もステキでした。
香は「唐衣」(松栄堂)です。


        暁庵の茶道教室の初釜 in 2019 ・・・(2)へつづく
   (つづきは、「三溪園・春のクロスロード茶会」のご案内のあとになります 


三溪園・春のクロスロード茶会のご案内

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  秋の下見の時の春草蘆・・・三溪園・春のクロスロード茶会の濃茶席はこちらです


寒中お見舞い申し上げます

ベランダの睡蓮鉢に薄氷が張る今日この頃ですが 、皆様いかがお過ごしでしょうか。

私事で恐縮ですが、
拙ブログ「暁庵の茶事クロスロード」が2019年6月に10周年を迎えます。
折々の心に残ったことを記憶に留めておきたいと続けてまいりましたが、
たくさんのお茶を愛する方々と知り合い、ご交誼頂きましたことは何よりの喜びであり、
いろいろなことを経験し成長させて頂いた10年でした。 
ありがとうございます・・・

つきましては、ブログ10周年の区切として平成31年4月13日(土)に
横浜三溪園の春草蘆と蓮華院にて「三溪園・春のクロスロード茶会」を催すことになりました。
「三溪園・春のクロスロード茶会」へお出ましくださいますよう、謹んでご案内申し上げます。

春草蘆(重要文化財)と蓮華院は三溪園創立者の原三溪翁が愛した茶室です。
光と影のうつろい、竹林や連子窓を吹き抜ける風、サウンドスケープなど、茶室の持つ魅力を楽しんで頂きながら、茶会スタッフ一同、心を込めておもてなししたく存じます。
ブログ愛読者のみなさまと「三溪園・春のクロスロード茶会」でお会いすることを楽しみにしております。 
どうぞお早目にお申し込みくださいませ。



  秋の下見の時の蓮華院・・・三溪園・春のクロスロード茶会の薄茶席はこちらです

三溪園・春のクロスロード茶会
日時  平成31年4月13日(土)
場所  横浜三溪園(横浜市中区本牧三之谷58-1)
会費  5千円 (三溪園入園料を含む)
席   濃茶席  春草蘆 (席主:暁庵) 
    薄茶席  蓮華院 (席主:N氏&Fさま(暁庵社中))
 全6席、各席7名様、約2時間の予定で、濃茶席、薄茶席の順でご案内いたします。

お申し込みはメールにて、御名前、御住所、連絡先電話番号、簡単な自己紹介(流派など)を添えて、
akatuki-ane @grace.ocn.ne.jpへお願い致します。

締切は2月10日(金)です。
お申し込み頂いてから、受け付け完了メールにて茶会の詳細をお知らせいたします。 

追伸
恐れ入りますが満席になりましたら、こちらの追伸蘭にてお知らせいたします。
行き違いなどで表示が遅くなりましたら、どうぞお許しください。


暁庵の茶道教室の初釜 in 2019 ・・・(2)

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       紅白の椿と芽のもの(桜)

(つづき)
初炭の後は懐石です。
広間へ移動し、そちらでゆっくり懐石を頂きました。
玉庭さんとの打ち合わせで、懐石は喫架で立礼式に頂くことにしました。
我が家でも最近、私を含め膝、足などを痛めている方が多いので椅子席が喜ばれていますが、社中だけの初釜なので楽をさせて頂き、懐石を楽しみました。
初座の亭主N氏にお運びをお願いしましたが、二度目の飯器まで早目に懐石料理を出して、N氏にもゆっくりお相伴の時間をとって味わって頂きました。
初釜らしいお目出度い懐石料理が並び、ワイワイと楽しく完食です。


    煮物椀・・・海老しんじょうが絶品でした

  懐石献立
   向付  鯛重ね作り 芽甘草 山葵 加減正油
   汁   手毬麩 三つ葉 辛子 白味噌仕立て 
   煮物椀 海老しんじょう 大占地茸 細根大根 柚子
   焼物  鰆 幽庵焼
   預鉢  天蕪風呂吹き味噌 阿波尾鳥丸 小松菜熱浸し
   強肴  数の子 松前漬け 糸がつを
   箸洗  松の実
   八寸  伊勢海老  梅花長芋
   湯桶  おこげ
   香の物 沢庵  蕪  奈良漬
   酒   (う~ん ?? )


懐石後に縁高で主菓子が運ばれました。
雅中庵初釜に続いて2度目のはなびら餅を嬉しく頂戴し、露の打たれた露地を通って腰掛待合へ中立しました(暁庵は準備を手伝いに水屋へ)。


   露地にある道しるべ




亭主N氏が打つ銅鑼の音色に感動し、すっかり心を奪われました。
大・・・・小・・・中・・中・・・・大

いつまでも銅鑼の素晴らしい響きが続くので、次の一打を打つのがためらわれる様子でした。
つくばって聴いているお客さまには如何だったでしょうか?
(独り言・・・こんな銅鑼が欲しい!)

後座の床に紅白の椿と芽のもの(桜)を生けました。
花入は竹一重切、銘「玉兎」淡々斎の在判があります。
点前座のどっしりと存在感のある水指は志野(源也造)です。
火相も湯相もよく、後座の亭主Uさんの濃茶点前が始まり、暁庵も末席へ入りました。





茶入につづいて茶杓が清められ、茶が3杓掬いだされた後にサラサラと緑の濃茶が美しく茶碗の中へ回し出されました。
Uさんにとって嶋台(大樋焼、壮明造)で6人分の濃茶を練るのは初めてのことでした。
しっかり丁寧に濃さも丁度良く練ってくださいました。
お服加減を尋ね、中仕舞をしてから末座へ入り、相伴してもらいました。
「いかがですか?」と私。
「とっても!美味しいです・・・」とUさん、全員に満足の笑みがこぼれました。
濃茶は松花の昔、小山園詰です。

茶入、茶杓、仕覆が拝見に出されました。
茶入は膳所焼の耳付、茶杓は銘「知新」、大亀師作です。
ステキな仕覆(写真がなくて残念・・・)は弥左衛門間道でした。(つづく)


    暁庵の茶道教室の初釜 in 2019 ・・・(3)へつづく  (1)へ戻る

暁庵の茶道教室の初釜 in 2019 ・・・(3)

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    玉庭・仁庵の小間席

(つづき)
後炭になり、暁庵が後炭手前をしました。
釜を上げると、炭がすっかり流れていて、火がかなり回っている胴炭だけが残っている状態でした。
懐石で相伴時間を長めにとったものの、料理もスムーズだったので、この時季、炭が乾燥しすぎていたのかも知れません。
稽古の炭手前でも、あっという間に火が熾ることが多く、茶事ではいかに後座まで炭を持たし、濃茶の時にしっかり煮えがついているか・・・その塩梅が時期によっても違うので難しく、今後の課題です。



後炭の見どころの一つ、胴炭もすぐに割れ(ちょっとつまらないくらい・・・)、炉中の炭をすばやくまとめます(枝炭などの流れの景色はなるべくそのままにして・・・)。
匙香(香「唐衣」(松栄堂))に続き、湿し灰が撒かれ、輪胴から逆に炭を置いていきました。
薄茶だけなので継ぐ炭を少な目にし、丸管、割管、枝炭を一緒に掴むシーンになり・・・社中の皆様も苦労しているところなので、息を呑むように見つめています。
内心心配しながら・・・気合を入れて一気に持ち、無事炉中に置けてヨカッタ!です。
美しい青藍の羽箒(N氏お持ち出し)で炉縁を三度も掃けたので、今年はきっと良いことが待っている気がします。




再び、後座の亭主Uさんと交代し、員茶之式風に薄茶を頂きました。
花月札に代わり、百人一首を使い、札元のFさんが札を取り優雅に読み上げると、その札を持っている方が「下の句」を唱和し、菓子と薄茶を頂きます。
茶碗を定座に返すと、その足で点前座へ進み、次の方のために薄茶を点てます。
薄茶は「金輪」(小山園詰)です。
お正月らしく華やかな雰囲気の員茶之式、なごやかに(にぎやか?)薄茶を点て合いました。
お点前に見惚れ、それぞれの方に似合った着物と帯を鑑賞させて頂き、幸せな時間が過ぎていきました。





お菓子は、有馬・雅中庵での初釜の帰りに京都へ寄ったので、京都のお土産です。
松風(たしか?亀屋陸奥)とお目出度い打ち物(千本玉寿軒)、菓子器は鎌倉彫の春日盆です。
仕舞い付けはKTさんにお願いしました。
豪華な塩釜蒔絵の大棗は大宗匠在判、寛斎造、
茶杓は銘「なごみ」、興臨院・萬拙和尚作です。





すっかりくつろいでしまいましたが、最後の挨拶が終わると、「それっ!」とばかり全員で片づけです。
N氏の車へ荷物を積み込み、ステキなおかみさんに見送られて箱根・玉庭を後にしました。
「お世話になり、ありがとうございました。またのご縁がありますように・・・」
天気にも恵まれ、穏やかで楽しい初釜でした。
今年も相和して前をしっかり向いて茶の道を歩いて行きましょうね。


    暁庵の茶道教室の初釜 in 2019 ・・・(2)へ戻る   (1)へ戻る

ハリウッド・フェスティバル・オーケストラ in 2019

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1月20日、東京渋谷のBunkamuraオーチャードホールへいそいそと出かけました。
次男からハリウッド・オーケストラ・フェスティバルへツレと招待されたのです。
このオーケストラは新春コンサートを2年に1回開催していて、大阪オリックスホール(京都在住中)横浜みなとみらいホールと招待されて、今回が3回目です。
これには訳があって、次男が映像スタッフとして参加しているため、どうしても聴きに、否、見に行かなくてはならないのです。

関係者とご挨拶することがあるかもしれないので、新春コンサートらしく和服で出かけるという気の使い方・・・(ふう~)。
今年の正月休みは帰らず、仕事に奮戦していた息子と久しぶりの対面です・・・なんか疲れているみたいでした。
エントランスでチケットを受け取り、御礼もそこそこに2階席へ急ぎました。




いつも、このオーケストラの演奏で懐かしいハリウッド映画の名曲を聴くと、元気が出てくるから不思議!
「こりゃ!今年も春から縁起がいいわいなぁ~」

日常の暮らしに埋没して、すっかり忘れていた映画の数々、若き日の思い出やスターへの憧れと共に蘇ってきました。
「ひまわり」のソフィア・ローレンとマストロヤンニの愛と別れのせつなさ。
なぜか胸がきゅんとなる「サウンド・オブ・ミュージック」は誰と観に行ったかしら? 
「愛と青春の旅だち」の主演リチャード・ギアのワイルドな魅力に惹かれたっけ・・・などなど。

中でも一番は「ニュー・シネマ・パラダイス」のバイオリン・ソロ、
コンサートマスターのヴァ―ジル・ルブーの魂を揺さぶられるバイオリンの音色が心に熱く残りました。
もう1曲、どこかでソロを入れてくれたら・・・と願うほどです(フェリーニの「道」をリクエストしたい・・・)。

「第二部」のビリー・キングの熱唱、レ・フレールのピアノ演奏、そして「珠玉の名画映像」もヨカッタです。
ビリー・キングの観客を引き込むエンターテナーぶりに目を見張り、感動しました。
観客と一緒に歌うフレーズは「スタンド・バイ・ミー」。
この短いフレーズを観客はなかなか歌おうとしません。私も蚊の鳴くような小さな声で歌っていました。
でも、彼は本当に粘り強く、ジョークを交えながら根気よく観客を歌の輪に引きずり込んでいき、最後には「スタンド・バイ・ミー」の大斉唱で終わりました。もう凄い!の一言。




お待ちかねの「珠玉の名画映像」は、「雨に歌えば」「グレン・ミラー物語」「駅馬車」の3曲。
演奏だけでなく映像が加わると、一段と臨場感が増大して映画音楽ならではの迫力を楽しめました。
「「駅馬車」は使いたい名場面が多くて編集に苦労したけれど、楽しんでね」と言っていた息子。
まるで「駅馬車」の映画をみるような映像展開が渾身の演奏と調和して、ハリウッド・オーケストラ・フェスティバルならではの世界を生み出していて、もう感動!しました。

前回、心揺さぶられた「風と共に去りぬ」は演奏されないのかしら?
と思っていたら、アンコール曲でした。
スカーレット・オハラの逞しくも悲しい生き様、南北戦争で負傷した兵士たちが群がる停車場のシーン、
燃え盛る炎の中を馬車で脱出するシーンなど、簡潔にして迫力のある映像が演奏を盛り上げ、
オーケストラ、映像、聴衆が一体になりました・・・これをアンコール曲にしたのも大成功です。

「うーん!もっといつまでも聞いていたい・・・ご招待ありがとう!」 





Program C は
 「第一部」
 ◇懐かしの名作より
  1.ザッツ・エンターテインメント/ハリウッド序曲メドレー
  2.スティング
  3.ひまわり
  4.サウンド・オブ・ミュージック
  5.愛と青春の旅だち
  6.ある日どこかで
  7.ニュー・シネマ・パラダイス

 ◇ハリウッド最新作/超人気作
  8.ミッション・インポッシブル
  9.レイダース/失われたアーク
  10.タイタニック
   
 ◇オードリー・ヘップバーンの姿と共に
  11.ローマの休日
    -マイフェア・レディ
    -ティファニーで朝食を
    -シャレード

 「第二部」
 ◇ビリー・キング~感動のメロディ
  1.007 ロシアより愛をこめて
  2.スタンド・バイ・ミー
  3.慕情

 ◇レ・フレール~ピアノの饗宴
  4.ポパイ・ザ・セイラーマン
  5.クラブ・イクスピアリ
  6.ル・シュマン
  
 ◇珠玉の名画映像
  7.雨に唄えば
  8.グレン・ミラー物語
  9.駅馬車
  10.風と共に去りぬ

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